イルマとエルフ十賢人
スーザンに、現地のエルフたちの事を聞いているときに、3人が、お茶を持って戻ってきた。ラヴィも、スーザンに聞きたいことがある。
「浮き島中央のゲート近くには、エルフの大きな町があります。エルフの総人口は、3万人と、少数しかいなかった種族にしては、繁栄したと思います。こうなるのに、長い年月が掛かりました。そこに、いきなり、7千人のエルフが、町ごと現れたのです」
「すいません、彼らは、ゲームプレーヤーです。迷惑をかけるかもしれません」
「それは、分かりませんよ。良い結果になるかもしれません」
「そうなってほしいです。彼らは、普通のエルフです。飛ぶこともできません。ですが、内に秘めた職業スキルは、尋常では、ありません。もし、成長できるのなら、ハイエルフにもなるでしょう」
空を飛べるのは、Lv20からだ。羽が生え、この浮き島から飛び立つことができる。ハイエルフは、それより上位のエルフ。レベルでいうと50を超えている。精霊と話ができ、とても長寿だ。
「エルフの転生者の町が現れた時に、イルマを呼びました。エルフの神官です。彼女に任せましょう。ちょっと休憩ね。アリーシャ、お願い」
アリーシャたちが、カップにお茶を入れているのを見ながら、おれは、魚人族になった人たちのことを心配した。エルフと違い、魚人族は、惑星サガでもそうだったが、人口も多く、種族も雑多だ。多分パグーも同じだろう。その中で、転生して魚人族になった人たちの狙いは、海の中に眠る宝のダッシュだ。絶対、他の魚人族とぶつかるだろう。もう一種族の転生者。龍族は、単独で、探査ができる種族だから個々の問題になる。どうこう言う気はない。
お茶は、リンゴを搾った汁に、独特の温かいハーブを注いだものだ。ちょっと癖があるがおいしい。
お茶を飲んでいると、宇宙空間だった立体ホロに玄関が映り、人がノックするのが見えた。アリーシャが、パタパタと玄関に行く。スーザンは、この、星読みの部屋を少し明るくした。
おれは、イルマ一人だと思っていたが、その後ろから、10人もぞろぞろエルフが現れたのに驚いた。ノーマとラヴィは、慌てて台所に、お茶の用意をしに行った。
イルマは、打ち解けた感じで、おれに声をかけてきた。
「あなたが、ヒロさんね。アリーシャから噂は聞いています。鼻に鉛筆を立てることができるんですって」
なに、変な噂流してんだよ と、アリーシャをにらむ。
「やばっ」
アリーシャは、やばいと思って、台所に逃げた。
「フフッ、ごめんなさい。これで、子供達はいなくなったわ。 新しい町は、私たちにとって、とても重要です。良い結果になるのなら、いいのですが、先が見えません。それで、あの子たちには、少し席を外してもらったのです」
「わかりました」
「私が、あなたの肩に手を置きます。シャロンさんを思い浮かべてください」
イルマは、おれの後ろに回って肩に手を置いた。その点を頂点として、残りのエルフが円を描く様に並んだ。
「ヒロさん? 良かった、チャットが回復したんですね」
「すいません、ぬか喜びさせちゃって。現地の人の力です。我々と話したいとおっしゃたんです。イルマさんは、エルフの神官です」
「イルマです。ここには、十賢人もいらしています。まだ戸惑っていらっしゃるでしょうが、お話ししたいです」
「あわわわ、すいません。自分たちのことばかり考えていました」
「しかたありません。まず、お話しします。ここは、竜惑星パグーです」
「ここは、パグーなのですか!」
「我々エルフは、龍王の庇護のもとで、繁栄してきました。浮き島は、我々の土地です」
「すいません、我々にはどうしようも・・・」
「なにを仰っているのですか、あなたたちもエルフです。自分の世界に帰りたいですか」
「はい」
「ごめんなさい。我々にその手立てはありません。ですが、一緒に生きる道はあると思います」
ここは、おれが話した方が早いと思う。
「すいません、もう少し状況を話してもいいですか」
「どうぞ」
「シャロンさん、分かったことは、ゲームの設定と、ここの現実が、ほぼ同じだと言うことです。だから、エルフ族は、現地のエルフ族の土地に現れたのです」
ゲームの設定と同じだと言われ、早い理解をするシャロン。
「では、龍族も、魚人族もいるのですか」
「そうです。ここは、穏やかな所です」
「ありがとう、いい知らせだよ」
「私たちは、あなた方と話し合いたい。どうでしょうか」
「皆さん、現状把握ができないで戸惑っています。今の話ををアナウンスしてくださったら、皆さん聞き耳を立てると思います。ついでに、・・」
「イルマさんです」
「イルマさん達のルールを話していただくと、話が早いのではないでしょうか。皆さん生きるために、聞くと思います」
「成る程、彼らは、生まれたてだと言うことですな」
十賢人の一人が、今の話を理解したと話す。
「創世の人達は、善悪入り乱れていると聞くが、話が聞けるのなら、やり様は、ある」
「決めごとがあるのですね。元々、我々の社会は、そうなっています」
「最初が肝心だと言うことでしょう」
「大勢の人に、今しているようなことはできますか?」
「それはできませんが、声を拡声することはできます」
「では、こちらに来ていただいてお願いします」
十賢人の輪が解けた。スーザンが、大きな木の卓に、十賢人を案内する。それを陰で見ていた、アリーシャたちが、ほっとしながら、お茶を持ってきた。
イルマとシャロンが詳細を詰めたので、おれは、次の行動目標を二人に相談した。おれは、魚人に転生した人達がいる街に行きたいと思った。しかし、イルマは、まず龍王に会うべきですと、この世界の格式を話した。
「そうですね、魚人に転生した人たちが一番危険です」と、シャロン。
「魚人の町は、エリシウム島の北の海中でしたよね。呼吸用の風の結晶石は、いっぱい持ってます」
イルマが、それを止めた。
「ヒロさん、気持ちは分かるのですが、まず、この惑星の主に会うべきです。龍王も、あなたのことを感じていますよ」
「ラヴィのお父さんですよね。娘さんを使いたい放題使っていたからなー」
「それは、それです」
「そうなんですか」シャオンが驚く。
「召喚獣のラヴィのことです。さっき発覚したんです。会話が成り立つから、おかしいとは思っていたのですが、・・・」
「元々、この世界と接点があったのですね」
「ごめんなさい。今の話は、口外しないでください。つまらない混乱を招くだけです。ラヴィに、あなたたちのゲームをこの世界に飛ばす力はありません」
「分かりました」
「お願いします」
一度、バベルの塔遺跡を調べないといけないな。
「ラヴィは、そろそろ、家に帰った方がいいですよ」
「ヒロのこと、話してもいいですか」
「そうね」
おれも、仕方なく頷いた。
ラヴィは、嬉しそうに、炎を舞い上がらせて家に帰った。母親のことは聞けずじまいだったが、ヒロがいる。また、ここに来ようと思った。ノーマもラヴィに気を使って、先に、アリーシャの部屋に入らないことにした。




