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寧ろほとんど塩だった
まだ出会いません。
俺の「味」に関する記憶は、大空のお世辞にも美味しいとは言い難い卵焼きから始まる。
所々破け焦げて黄色というより茶色に近かったそれは、口に入れるとジョリジョリと卵焼きらしからぬ音をたてた。塩の自己主張が激しすぎる。あれは料理というより塩の暴力だ。
普段味に関して無頓着な俺でさえこうなんだから所謂美食家という奴らが食ったら卒倒もんだろう。 それくらい酷かった。兎に角酷かった。
だからって、俺のこの「味」の記憶は悲惨で不幸なモノって訳じゃない。寧ろ俺が一番幸せの味だと感じるのは、このジョリジョリの不細工な卵焼き。
美味くねぇから他の奴なんか食えねぇだろ。俺が全部食べてやる。だから、
勝手に出ていくなっての、大空。
次回あたり出会うんじゃないでしょうか。