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3 事前情報の重要性

 街には無事に戻って来れた。そう遠い所まで行っていなかったため、すぐに戻れた。

 一回だけモンスターとエンカウントしてしまったが、幸いにも単体だったから楽に勝てた。

 しかし、所持重量が一杯であるため、死体は放置せざるを得ない。貧乏性な俺としては勿体ないと思う次第だが、背に腹は替えられないのよね。


 時刻は11時。9時からのサービス開始で、もう2時間経ったのか。楽しい時間は早いものだ。

 しかし、残念な事ながら一度中断しなければならない。

 ゲーム内時間と現実の時間はリンクしているため、そろそろ飯の時間である。

 冷蔵庫の中は寂しい物だったから、買い物から始める必要がある。


 街に戻ったら一旦ログアウトしよう。そう思ってたら、


「あのー……すみません、ちょっといいですか?」


 後ろから声を掛けられた。振り返って見てみると、若い男の子2人と、女の子2人のパーティだった。俺に声をかけたのは、先頭に居た男の子で、戦士系の装備をしていた。


「えぇ、どうぞ」

「えーっとですね……貴方が倒したモンスター何ですが、何故そのままにしているのでしょう?」

「あぁ、アレね。残念ながら所持重量限界でね。初期体力は低いし、パーティを組んでいる仲間も居ないものだからさ。泣く泣くそのままにしているんだ」

「なるほど、そういう事だったんですね……」


 さて、この質問はただの好奇心からだろうか。そうじゃないとするなら、大体予想がつくな。


「だからあのワンコは君たちの好きにしていいよ。品質はあまり良くないだろうけど」


 MPもそんなに残っていなかったため、飛び掛かりを小盾で殴り落とし、杖で頭を殴打。エアカッターを喰らっても倒せていなかったので、止めは蹴りだ。

 小盾の使い方としては、間違っているという自覚はある。でもまぁ、拳よりも鉄の塊である小盾で殴った方がダメージがデカいかなって思ってさ。


「いいんですか?」

「いいよ。そのままにしておくのも勿体無いしね。俺が無理なら誰かに持って行ってもらった方がいいさ」

「でしたら、お言葉に甘えて。ありがとうございます」

「気にすんな。こちらとしてもありがたい話だ」


 とは言え、俺が何も言わなくても彼らが取って行ったかもしれない。

 例え彼らが取らなくても、誰かが取って行っただろう。

 どちらにせよ、俺の物にならないと言う結果に変わりはないので、どうでもいい事だな。


「あと……その、肩に乗っている小さいのって……」


 今度はローブを着て杖を持った女の子からの質問。ただ、視線は俺の肩に乗ってのんびりしているティアに釘付けである。


「あぁ、召喚モンスターだよ。職業にサマナーってのがあってね。魔法職だったし、特段パーティを組む予定の人も居なかったから」


 そう答えると、ありがとうございますと言った後に、小声で何かぶつぶつ言い始めた。断片的には、キャラを作り直そうかどうかを検討しているようだ。

 初期のモンスターはランダムなのは……別に教えなくてもいいか。もう一人の男の子が止めているし。


「じゃあ、サオリ」

「……はいよ」


 そんな二人を無視して、多分リーダーである戦士装備の少年が、後ろに居た弓矢装備の女の子に声をかける。

 この子もティアの方を見てはいたが、ローブの子ほどではない。

 やはり女性と言う者は、可愛らしい物が好きなんだろうな。


 ちょっとだけ名残惜しそうな彼女は、腰のベルトから一本のナイフを取り出して……ウィードウルフの死体に突き刺した。

 すると死体は消えて、皮っぽい物だけが残ったのだった。

 ・・・。えっ?何それ?


「ゴメン、ちょっといい?俺からも質問なんだけどさ……」

「えっ?あっ、はい、なんでしょう?」


 こちらから質問されるとは思っていなかったのか、少しだけ慌てた様子のリーダーっぽい少年。

 けど、こっちの方が内心慌てていたりする。


「いや……そのナイフなんだけどさ……何で刺しただけで死体が消えたんだ?」

「えっ?いや、何でって……剥ぎ取りナイフだからですけど……」

「そっかー……ちなみにどこで買ったの?それとも初期装備だったり?」

「えっと……普通に武器屋ですけど……」


 ・・・。そんな物あったっけ?


 思い返してみれば……彼女が持っている小さなナイフと、似たような物があったような……なかったような……

 畜生、目的の物以外スルーしていた。コレがあったらもっと戦闘が出来ていたじゃないか……


「あのー……もしかして……」

「まぁいいや。情報ありがとう。戦闘ガンバ」


 何かを言われる前に、退散しましょうそうしましょう。

 やはり事前調査って大切。装備と回復アイテムだけでは足りないという訳だ。

 この醜態は、その授業料という事で、自分を無理やり納得させる。

 外面は何でもないようにしているけど、実際は結構恥ずかしいです。明らかに年下の子達の前で、調査不足が判明した訳だし……


 魔法での戦闘と召喚を優先させた結果がコレだよ!




 一旦ログアウトして、買い物と食事と家事を済ませて再びログイン。

 ティアに関しては、街に入る前にリターンモンスターを使って戻しておいた。

 説明文を見てみると、戻している時間に合わせて回復していくようだ。

 ありがたいことである。

 ポーション渡してみたんだが、お気に召さなかったらしくちょっとしか飲まなかったし……気持ちは分かるわ……


 街中はセーフティーエリアであるため、どこでもログアウト出来るが、ログイン場所は強制的に一番最初の広間になるらしい。


 とりあえず武器屋に行こう。今度はじっくりと品物を見よう。

 しかしアレだな。冷静になってよく見てみたら、この辺り一帯武器とか防具とかの店ばかりじゃないか。

 とりあえず一番近い店に凸して、一番安い初心者用装備を買った俺はやはりアホのようだ。

 もっと落ち着こうぜ俺。いくらこの手のゲームが初めてとは言え、興奮しすぎ。

 今までのVRは、魔法とかのファンタジー要素の低いゲームばかりだったからなぁ……と言う言い訳。

 『オルタナティブ・アース・ファンタジー』が世界初じゃないか?本格的なVRMMOファンタジーって。

 逸る気持ちを抑えられなかった、後悔も反省もしている。


 よっしゃ懺悔も済ませたし、気持ちを切り替えよう。



【補助アイテム】剥ぎ取りナイフ

 武器のしての性能は全くない、剥ぎ取り専用のナイフ。死骸に刺すだけで、素材アイテムがドロップする。生きているモンスターには全く意味を為さない。


 あった。ついでに鑑定のレベルも上がった。やったぜ。

 説明文を見る限り、剥ぎ取り以外の性能はないらしい。しかし、同じ剥ぎ取りナイフでも値段に大小がある。今鑑定したのは、一番安いのだ。


【補助アイテム】剥ぎ取りナイフS

 武器としての性能は全くない、剥ぎ取り専用のナイフ。品質を下げることない、最上級のナイフだ。


 コレが一番高いの。ついているSはスーパーの略だろうか?

 と言うか、普通の剥ぎ取りナイフだったら品質が下がるの?見た目に大差ないと思うんだけど……

 そしてスゲー高いんだけど、なんだよ五十万クレジットってバカじゃねーの。


【補助アイテム】肉切り包丁

 武器としての性能は全くない、剥ぎ取り専用の包丁。このアイテムを使うと、肉系の素材しかドロップしなくなるが、専用のスキルが必要となる。

 

 こんなのもあった。他にも皮専用とかもあったけど、そういうアイテムを使うには、全部専用のスキルが必要になるらしい。

 こういう事に特別なこだわりがない人間ならば、普通の剥ぎ取りナイフで十分だろう。


 とりあえず一番安いナイフを買ったので、犬の死体で試してみよう。そう思ったけど、街中で死体取り出してナイフ刺すとか、ただのサイコパスだよなぁ……

 今回は死体そのままで売ってみるとしよう。剥ぎ取りナイフの使用は今度からだ。

 さて、買取をしてくれる店を探すとしよう。





「全部で一万クレジットだな」

「それは……値段的にどうなんですか?」

「品質が良かったら、もっと高値で買い取るんだがな……」


 モンスターの素材を扱っている店を見つけたので、全部出して渡した。

 結果はぼろ糞のようですが。


 ウィードウルフが1匹千クレジット。ホーンラビットは千七百クレジットで、ワイルドピックは二千だ。

 犬の肉は食用に向かないが、皮や骨は防具に向いているらしい。それでも在り来たりな材料な為一番安い。

 ウサギの角は武器の素材として地味に価値が高いらしく、肉や皮は微妙なそうだ。

 豚は食用として価値があるから一番高いらしい。

 しかし、これらの値段は品質がまともである事が前提条件らしい。持って来た数はそれなりだが、品質がEとかFでは使える所が限られるため、この程度の値段にしかならないようだ。


 数回の戦闘で一万と聞くと高く感じるが、防具屋で見たレザーアーマー一式が安くても二万ちょいである事を考えれば、微妙な感じだな。その性能も初心者一式がマシになった程度だったし。

 しっかりとした品質であれば、三万以上するらしいが、それでも上等なレザー一式を買うにはまるで足りない。


 まぁ、そこまで必死になって金を稼ぎたい訳ではない。

 魔法の使用や、戦闘、冒険が優先のため、金稼ぎは二、三が飛んで四の次だ。


「それで、一万で売るでいいのかい?」

「えぇ、それでお願いします」

「……本当にいいのかい?」

「ごねたら値上げしてくれるのですか?」

「お前さんが美女だったら少しだけ考えたさ」

「つまり、その値段で納得するしかないという事です。品質が酷いのは自覚していますしね」


 品質Gとか、買い取れないとか言われてもおかしないくらいだ。金に変換できるだけマシだと考えよう。

 金を受け取って、店を後にする。


 さてと、これからどこに行こうか?

 第一目標である魔法を使った戦闘は出来た訳だから、とりあえず街を探索しよう。

 




 冒険者ギルド、闘技場、訓練所、図書館、宿泊施設、武器防具屋、食糧販売店、雑貨屋、装飾品販売店、その他色々あった。

 冒険者ギルドとか定番中の定番な施設だけど、図書館があるのって珍しくないか?あったとしても、おまけ要素の方が強そうだし、そこまで重要な施設ではないだろう。

 宿泊施設で部屋を取ってログアウトすると、ログインした時はその部屋になるし、HPとMPが回復しやすくなるらしい。回復率は、施設の値段とログアウトしていた時間で決まるとの事。

 瀕死でもない限り、一晩有れば全快するとの事。この辺りは、宿屋の人に教えてもらった。

 食糧販売店では、色々な食材を売っていた。どうやら牧畜とかもちゃんとしているようで、普通の鶏とか牛とかも存在しているらしい。

 ただ、モンスターの肉も売られていて、こちらの方が値段が高かった。それだけ美味いのだろうか?

 雑貨屋は本当に色々あった。大体の物は、冒険の手助けになる便利グッズだ。

 携帯調理器具や、テント、ランタン、大容量バックなどがあった。

 一番気になったのは大容量バックだろうか。

 このアイテムは、装備品扱いになるため所持重量とは別のカウントになるみたいだ。

 ただ、当然入れている物が多いほど重くなって動きを阻害する。モンスターから攻撃を受けても破れてしまうので、使えるかどうかは微妙な所だ。

 装飾品は身に付けていると、ステータスにプラス修正がされたり、命中率や成功率などの補助をする物だ。

 一応付けようと思えば何点でも付けられるが、中には相性の悪い装飾品も存在しており、効果を下げてしまう組み合わせもあるらしい。逆もまたあるそうだが。


 こんな感じで街中を探索していたら、既に日が落ちていた。それでも完全に暗くなる前に街灯が点いたので、少なくとも表通りは明るいままだ。

 時刻は七時前。現在地は、飲食店の多い所のようで、美味そうな匂いがあちらこちらから漂っている。

 飯時だな。腹が減っては戦は出来ぬと言うし、ログアウトして夕飯にしよう。


 そう思ってメニューを開いてみると、一覧の中に『状態異常:空腹』とあった。

 ・・・。はい?何それ? 

 タッチして見てみると、名前通りの異常だった。

 この状態になると様々な数値にマイナス補正が掛かり、放置していると最終的に死ぬらしい。

 死因は当然餓死だ。

 マジかよリアルすぎるだろこのゲーム。


 あぁ、だから携帯調理器具とかあったり、食材が豊富だったりしたのか。設定に凝っているだけではなかったのね。

 しかし、食事が重要なゲームって珍しくないか?大抵はただの回復アイテム扱いじゃん。

 それはいいとして、ゲームとリアルのどちらでも食事が必要ってのはある意味お得か?

 ゲーム内でどれだけカロリーの高い物を食べようが、リアルで体型が変わる訳がない。つまり食い放題という訳だ。

 でも、ゲームでは豪華で、リアルでは普通のだったら妙な気分になりそう。

 やはり贅沢は敵だな、うん。


 とりあえずゲーム内での食事を優先しよう。どういう物があるか気になるし、夕飯は昼飯と一緒に作って置いてある。

 多少味は変えているとはいえ、似たような物を連続で食べるのは飽きる。

 と言う訳で、昼に食った食事とは、違うジャンルの物を食べよう。

 ちなみに昼は焼き飯にラーメンの中華風だったので、洋食にしようと思う。

 本当は和食が食べたかったのだが、街並みからして和食はないだろうなぁ……


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