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ロードオブ召喚獣  作者: 星村直樹
人魚姫、危機一髪
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宇族

 銀河には宇族という無法者が存在する。それは時限回廊の得意な性質の性だ。


 惑星ジュームにいるウルフ族に、宇族が現れた。惑星の住民は、多かれ少なかれ、だいたい聖なる生き物だ。その中で、ウルフ族だけは、女神の祝福を受けているのに、一族から宇族を出してしまった。彼らは、独立精神が強く、仲間意識が強い。


 回廊の中は、とても危険な所だ。時空間がめちゃくちゃで、時限流があるところさえある。そこに巻き込まれると、無事に帰ってこれたとしても、記憶は飛んでしまい、自分が誰だかわからなくなる。また、時限回廊の入り口には、狭間と呼ばれる時間のひずみがあり、そこにはまると、同じ宇宙空間に出ても、全く違う時間に出てしまい帰れなくなる。


 惑星の原住民たちは、この危険区域が分かる。それに、時限回廊を出ても、帰り道を失わない。外に出ても、時限回廊の入り口を見つけることができる。これを女神の祝福と言う。ただ、原住民にもシンが現れるぐらいだ。女神の祝福を失う者もいる。彼らは、帰り道を失う。シンに侵されたものがそうなる。自分の故郷でそうなっても、惑星を出ないのなら、関係ない話だが、回廊の外でそうなったら、帰り道が分からなくなる。回廊内の危険区域も分からない。当然、惑星内で、女神の祝福を失った者も、回廊の外に出るとそうなる。


 時限回廊は、回廊の外の人々にとっても、とても魅力的な所だ。時限回廊は、銀河の近道だ。今の技術でも、銀河の中心、インナーコアから、銀河の端、アウターリムまで行くのに何十年と掛かる。ところが、回廊内を通過することができれば、それが、数か月で済む。

 渦を巻いているこの銀河には、星々が多く集まって大きく尾を引いているような尾っぽが三つある。それぞれ、オーロラテイル、レインボウテイル、クラウドテイルと呼ばれている。この三つの尾っぽに、それぞれ時限回廊がある。銀河の中でも、星々の密度が濃く、栄えている場所である。商人たちにとっても、国の資源をになう者にとっても、異文化を研究する学者にとっても、この時限回廊は、必要な通路になる。


 回廊の入り口は常に動いていて捉えようがない。回廊の中も危険だ。それでも通りたい。そんな多くの宇宙船を水先案内しているのが、女神に祝福された者たち、ウルフ族である。彼らは、法外な値段を取って外の船を案内していた。しかし、その文化が進むと、ある程度安全なルートは、周知されるものである。回廊の入り口も、びっくりするほど高速に移動しているわけではない。短期間なら入った船から予想もできる。それで、ただで通過する船が出てきた。それからは、その船を襲う宇賊が現れるようになった。宇族は、既得権益の保護的な集団もいれば、ただの強盗もいる。時限回廊は、既存の法の番人である銀河同盟軍が簡単に出入りできるところではない。無法者が跋扈する回廊になった。


 惑星パグーは、外部の者の入星禁止だが、サガとジュームは、一部受け入れている。それは、他の銀河の星々と理が違う回廊内の唯一生存可能な星の探査だったり、その星の歴史を学ぶ考古学者がそれにあたる。ただ、星の探査をするものの目的も、星のアイテムだったりするわけで、簒奪者とは言わないが、土地の人は、あまりいい印象を持っていない。回廊内の惑星探査者、彼らのことを冒険者とよぶ。




 惑星サガの人魚たちは、銀河で高く売れる。宇族と結託した奴隷商人たちは、ここで、堂々と商売をしていた。惑星サガの海王は、これを許さない。しかし、今回ばかりは、手をこまねいていた。


「お父さん、あんな戦艦、真っ二つにして」

「分かっている、わかっているが、ミーノを取られている。何とか戦艦の中の情報がほしい」


 サガの海王には二人の娘がいる。14歳のサツキと5歳のミーノである。今回、まさか、捕獲された人魚の中にミーノが入っており、人質にされている。海王は、父親として手をこまねいていた。


 サツキの父は人魚の超人だ。敵戦艦は、全長300メートルもある鉄塊。真っ二つは無理かもしれないが、3メートルの厚さの鉄壁ぐらい切り裂いて、艦内に侵入することはできる。でも、そうすると、連中は、捕まえた人魚を1人ずつ殺していくだろう。それが、やつらのやり方だ。人魚同士は、テレパシーでつながることができる。なまじテレパシーで繋がることができるものだから、奴らはこうする。今は、人魚の居場所がわからない。テレパシーを阻害する何かの中に入れているのだろう。しかし、断末魔の叫びはそれを突き抜ける。


「私が艦内に潜入する」

「無茶だ、どうやって入る」


「あのう、おれらが、潜入しましょうか」


「誰だ、お前らは?」


「冒険者です」


「お前らの手は借りん。大体どこから現れた。怪しいやつらだ」


「ホラね。だから、さっさと、戦艦の動力を壊しちゃえばよかったのよ」

「駄目だって、そんなことしても、仲間を呼ぶだけさ。逃走手段だって、ファイターとかあるんじゃないかな」

 ぎゃう、ぎゃー、ぎゃうぎゃう 〈そういうのも全部壊しちゃおうよ〉


「なんだ、その、ふわふわしているマスコットたちは?」

「お父さん妖精さんなんじゃない。可愛い」


「おれの召喚獣です。ノーマ、ラヴィ、アリーシャ、挨拶が先だぞ」

 ぎゃーう、ぎゃうぎゃう〈ヒロだって名乗ってないじゃん〉

「あっ、おれヒロです」


「これ、生きてるの?」

 サツキが、ラヴィのほっぺをつついた。


 ギャー

「ラヴィ、暴れるな」

「私たちは、空を飛べるわ」

「ライトボードで、ハッチを開けることも出きます」


「見返りは?」

「浄化の真珠でしょう」


「それだったら、でっかい貝殻の中にいた女の人にもらったよなラヴィ、アリーシャ」

 ぎゃう


「なんだと、見せてみろ」


 ヒロが、ひときわ大きな白い真珠を見せた。それは、甲殻族の巨大真珠貝の人、イオリの真珠だった。


「どこで手に入れた? イオリに会ったのか」


「テーマは、明るい海底に音楽をだったっけ。イオリさんのリクエストに応えていたら喜ばれたんです。イオリさんは、娯楽がほしかったみたいです。音楽は、みんなで共有できる娯楽です。良いアイデアを貰ったと言っていました」


「私のアイデアよ」

 ぎゃう


「お前ら、イオリの悩みを解決したのか」


「なんとなく」


「彼女は、このサガの甲殻族を束ねる人だぞ。普通、会うことすらできん。どうやった」

 イオリは、甲殻族の始祖。


「ライトボードのボタンを押したら、たまたまイオリさんの部屋だったんです。問題解決って、ロードオブ召喚獣の一つのイベントですから」


「なに言っているかよくわからん。お前ら、どこから来た」


「パグーです。あっ、あの時は、地球です」


「お父さんパグーって」

「地球は良く分からんが、パグーとは、どういうことだ。こことは、銀河の反対側だぞ」


「自分も、原理はよくわからないんですが、時限空間の空間転移を仮想にすればできますよ」

「そうなんだ」

 ぎゃうー

「ヘルプを読みなよ」


「やはり、何を言っているかわからん。もう、いい。とにかく飛べるし、戦艦のハッチを開けられるんだな。それで、見返りは何がほしいんだ」


「惑星サガの入星許可証です」

 ノーマが、急に現実的なことを言い出した。みんな、通信で、ひそひそ話を始めた。


「ちょっと、ノーマ。なんで、自分のことを名乗らないのよ」

「だって、ここは、海王が一番強いんだよ。パグーの海王の娘だってばれたら、身動きできなくなるじゃない」

「それで、みんなをジャスト召喚にしてくれって言ったのか」

 ぎゃう


「そんなもの必要ないだろ。現に今こうして勝手にいるではないか」


「正式に認めてくれたら、シンを倒しやすいじゃないですか」


「我々の協力がほしいということか。そんなのは、パグーの海王が決めれば我々に文句はない」


「こんな形で急に現れたら、そう思わないでしょ」

 ぎゃう


「ふーむ、今、シンを倒すといったな。人質を助けてくれたら考えてやろう」


「じゃあ、協力していいんですね。アリーシャ、サーチ。中の様子を見てくれ」


「人魚の居場所を頼む」と、海王。


「なんだか変、艦内に散らばってる。カプセルに入れられているみたい」


「人魚を盾に取っているのよ」 サツキが怒りをあらわにする。


「あのう」


「カイトだ」


「カイトさん、おれたちが、あの戦艦のヒューベースで暴れます。戦艦のエンジンを壊せますか」

 ヒューベースは、戦艦にある宇宙艇などの発着場。

 

「やってみよう」


「カプセルは、14よ。ほとんどは中央底の倉庫にあるわ。ヒューベースの下よ」

「やっぱり逃げる気満々だ。退路を断つのが先だな」

「でも、2つは先端と、エンジンルームよ」

「ラヴィ、ヒューベースは、任せろ。エンジンルームのカプセルを回収してくれ」

「分かった」

「ノーマ先端を頼む」

「OK」



「私も、この人魚の精霊さんと行くわ」

「水の加護があらんことを」


「無茶よ」


 カイトが、ノーマの制止を遮った。サツキが助けに行く理由があるのだろう。


「ノーマ、この娘も連れて行け」

「わかった」


「ヒロ君、エンジンルームは、この子に任せていいのか。そちらの方がよほど危険だ」


「ラヴィの波動は、感じますか」


「なんとなくな」


「では、ラヴィがカプセルを持ち出すまで待ってください。アリーシャは、おれを案内してくれ。カプセルを海に落としたいんだ。そのルートも頼む」

「まかせて」



「私たちも行くわよ」

 ノーマがサツキについた。

「妖精さんお名前は?」

「ノーマよ」


「いいか、最初は、全員一緒に突っ込む。おれが暴れだしたら、3方に分かれるぞ。アリーシャは、カプセルの解除キーの解読を頼む」

「分かったわ」



 四人とサツキが戦艦に向かった。アギトは、腕組みして、変わった冒険者だと顎をさすった。

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