6 同士との交流
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ゲームでもリアルでも飯は食った。
こっちではパスタ系があったので、がっつりかどうかは微妙だけどボロネーゼを大盛りで。
リアルではラーメンが食いたくなったので、歩いて十分ほどにある超こってりな豚骨を大盛りで。
このこってりを、一度作ってみようなかって思ったけど、面倒臭くなってやめた。こういうのを自宅で再現するのは非常にめんどくさい。
臭いも酷い事になりそうだったし。
こういうのは、ラーメン屋だからギリギリ許されるのであって、マンションでやろうものなら隣近所から総スカンだわ。
さて、色々と考えることがあるが、とりあえず狩った物を売ってしまおう。
薬草とかもちょっとずつ増えているけど、これはその内薬師取ってポーションの実験のために使う事にする。
しかし、しないビジョンしか浮かばないのはなんでだろうなー
うん、多分しねーわ。薬草も売ろうかな。いや、一応取っておこう。
「全部で三十八万だな」
「ほう、思ってたよりも高かったですね」
「こんだけ持って来ればそれなりの値段になるさ。もっと品質が良ければ五十万近くするんだかな」
コレで手持ちの金額が百万を超えたわけだ。それでも、性能の高い鎧とか剣とか買おうと思ったら簡単に消し飛ぶ金額だがな。
まぁ、重たい鎧を装備したり、剣を振り回したりするような職種じゃないから問題ない。
一応メインで使いたい武器は考えているが、スキルにあるかどうかは微妙だな。個人的に慣れ親しんだ武器なんで、スキルになくても使って行きたいが。
「ところでよ……ギルドの方は利用しねぇのか?」
「……あぁ、そういえば、その内行こうと思っていたところですね」
街の施設とか、もっと知っておくべきだと思ってはいるのだが、魔法使っての戦闘が楽しすぎるのが悪い。もっと色んな種類の魔法でヒャッハーしたいのだ。
そんな気持ちが強すぎて、施設とかそっちのけになっている感は否めない。
よし、今日の夜は街の施設を利用してみよう。
「そうか……いやな、ウチみたいな小規模の店に持って来ているから気になってな」
「はぁ……まぁ、正直最初に目についたからここで取引しているだけですがね」
「ハッハッハッ!正直に言い過ぎだろ!」
理由を素直に話したら豪快に笑われた。
確かにこの店の規模はこぢんまりしているから、不思議に思ったのだろう。
とは言え、俺も何時までこの街に居るか分からないし、もっと先に進めばまた違う店を探さなければならないだろう。
そう考えると、ギルドに登録しておけば、その街のギルドを利用できるようになるのだろうか?こういうファンタジー世界の定番的な方法だろうと思うけど。
その辺りも、行ってから調べてみない事には分からないか。
「ほら、買い取り料だ」
メッセージにハイを選択して、金が入る。
この金をどう使うかはもう決めている。
新しく召喚するモンスターに使おうと思っている。
では、何を新しく召喚するかついて考えなければならない。
歩きながら考えるもの危ないし、座れるところを探してみよう。
召喚できるリストを見てみたが、変化はなかった。コレで増えていたらまた考え直さなければならなかったので、ある意味ではありがたい。残念と言う気持ちもあるけど。
現在の召喚魔法のレベルは5で、職業レベルも同じだ。
使役出来るモンスターの数自体は、レベルに応じて一匹ずつ増えていくようだが、同時に召還していられるのは現在三体のみだ。
別に両方召喚してもいいのだが、一応順々にしよう。
と言う訳で、コイツだ。
「サモンモンスター!」
ウッドドール Lv1 香山
体力 10
生命力 10
精神力 12
敏捷 11
知力 12
筋力 11
技量 23
スキル
槍 中盾 薬師 木工
ステータスは技量以外平均的。
まさか四つ全部選択式だとは思わなかった。戦闘スキルと生産スキルのそれぞれ二つずつ選択するみたいですな。つまり、装備と工具の両方を用意する必要がある訳です。
まぁ、工具は今すぐ必要ではないか。その辺りは追々ね。
ちなみに、名前の由来は世界一有名な着せ替え人形から。
見た目は木製のマネキンだな。顔の部分ものっぺりしている。背丈は俺より頭一つ分ほど小さい。
さて、装備を買いに行こうか。
【武器アイテム】スピア 分類:槍 攻+5 耐久性80 品質C レア度1
一般的な鉄製の槍。リーチが長く、盾を構えながら攻撃も出来る。刺突向きの刃であるため、斬撃には向かない。
【武器アイテム】大鷲のカイトシールド 分類:中盾 防+5 耐久性150 品質C レア度1
大鷲の模様が書かれたカイトシールド。模様はただのデザインであるため、性能は普通である。
武器はこんなの。ごく普通の武器で、カイトシールドのデザインがカッコいいくらい。
あと、防具も買った。動きやすさ重視で考えると、
【防具アイテム】草原狼のハードレザーアーマー 防+10 耐久性200 品質C レア度2
草原狼の皮で出来たハードレザーアーマー。ありふれた防具であるが、それだけに堅実な性能である。
【防具アイテム】草原狼のハードレザーガントレット 防+6 耐久性150 品質C レア度2
草原狼の皮で出来たハードレザーガントレット。皮製であるため、動きの阻害は小さい。
【防具アイテム】草原狼のハードレザーブーツ 防+8 耐久性170 品質C レア度2
草原狼の皮で出来たハードレザーブーツ。皮製であるため、動きの阻害は小さい。
ハードレザー一式で安いのがあったので買った。これより性能がいいのを買おうと思ったら、丸一日狩りをしないといけないだろう。
サイズの調整も、店の人が無料でしてくれているのでありがたい。
召喚モンスターの装備って言った時は、ちょっと驚いた顔をしてたけどね。
さて、現在は香山のサイズを測っている最中だ。そりゃサイズが解らんと調整しようがないわな。
そういうことを予め店員さんに言っていれば、余計な時間を取らずに済んだのにね。まぁ、かかっても三十分くらいって言っていたし、マルコをモフりながらゆっくりしていようかね。
で、しばらくもふもふしていて、されるがままのマルコを眺めていたんだけど、
「あっ、あのー……」
通りかかった二人組の内、小さい女の子の方に声を掛けられた。
頭上のマーカーは青。つまり俺と同じプレイヤーだ。
「えっと、あの、ワンちゃん、なんですが……そのー……」
「あー触らせてくれませんかって」
一緒に居た体格のいい男の子が、女の子の言いたい事を代弁してくれた。まぁ、してくれなくても、視線の方はマルコのほうに釘付けだったし、モフモフしたいんだろうなとは思っていたけどな。
「おう、かまわんよ。多分首の辺りを撫でられるのが好きっぽいから」
「あっ、ありがとうございます!」
許可したらお礼を言った瞬間にモフモフし始めた少女。よく見るとこの子耳が尖っているな……
「はぁ……すみませんね……こいつ、無類の動物好きでして……」
「なーに構わんよ。ちっょと暇だったしね」
「ありがとうございます。自分はパトリックと言います。こいつはヤンです。一応二人ともサマナーです」
「どもども丁寧に。俺はミストと言います。同じくサマナーです」
おぉ、初めて同じ職業の人間に会えたよ。掲示板情報だと、サマナーは地味にレア職みたいだし。
ちなみに、もっとレアなのが職人系だったりする。ガラスとか宝石とか樵とか錬金術とかは一人だけらしい。まぁ、初期なんてこんなもんでしょう。
プレイ人口が増えたら、職業別でも増えるだろうし。それでもレア職は何個か出て来るだろうけど。
「……ちなみになんですけど、連れているモンスターは他に何が居ますか?もちろん言いたくないなら言わなくても大丈夫なんですけど」
「今超モフられているの入れて三体だね。他のはフェアリーとウッドドールだ」
「フェアリー……ですか?」
モフモフに夢中になっていた女の子、ヤンちゃんがフェアリーと言う単語に反応を示した。パトリック君は呆れている。
「そう、フェアリー。今店の中で新入りの様子を眺めていると思うけど……」
「お待たせしました。調整が完了しましたよ」
丁度いいタイミングで、ティアを頭に乗せた香山が出てきた……んだが……
あー……何と言うか……防具を着せて展示しているマネキンみたいな感じになったな。
「まぁ、いいか。ありがとうございました」
「またどうぞー」
よし、これで俺の魔法使い像に一歩近づいた。やはり前衛という壁を使って、後ろから大魔法ブッパ。コレだよコレ。敵陣に凸してヒャッハーするだけが戦闘じゃないんだよ。
そして、俺の肩に飛んで座って足パタパタさせているティアさん、をキラキラした目で見つめるヤンちゃん、をまたかよと言った感じで呆れているパトリック君。
あーあーうーうー言いながら、それでもフェリのほうを見ながらマルコをモフっているヤンちゃんは、どうやら人見知りが激しいらしい。てか、地味に器用だね君。
このまま普通にフェリを嗾けてもいいけど、それだとつまらんので一工夫。
「ヘイ少年、パス」
「はい?えっ?なんですかコレ?」
ハチミツのビンとスプーンをパトリック君に渡し、ヤンちゃんに渡すように指差す。
話題の中心になっているティアさんですが、俺がハチミツのビンを出した時点ではしゃぎ始めた。
「えっ?えっと……どっ、どうすれば……」
パトリック君経由で渡されたビンの周りを、ティアがグルグルしているため、ヤンちゃんがおろおろしている。
「中身はハチミツ。開けて、すくって、差し出してみ」
次はお菓子でどれが好きか試してみたかったけど、ハチミツのビンが一番上にあったので。
彼女の肩に乗って急かす様にパンパンしているティアの様子を、アワアワしながらも笑顔で見ながらビンを開けてハチミツを一掬い。
美味しそうに舐めているティアの様子を、蕩ける様な笑顔で見ている。
一匙舐め終わったティアが、俺の肩に戻って来た。
もう、感極まった様子でプルプルしている様子の少女を、「あっ、コレもうアカンパターンだな」って感じで達観した表情をして見ている少年。それらを他人事のように眺めている俺。
「もうね、コレすごいねケンちゃんすごいよこの子達もふもふしててキラキラしてて可愛くて愛らしくてなでなでしてぺろぺろして暖かくて美味しそうに食べててあーもー兎に角凄いよサマナー一日粘ってキャラ制作した甲斐があったよ!」
「そうか、そりゃよかった。あと、名前で呼ぶよ止めろ。ここでの俺はパトリックだ」
「わかったケンちゃん」
「何もわかってないだろうが」
そしてこのキャラ崩壊である。尚、最初の「もうね」以降はワンブレスです。
「ありがとうございましたミストさん!」
そしてこの大声でのお礼である。おどおどしていた初対面時の君は休暇中かな?
「ほいよ、どういたしまして」
「すみません本当に……ありがとうございます」
最初はカップルかなと思ったけど、何だかきょうだいのようにも見える。違ったとしても、兄貴分と妹分な関係なのは間違いないだろう。
微笑ましいね。
「なーに、人との交流もオンラインゲームにおける醍醐味の1つさ。迷惑にならない限り存分にやったほうがいい」
「そう言ってもらえると助かります。もう、こいつが暴走すると止まらなくって……」
「いえ、その、違うんです!ただ、可愛い物が好きなだけで……」
「うむ、うちの子達が可愛いのは間違いじゃないな」
「はい!間違いないです!」
「すみません、コレに燃料を与えないでもらえませんか」
「ちょっと!?酷くないケンちゃん!?」
「だからここではパトリックだって言ってんだろうが」
「うむ、オンゲで実名を呼ぶのはマナー違反だから気を付けたほうがいいぞ」
「はい……すみません……」
「おい、ミストさんの言う事は素直に聞くのかよ」
Qこれはコントですか?Aいいえ、VRMMOです。
「まぁ、この程度なら可愛いものさ。世の中には、マナーとかまるで考えない輩も居るし。その点に関して、ヤンちゃんはしっかり謝っているしね。これから気を付ければいいさ」
「はい……すみません、お見苦しい所をお見せしました」
「ホントにな……ったく」
うむうむ、仲良き事は良き事かな。
「んじゃ、この話はここでおしまいで。話題を変えるために、俺から質問。二人が最初に召喚モンスターはなんだった?俺はフェアリーだったけど」
「私はバイパー、蛇でした」
「俺はホークでしたね」
「おぉ、見事にバラバラ」
初期モンスターって何種類くらい居るんだろうな?まぁ、あまり興味ないけど。
そして、初期モンスターに前衛を任せられそうなのが居ない件について。遊撃とか襲撃向けばかりじゃないか。
まぁ、この辺のモンスターは弱いから、それでトントンかね。
「なら、召喚リストはどうなってる?」
「えっ?」
「召喚リスト……ですか?」
「あぁ、二体目以降はリストから選んで新しく召喚するから、そのリストを聞いておきたかったんだけど……」
「えっと……実は……まだ、レベル1でして……」
「昨日はサマナー出すのに付き合わされて、結局丸1日かかってようやく今から遊び始めたので……」
「わーおー」
そう言えばそんなこと言ってたね彼女。見た所装備品とか付けていないし、本当に今から準備して始めますって感じの状態やね。
「そうか……んじゃ、頑張れお二人さん。この辺りの敵は大して強くないから、落ち着いて連携が取れれば勝てるさ」
「はい!頑張ります!」
「あとすみませんが、フレンドの登録いいですか?なんかあったら時に相談とかしてくれる相手が欲しいので……」
「こちらとしてもありがたいな。折角知り合えたサマナーだしね」
こちらとしても、色々知りたい事とかある。掲示板の情報も嘘が混じっていることが多いし、一人で調べるのにも限界があるしね。
しかし彼、コミュ力高いな。
「えーっと……よし、登録完了」
「ありがとうございます。とりあえず、リストが判明したら報告しますので」
「本当にありがとうございました!」
「おう、よい狩りを」
とは言え彼らは準備からだけど。俺は、香山の戦闘と闇魔法がどんなものか試しておきたいし。
それでは、午後の狩りと参りましょう。
あっ、ヤンちゃんの耳の事聞くの忘れてた。まぁ、次に会った時でいいか。
と言うか、鑑定使えばよかったじゃん……