エルフの船サジタリウス号
浮島にあるエルフの戦艦は、エルフの自然と一体化して弓矢を放つイメージとは似ても似つかない重厚な戦艦だった。これで体当たりできるんじゃないかと思ったほどだ。でも、どこかで見たフォルムだと思っていて、思い出した。惑星ジュームの生体ロボットが乗っている戦艦と同じだ。それはそうだ、生体ロボットの主人がエルフだった。
でも、宇宙空間に出ると、弓を引いているような形に変わるそうだ。サジタリウス号は、とても美しい船に変形する。
まず艦長室に行ってストロング艦長に乗艦の許可を貰う。それから艦内を回ることになった。シールケが一人で入り口にいたので連れてきてしまった。
「ストロング艦長、アリーシャと、ラヴィです。乗艦の許可をお願いします」
(もう、入っているけど)
「ヒロ君、ラヴィ、アリーシャ来たか。乗艦を許可しよう」
「ありがとうございます。それで、艦の人達に挨拶して回ってもよろしいでしょうか」
「そうしてくれ。シールケ、あなたもですか」
「は、はい」
「では、ヒロ君に、ついていきなさい。ヒロ君、ヒトマル、マルマル時に発進だ。その時刻は、気をつけるように」
「了解しました」
この後メイドたちと合流して、船の中をサファイに案内してもらった。
居住区は、噴水の庭園がある箱庭のようなコロニーだったのでほっとした。部屋はシンプルで、何もない。次に、艦橋を覗き見した。オレは中に入ってもいいのだが、全員ぞろぞろというのは勘弁と言われたので、入り口で覗くだけになった。ここは居住区と反対で、計器の山。いざという時のアナログシステムを残しているからで、普段は使わないそうだ。
艦橋の下に士官の居住区があり、更にその下に、乗員の教育施設や運動施設や医務室がある。オレたちは、ここに長くいることになる。
エンジンルームにはドワーフがいる。ちょっと気難しい人だと聞いていたので、ザザムさんには、ファングさん自家製の一升瓶を持って挨拶した。これで、大親友になったらしい。愉快な人だった。
そう言えば、もう一人。居住区のラウンジ統括にも挨拶に行った。オレたちの食事を作ってくれる人だ。この人のことをラヴィが、コック長と呼びだした。ラヴィは、何でもおいしく食べる。竜族なので、カエラもそうだが、結構豪快に食べる。ラウンジ統括は、この二人が気に入って、旅の間は、みんなに自分のことをコック長と呼ばせていた。艦長もその例外ではない。コック長も愉快な人だ。
そして、艦橋の上、艦長室の更に上にある天体観測所に来た。ここに十賢人三人がいて打ち合わせをしている。艦運用はクロトの仕事。オレを手ぐすね引いて待っていた。ラヴィ達は、シールケと遊ぶと言って、さっさといなくなった。実際は、あいつらもライトボードを出せるのだが、オレのより簡易版だから仕方ない。サファイが残ってくれたので、詳細は伝わるだろう。
「ラヴィ、アリーシャ、ちょっと待ってくれ。ノーマが復帰コールしてきた」
「バトル召喚で出してあげて」
「ノーマ、バトル召喚」
ノーマがシャボンを舞い上がらせて現れた。みんなは、ノーマを案内する気満々だ。
「みんな、出発の時は、居住バブルの講堂に集合な」
「わかった」
「ヒロこそ遅れないでね」
「ノーマって人だったの」
「やーね、人魚よ」
かしましく出かける娘たちの後をカエラとマーナがニコニコとついて行く。おれは、十賢人に振り返って、航海の打ち合わせをすることになった。
天体観測所は、全面パノラマにできる観測所で、航海士とクロトが打ち合わせをしていた。おれとの打ち合わせになり時限回廊を映し出す。まるで、宇宙空間にいるみたいだった。もし、ライトボードが映し出す星図が、現在の物より精巧なら、今後の航海が、より安全になる。マイルズもグリンもそれを期待していた。
「それじゃあ、星図をメインコンピューターにインプットしますね。時限回廊の詳細をサジタリウス号のメインコンピューターにコピー」
すると、大量のデーターが流し込まれ、現在の時限回廊が映し出された。
「これは、リアルタイムの星図ですか?」
航海士が、パグーを近影させた。
「間違いありません。リアルタイムです」
「素晴らしい」
「なんて出力だ」
マイルズとグリンは、満足した。
「現在の結晶光星雲をお願いします」 クロトにとっては、これが最重要。
航海士によって、結晶光星雲が映し出された。遠目には、まるで、クラフト空間のように見える。
「星雲の影響は、何処を通っても影響を受けると思われます。ですから、従来通り、一番安全なルートを探しましょう。ヒロさんのライトボードの方が解像度が格段に上です。ありがとうございました」
これには、乗員全員の命がかかっている。
「ライトボードを解析したいものですな」
「まったくです」
「また、星雲近くなったら、星図を出力しますね」
「それじゃあ、時限回廊の詳細を話します。ここは時間と空間がめちゃめちゃな所です。途中から通常空間に出る道もあるのかもしれませんが、たいていは、とんでもないところに出てしまい。何十年と銀河を彷徨うことになります」
サファイとオレは、クロトに星図を示されながら、驚異の話を聞かされることになる。
ラヴィ達は、ラウンジにいた。ラヴィとカエラは、船の貴重な食料を出発前に食いつくす気満々でやって来た。みんな初心者。これから、出発時に、とんでもない重圧がかかるなんてこれっぽっちも思っていない。
艦長の言っていた 、「ヒトマル、マルマル時に発進だ」は、朝10時のこと。シールケとノーマ達は喫茶で来たつもりだが、ラヴィとカエラは、気になったメニューがあったみたいで、早速、濃厚リンゴパイを頼んでいた。
出発前の忙しい時にやって来たので、ラウンジ統括が自ら対応してくれた。
「今食べるのかい」
「だって美味しそうじゃないですか」
「リンゴパイって、コック長が作ったんですか」
「コック長? そうだよ。私の自信作さ。これだけで大満足の一品さ」
「食べたいです」
「わたしも」
「そうかい、そうかい。待っていなさい」
ラヴィは、ノーマとアリーシャに。カエラはマーナに「ちょっと、まだ朝よ」と、止められたが、そんなのお構いなし。シールケは、ラヴィとノーマは、お姫様だと聞いていたのに、とても自由なので、驚いている。
この後、出されたリンゴパイを本当に美味しそうに食べる二人の食べっぷりを見たラウンジ統括が、二人を気に入って、お代わりを出した。そのおかげで、みんな一口、味効き出来て、コック長のことをみんな気に入った。
シールケは、本島のエルフの学校に通っているが、アリーシャは家庭学習だったので、出会ったことがない。みんな、15歳で、もうすぐ成人を迎える。シールケは、みんな、将来どうするんだろうと気になってしょうがない。
「ねえねえ、みんなも、もうすぐ成人でしょう。成人したら何するの?やりたい職業ってあるの? 私は、良く分かんなくて、困っているのね。みんなの進路が聞きたい」
「ヒロのお嫁さんだよ」×3
メイドたちは、苦笑い。
「えーーーー。えっと、それ以外は?」
三人は、目を合わせて考え込んだ。
「ヒロのとこだから、ワールドシップを探すって言うんじゃない」
「その前に、サガと、ジュームよ。メインコンピューターを訪ねるんじゃなかったっけ」
「そういえば、ワールドシップだと、イベントは、ライトボードからじゃなかった?。宇宙に出れば、イベントが発生していたら、サガとジュームに、行けるよ」
「ラヴィ冴えてる」
「あっ、ごめん。変な会話だよね」
ノーマが、困惑していたシールケに気づいた。それで、アリーシャが将来について話しだした。
「えっとね、私は、お母さんと一緒で、職業が、観測者なのね。だから、そうなるのかな」
「もう、働いているの?」
「人魚の町に、レディオ商会って言う商社ギルドがあって、そこで鑑定士をしてる。今度行こうよ」
「私は、お父さんが、龍王になれって言うのよ。今回の首都星ラクールは、そのデビューだって」
「まずは、礼儀作法からですよね。ラヴィ様」
「私をカエラたちがいじめるのよ」
「そんなことは、ありません」
「へーー・・」
「シールケが困っているじゃない。私もラヴィと同じなんだけど、親族がいっぱいいるから、私が、女王にならなくてもいいのね。だから、やっぱり、ヒロ次第かな」
「ノーマ、ずるい」
「全然参考にならないや。どっちかって言うと、ビックリ」
「ごめんね。それで、シールケは、どうするの」
「まだ決めてないんだ。この旅で、何か変わりそうで、わくわくしてる」
「私もワクワクしてる」
「私もよ」
「私もだよ」
口には出さないが、メイドたちもそうだとシールケに賛成した。




