アリーシャの苦手なもの
クラーケンが体制を変えた。多分、全部の足でオレたちをからめとろうとしているのだろう。
ピピピッ
「全包囲攻撃くるぞ。エアーシェルだ」
アリーシャが待ってましたとばかりに空気の渦を形成した。そのため天井まで急上昇。天井に空気だまりができるほどの出力。
「もう、エアーシェルを解いていいぞアリーシャ」
天井を蹴って急下降し、オレたちが、元いた場所に向かって伸び切った7本の足の1本に突きを入れた。
ゴギュゥーー
断ち切れはしなかったが、足の動きが極端に鈍くなった。
いける。付け根に足の脳があるんだ。
ヒロは、クラーケンの足の付け根に集中攻撃を始めた。
ラヴィとミリアは、眉間ではなく、目を狙いに正面に向かった。その間に向かってきたクラーケンの足をラヴィがプロテクトアタックではじく。ミリアが抜き手で、見事、目を突き刺したが、そんなに効いていない。目の保護膜が厚すぎる。
その間にも足がわらわらと、ラヴィ達に伸びて来る。
「駄目だわ」
ぎゃうギャウ―― 〈そんなことない〉
ラヴィは、諦めずに足に体当たりする。それを見たミリアが、何度も目を突き刺した。ラヴィ達を襲っていた足は、あらぬ方向に伸びて、空振りした。
「効いているのね」
目の攻撃に効果あり。敵の攻撃精度が落ちたのを見たミリアが反対の目を狙う。この攻撃が、足と交戦しているノーマに有利に働いた。
クラーケンの足先は思ったより細い。打撃なら、アマゾネスの六防陣が効くのだが、吸盤で絡みついてくる。一番素早いノーマが、それを切って回るしかなかった。ところが、クラーケンの足の動きが鈍った。チャンスと見たアマゾネスの一人がクラーケンの足の付け根を指さす。7人は猛烈な勢いで、クラーケンの足の付け根を目指した。
「ノーマここよ。ヒロさんが、この辺りを切り落として、すぐ上昇して逃げていたわ」
斥侯タイプのアマゾネスが、ヒロの戦闘をよく観察していた。
「分かった」
ノーマが蒼剣を上段に構えた。蒼剣は青く輝き、打ち下ろすと、まるで刃が伸びたように、青い輝きが、クラーケンの足に食い込んでいく。蒼剣の特徴である斬撃。海撃の基本形をノーマは、もう、使っていた。
スパンと切れるクラーケンの足。全員行けると思った。
「別の足が襲ってくるわ」
7人は、チームで練習をしていたかのように、全員で上昇。切られた足まで、単独で、うねうね襲ってきたが、それもかわして天井側に逃げる。
ラヴィ達が反対の目に襲い掛かり、クラーケンの動きがさらに鈍くなった。
「ノーマ、もう一本よ」
アマゾネスの小隊長が今だという。また全員で、クラーケンの足元に襲い掛かった。中には、クラーケンの足の切れ端がそのまま引っ付いているアマゾネスもいたが、全く動じていない。
しかし、足元に到達する前に、一人が、足にからめとられてしまった。ノーマ達は、それを全力で、救出する。ディフェンス3人、オフェンス3人。見事足先をノーマが切り落として救出する。アマゾネスが足先に攻撃しても、抜き手攻撃の効果があまりない。今後アマゾネスには武器が必要だと、ノーマは、ヒロに、アマゾネス用の武器を注文することにした。
「まだいけます」
別のアマゾネスが、足元への道を示す。7人は、全く止まる気配がない。
襲ってくる足を全員一丸となってディフェンスする。ノーマが頭一つ抜けて、足の付け根に到達した。
「やーー」
もう一本足が落ちた。
ここで、アリーシャの通信が入った。
「クラーケンの弱点は、眉間の奥にあるのよ。そこを深く突き刺して」
ラヴィ達では、目の虹彩まで攻撃が届いていない。眉間を深く突き刺すことができるのは、ノーマだけ。
「眉間の奥が弱点だって。アリーシャに、眉間を深く突き刺してって言われた」
「みんな聞いた? ミリアの所に行くわよ」
全員で、クラーケンの正面に向かう。ラヴィ達のおかげで、クラーケンの動きが鈍い。ノーマ達は、足元にいたため、最短距離で、ノーマ達がいるところに到着した。
そこに、薄く白い光で光っているラヴィが、7人を飛び越えて、後ろから襲ってきていた足をはじいた。
「今よ」
ミリアの声を聴いた7人が、クラーケンの眉間に突っ込む。その中央にいたノーマが、青光りしている蒼剣をクラーケンの眉間に突き立てた。
ゴギュゥーーーン、ピキ、ピキッ
ぴくぴくと痙攣したと思ったら、頭の部分がうなだれた。足は、それとは無関係なようにうごめいているが、もう、敵ではないだろう。9人は、この場から離れることにした。
「ヒロ、ブラックソードのリキャストタイム完了よ」
「よし、ディープベース。突っ込むぞアリーシャ」
「ちょっといやーーー」
いやと言いながらもアリーシャは、ヒロから離れない。どちらかというと、しがみついていると言った感じだ。
こりゃあ、タコ焼きを食べさせる時は、騙して食べさせるしかないな。
ヒロは、ダイブして、クラーケンの正面に現れた。
「オーバーブレイド」
クラーケンの眉間にブラックソードを突き刺しながら、剣をオーバーブレイドする。ブラックソードは、クラーケンの脳に到達。クラーケンの頭は、ぴくぴくと痙攣して動かなくなった。
「コングラッチレーションしないね」
アリーシャは、信じられないと、不満を漏らす。城の中のクラーケンは、ボスでも何でもなかった。
この時ヒロは、アイテムボックスに現れているタコの足という項目を見てニコッと笑っていた。超巨大なたこ足ゲット。いいものがドロップしたと喜んだ。
クラーケンの本体は、倒したが、まだ足がわらわら動いている。天井側に逃げたヒロ達の所に、全員集まった。
「アリーシャでも、苦手なものがあるんだな」
「当り前よ」
ぎゃう、が、ギャウ 〈小さいのも掃討する?〉
「いや、ジオイドの人魚たちの食料になる。アリーシャが連絡してみなよ。ミリアさんは、城までの安全ルートを確保してください。ジオイドの連中に、クラーケンを解体させます」
「何とかしましょう。このまま腐らせるのは、遺跡調査の為にも不味いわ。胴体部分は城の外に出すしかないけど、食料になるというのなら、ブルーシャークに全部食べさせるのはもったいない。とりあえず私たちで、足だけでも確保しておきますね」
やはり実力的に、ジオイドの人魚は、まだ、ここまで来ることができないらしい。
「足だけになっちゃったけど、眠眠さんが喜んでた。本当に美味しいの? レベル上げしている皆の励みになるんですって」
「苦手なものは、克服したほうがいいんじゃない」
ぎゃうぎゃう
二人とも通信で、アリーシャの悲鳴を聞いていた。アリーシャは、ちょっと恥ずかしいなと、ヒロの背中に隠れた。
「さあ、先に進みましょう」
ミリアの判断で先に進むことになった。今日は地下迷宮の入り口まで到達する予定。




