2 いきなりタイトル詐欺
フェアリー Lv1 ティア
体力 8
生命力 3
精神力 20
敏捷 17
知力 20
筋力 3
技量 5
スキル
回避 MP自動回復(小) 光魔法
名前は最も有名な妖精の一つから捩って。
これで実は男だったらヤバいかも分からんね……そもそも性別があるのかさえ疑問なんだが?
光にしたのは、初期段階で回復系の呪文があるみたいだからです。ゲーム内での掲示板で調べました。もうそこまで調べがついているあたり、検証マニアと言う物は何処にでも居るようです。
ありがたやありがたや。
さて、最初は相棒になる召喚モンスターに前衛を任せようと思っていたのだが……
ステータスや見た目、スキル一覧で判断できる通りです。
明らかに後衛向けで、前衛なんてとてもではないが任せられない。
だったら俺が前衛するしかないじゃない(白目)。
だからティアには回復が使えるであろう光魔法で。
スキルには回避と言う便利そうなのがあるから、どちらかと言えば遊撃になるかも知れない。
その辺りは戦って見ないと分からんわな。
とりあえず、敵モンスターが出る所まで移動しよう。
と言っても、門を出て結構離れた場所からは草原のようで、既に戦闘中らしい。
剣とか槍とか持った人が、小さな毛玉や少し大きな犬っぽいのと戦いでごった返しているのがここからでも見える。
仕舞いには魔法っぽいエフェクトや、矢のような物が飛んでいるのも見える。
人の頭上には青の逆三角形、動物っぽいモンスターどもは赤の逆三角形がそれぞれ見える。
しかし、明らかに青カーソルの方が圧倒的に多くて、赤カーソルは少ない。
更に言うなら、小さい上に結構早く動いている。そんな状況で武器とか魔法とか使っていたら……
「おー……案の定どっかこっかでトラブっていやがりますねぇ……あっ、遠見がレベルアップした」
当然の結果である。中にはモンスターそっちのけで対人バトルに発展しているプレイヤーまでいるようだ。
そして、遠見のレベルアップは予想外です。スキル別でレベルが上がる仕様なのか。敵を倒した経験値が均等に振られる訳ではないのかね?
その辺りは重要ではないので、マニアの人に任せることにする。今やりたいのは魔法による戦闘だ。
でもその前に、このプチ地獄絵図をスクショしておきたい。ついでにティアもスクショしておく。
よし、邪魔されずに戦闘が出来る所を探そう。とりあえず、真っ直ぐではなく横に行ってみるか。例え負けたとしても、失う物はそんなに無いしね。
という訳で林の方へ突貫。視界はそんなに良くないため、ゆっくり進んでいくとしよう。
あと、風魔法にエンチャント的なのがあったのでそれも使っておこうか。
【風魔法】エンチャントウィンド
一時的に風の力を付加して敏捷値を上げる呪文。数値や制限時間は、風魔法のレベルに応じて伸びていく。
なるほど、シンプルな呪文だな。まだ初期レベルだから効果も低いだろうが、これからに期待だな。
「エンチャントウィンド」
使った瞬間、少しだけ身体が軽くなったような気がする。心なしか、動くスピードも速いような。
実際はどの程度上がっているのか。メニューを開いて、ステ欄を見てみるとプラス3されていた。地味。でも無いよりましか。ティアにも使っておこうかな。
「エンチャントウィンド」
一応ティアのステ欄も見てみたが、同じくプラス3だった。問題はどの程度効果があるのかだけど、その検証は後にしよう。
「お客さんだな……」
何かの足音、獣のような唸り声、こちらに対する敵意。そんなものがする方向を見てみると、犬っぽいのが2匹居た。頭上にある逆三角形のマーカーは赤。
つまり、
「敵だな……ティア、初戦闘だ。気合い入れていこう」
距離は……10メートルもないか。魔法を使うのは初めてだから、有効射程距離とかまったく分からんが……まぁ、なんとかなるだろ。
先制攻撃はティアの光の玉。意外と早いスピードで、犬どもに向かって飛んでいく。
が、犬どももバカではないらしく、光の玉に反応してティアに向かって走り出した。2匹とも飛び掛かって行った訳だが、ティアは妖精だ。上空に飛んで行ってあっさり避ける。
明らかにお前らの脚力では届かないのに、ティアだけに向かってぴょんぴょんしている。
前言撤回、お前らバカだわ。いい的だぜ。
「ファイアボール!」
出て行ったのは、ソフトボールくらいの火の玉。それがそこまで早くないスピードで、一匹に見事命中した。一瞬だけ怯んだようだが、すぐにこちらに標的が向いて接近し来た。
頭上に細長いバーが現れ、赤い部分が3分の1くらい残っている。多分これが残りの体力なのだろう。一発でこれは中々ではないだろうか。
そして攻撃はまたしても飛び掛かり。だったら、
「スイング!」
右手に持っている杖の武技を使って迎撃する。
武技と言っても、ただの横殴りだが、普通にぶん殴るより威力は高いだろう。
しかしアレだな。使ってみて思うが、妙な感覚だな。アシスト機能でも付いているのか、自分の腕のはずなのに、勝手に動かされたって感じだ。
この感覚に慣れるのには時間がかかりそうだが、こちらの威力も中々らしい。
赤い部分が無くなり、倒れて動かなくなった。
もう一匹のわんこは、仲間が死んだことによって、俺の方にヘイトが来たようだ。
やっぱりバカだなこいつら、敵は俺だけじゃねーだろ。
ティアの光の玉が、後ろから見事命中。ダメージはほとんど無いようだが、ファイヤーボールよりは怯んでいる。
その隙を利用し、近付いて蹴っ飛ばす!
思いっ切り蹴ったので、犬っころは完全に転んで隙だらけ。残りは3分の2程度。そこに風魔法だ!
「エアカッター!」
目には見えないが、唱えた瞬間に風を感じた。それと同時に、鋭い何かが飛んでいくような音がして……ワンコの身体に刃物で切られたような傷が出来た。
血が大量に流れてよろよろの犬。残りHPバーはほんの僅か。止めは……杖で殴るとしよう。武技は使わなくてもいいだろ。
頭に向かって振り下ろした杖が当たり、犬は完全に動かなくなった。
そこの事を確認して、一応気は抜かないでおこう。周りを見ても動いているのはティアしかいない。
よし、初戦闘は見事無傷で終わったな。
まぁ、VRの戦闘はコレが初めてではないし、その経験もあってスムーズに動けた。
ちょっと弱すぎるような気もするが、序盤の敵ならこんなもんでしょう。
ステ欄を確認すると、敏捷値はまだまだプラス3されており、MPは4分の1くらい減っている。
しかし、ステータスはしっかり数値化しているのに、なんで体力と魔力は棒状なんだろう?
使ったスペルの回数は4回。武技もMPの使用で減るらしいから、合計で5回か。
消費率としては……あー、どうなんでっしゃろか?
単純に考えて、あと3、4回くらいはこんな感じで戦闘できると考えていいのか?そう思うと、呪文の使用は控えめでやった方がいいか。
いや待て、ティアの召喚の時にも使ったんだから6回じゃないか。あー、召喚時にどれだけMPを使用したのか確認しておけばよかった。
まぁ、ナマポーションはあるし、そこまで神経質にならなくてもいいだろう。練習の為にもバンバン使ってみて、マナポーションの回復率と味を確かめよう。
味は不味いと説明文でしっかり明記されているが、どれほど不味いか飲まなければ判断付かないし。
でだ……倒したワンコはどうすればいいのだろうか?
こういうのって、死体が消えてアイテムがドロップするものではないのか?
一向そんな気配はないんだけど気配もない。
とりあえず、鑑定してみよう。
さっきからワンコ呼ばわりしているが、こいつらにもしっかりした種類名があるだろう。
ウィードウルフ Lv1 魔物 死体
いや、お前ら狼かよ!?ゴメンな犬呼ばわりして。正直どうでもいいわ。
それより、この死体をどうすればいいんだろうか……埋めるか?
「なぁ、どうすればいいと思うよティアさん」
聞いてみたけど、当然だが返事はない。
変わりに首を傾げられた。何が?って感じの顔をしている……気がする。
どうしていいか分からず、何となく死体に触れてみた。すると、
「うわっ!?消えた!?」
まさかと思って、アイテム欄を確認してみると、
【素材アイテム】ウィードウルフの死体 品質F レア度1
草原に生息するウィードウルフの死体。剥ぎ取りをしていないため、このままでは活用できない。
そっかー……死体はアイテム扱いなんだー……品質酷いな当然か。だったらこっちも収納出来るのか。
【素材アイテム】ウィードウルフの死体 品質G レア度1
草原に生息するウィードウルフの死体。剥ぎ取りをしていないため、このままでは活用できない。
品質落ちてらー。品質Fのほうは、焦げた跡が有ったので、最初に倒した方だろう。Gのほうは血が出ていたので最後に倒した奴だ。
最初は火魔法と武技の2発。最後はティアの光魔法、俺の蹴り、風魔法、止めの杖で4発。そりゃ品質も落ちますわこりゃ。
後で街に戻って、素材の剥ぎ取り方を調べよう。自動ドロップしない仕様のゲームをプレイするのは初めてだわ。
でもとりあえず、戦闘を優先しよう。
戦闘をしました。とりあえずアレだ。ポーション糞不味い。しかも、ギリギリ飲めなくもない範囲の不味さなのが腹立つ。
ある意味気付け薬的な役割を担っているのかもしれない。
そういう風に自分を納得させて、服用するとしようやっぱ無理。
次スキル取る時は、光魔法か薬学取るわ俺。光魔法の回復力って、俺が持っているポーションよりも少し下くらいだし。MPがあれば際限なく使えるという事だ。
そしてティアのスキルの1つは、『MP自動回復(小)』だ。
つまり、時間を掛ければ無限に回復が出来るのだ!
でも絶対に街とかで休んだ方が効率いいよな。待っている時間が無駄だわ。
あと、全体的に違和感がある。何と言うか、歯茎の間に何かが挟まったような感じだ。
強く感じるのは、魔法や武技を使った時が一番そう思う。
まぁ、これらに関してはアシスト機能でも付いているのだろう。
オフに出来ないかどうか試してみたい。
それはそうとして、成果に目を向けよう。
【素材アイテム】ウィードウルフの死体 品質E レア度1
草原に生息するウィードウルフの死体。剥ぎ取りをしていないため、このままでは活用できない。
【素材アイテム】ホーンラビットの死体 品質E レア度1
草原に生息するホーンラビットの死体。剥ぎ取りをしていないため、このままでは活用できない。
【素材アイテム】ワイルドピックの死体 品質E レア度1
草原に生息するワイルドピックの死体。剥ぎ取りをしていないため、このままでは活用できない。食用として広く知られている。
敵の種類はこの辺りだとこいつら3種類のみのようだ。
ホーンラビットは名前の通り、角の生えたウサギだった。地味に速いだけで、スイング一発でほぼ瀕死。ただの蹴りでも半分は減ったのではないだろうか?
ただ、攻撃力は一番高かった。油断して一発腹に喰らった時は、こちらのHPが3分の1になったくらいだし。
ワイルドピックは名前だけ知っていたし食べたが、コイツが一番弱い。攻撃手段が真っ直ぐ突進だけ。速度もそんなにないし、酷い時には木に衝突して自滅したのがいるくらい。
なお、それがツボったせいで腹に風穴が開いた訳だが……
うん、面白かったので良しとしよう……うん……
まぁ、そんなトラブルがあった訳だが、所持重量ギリギリになるまで戦闘が出来た。と言っても、体力の数値は低いので、そんなに多くは持てないけど。
最終的な戦利品は、犬4匹、ウサギ8匹、豚6匹。どれも最高で品質Eだったが。それと、
【素材アイテム】薬草 品質D レア度2
一般的なポーションの原料となる草。そのままでも使えるが、非常に苦い。
こんな物が生えていたので、幾つか取ってみた。所詮は草なので重量の負荷は殆ど無いし。
後は、職業レベルとスキルのレベルも上がっている。多くは1だけだが、遠見はレベル4で、杖と鑑定はレベル3だ。
ステータスの振り分けは自分で決めることが出来たが、1ポイントだけだったけど。
とりあえず精神力に振っておいた。
ちなみに、レベルアップでHPやMPが回復するとか、そんな甘えた仕様ではなかった。
ティアのレベルも上がったが、何故かこっちは2ポイントだった。
しかも、生命力、体力、筋力には振れない仕様。種族的に限界値だから無理って。
仕方がないので精神力と知力にそれぞれ振っておいた。
敵の攻撃はすべて避ける。スタイルな種族なんだろうなフェアリーって……1発でも当たったら瀕死になるんじゃないだろうかこの子……
しかし、スペシャルポイントとか言うのは2ポイント入った。
このスペシャルポイントとは、スキル習得に使えたり、特定のショップで使えたりするらしい。正直、職業レベルが上がるまで存在を知りませんでした。
現在のポイントは12ポイント。ログを見る限り、スペシャルポイントの獲得は職業レベルが上がった時の一回のみ。つまり、初期値は10という事になる。
スキルを習得するには、メニューの中に現在習得可能なスキル一覧があった。魔法や武器系のスキルは4とか5が多い。ちなみに光魔法も5だった。
生産系のスキルは大体2か3。補助系は殆どが2だ。そして、そのうちの1つにこんなモノがあった。
【補助スキル】解体Lv1
アイテムのドロップ率を上げるための補助スキル。レベル向上に従い、アイテムの数やレア度が変化していく。
必要ポイントは2。見た瞬間習得してしまいそうになったが、剥ぎ取り方も分からないのに習得しても意味がないのでは?と言う冷静な判断が出来たため保留に。
兎に角今は街に戻ることを優先しよう。