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ロードオブ召喚獣  作者: 星村直樹
世界樹
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ラヴィの母、ナーシャのこと

 ラヴィは、母親のことをほとんど知らない。母親は、龍王の間の大きな柱に結晶化して食い込んでいる。それで、容姿は、何となくわかるのだが、どうしてこうなったのか父親は、話してくれない。龍王の父が話さないのだ。どうしてそうなったか、知っていても周りがラヴィに話すわけがない。


 今日は、そのなかでも、ナーシャと一番仲が良かった親友のウエンディが、ラヴィの母親のことを話す許可を父からもらった。ウエンディは、エルフだ。


 二人がいる部屋は、ラヴィの寝室に当たる。ラヴィが、人の姿で、成人したため、ここは、人に一番近いエルフの様式になっている。窓からは、日が射していて、はるか下界が見える。ラヴィは、今頃、ヒロは、ワイバーン飛翔隊と戦っているんだろうなと、窓の外を覗いた。大量のワイバーンは見えるのだが、戦闘まではわからなかった。


「ナーシャとスーザンは、私の親友よ」


 ラヴィは、『ナーシャ』と、母の名前を呼ばれて、ウエンディに振り返った。


「初めて聞いた」


「あなたに言うと、ナーシャのことを教えてって、せがんでくるでしょ。だから、黙っていたのよ。スーザンも、ナーシャの親友よ」


「アリーシャも知らないの」


「そうよ、理由は、私と同じ。娘のアリーシャが、そのことを知っていたら、あなたのためにしつこく聞いてくるでしょう」


 ラヴィは、了解するしかない。


「ラヴィは、ヒロのお嫁さんになるの?」


「わからない。ずっと一緒だったけど、今日初めて会ったの。ヒロに、『お前、女の子だったんだ』って、言われた」


「でも、お嫁さんになりたい」

「そう」


 ウエンディは、くすっと笑ってラヴィを見た。


「大丈夫よ。そんなことがあったのに、嫌われなかったんでしょう」


「うん、『大丈夫だ、ラヴィは相棒だよ』って言われた」


「私も、ナーシャもそれくらいの感じで、嫁入りしたわ。エルフが、龍の子供を産めるの変だと思わなかった」


「あっ!」


「みんな、ラヴィに隠すの上手ね。ナーシャは、そういうことができる特別な能力を持っていたのよ。お父さんが、たまに人の姿をしているのを見ているでしょう。あれは、ナーシャの能力よ」


「ムシキングも」


「デビットもよ。この名前は秘密の名前よ。私とお父さんしか知らないわ」

 ラヴィには、ムシキングを人の名前で呼んでもらいたい。


「逆に私は、ムシクイーンになれるのよ。そうやって、今の王子が生まれたの。ラヴィは、これから、お嫁さんになるのでしょう。そうだとしたら、もう、大人よ。お母さんのことを知っていいはずだって龍王を説得したわ」


「お母さんは、生きているんですか」

 ラヴィは、一番聞きたいことを聞いた。


 ウエンディは、悲しそうな顔をした。父親に聞いた時と同じ顔だ。


「生きているわ。でも、いつ目覚めるかわからないのよ。そうなるのと引き換えに、あなたを産んだのよ。あなたを産んで、10日と経たないうちに、結晶化してしまったわ。龍王は、ナーシャと約束した通り、龍王の間の柱にナーシャを押し付けたのよ」


 ラヴィは、母の気持ちが分かって黙り込んでしまった。そう言えば、自分は、よく父親がいるところに出かけた。母を見るためだ。そのたびに、お父さんと話をするのが日課になっていたと思う。


「私とデビットもナーシャの力を借りられるように、ナーシャがしてくれたのよ」


「お母さんが!」


「サイモンは、人形の時にナーシャと出会ったのだけど、付き合いだしたのはその後。ナーシャもサイモンも最初は、二人で会うのを照れたのよ。それで、サイモンが、友達のムシキングを誘って、私と4人で、会っていたのよ。その時、ムシキングが私に『デビット』っていう人の名前を名乗ったの」


 ちょっと、のろけるウエンディ。

 サイモンは、龍王が、人の姿になった時の名前。


「それじゃあ、お母さんとお父さんが、おばさんの、愛のキューピット!」


「そうよ。分かったでしょう。あなたも、大丈夫よ」


 でも、なぜか泣きそうになるラヴィを見て、ウエンディは、龍王に言うなと言われたことまで話しだした。


 優しいお母さんを想像して泣きそうになるラヴィに、ウエンディも目頭を熱くする。


 ラヴィは泣きそうな顔をして訴えた。


「お母さんに会いたい・・・・」



「・・・・、・・・・、・・本当は、話すなと言われたんだけど、もしかしたら、ナーシャは、近々復活するかもね」


「ほんとう・・?」


「創世時代に実例があるのよ。でも、その方は、とても長く眠っていたそうよ。周りの人は、誰も生きていなかった。だから、みんな諦めていたわ。ところが、ラヴィたちが、創世時代と結びついたでしょう。龍王とムシキングは、ナーシャの復活が近いのではないかと、よく話しているわ。だから、龍王は、ラヴィが、ロードオブ召喚獣に入るのを止めなかったのよ」


「わたし・・・・ヒロですか」


「わからない。でも、ヒロと歩みなさい。お母さんのなぞを解くのよ」


 ウエンディが、ほほ笑んだ。


「はい、安心した? 後は、ラヴィのお父さんと私の夫を信じてね」



 ラヴィは、二つの希望を貰って高揚した。

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