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はじめまして。

作者: 埋木花咲


連載中

【死神様がいるセカイ】

http://ncode.syosetu.com/n7411cg/


こちらもよろしくお願いします


音もなく、色もない。

そんな世界に、私は今、存在している。


目は開かない。


ここはどこだろうか? と手を伸ばしても、すぐに指先に壁が触れる。

それは柔らかく、少し暖かい。


身体を包み込んでいる液体を掻き分け、私は身体を反転させる。


すると壁の向こうで、微かに騒ぐ声がした。


なにごとか? と、また腕を伸ばす。

ついでに足も伸ばすと、すぐに指先が壁にあたった。


その壁を少し蹴り上げてみる。


すると、また、壁の向こうで声がした。

高い声と低い声だ。


私の知らない人達の声。


--------------------


あれからどれだけの時間が経ったのだろう。


もう足を伸ばす余裕もなくなった。


不意に、頭の上の方に穴を見つける。

ここから出られそうだ。


私は、その細い道に、身体を無理矢理に押し込んだ。


外で悲鳴が聞こえる。

動物の呻き声にも似たそれは、断続的に続いている。


助けなきゃ。

そう思った。


ただその一心で、前へ前へと進んだ。


悲鳴がやむ。

代わりに、時折、力を入れるような声がする。


それと、この間からずっとしていた、男と女の声じゃない声も、いくつかする。


不意に、光が、私の瞼を貫いた。

まだ目は開けられない。

だけど、その眩しさに、私は叫んだ。


『元気な女の子ですよー!』


そんな声が聞こえた。

何を言っているのかは、まったくわからない。

私は止まることなく叫び続ける。


体が宙に浮く感覚に捕らわれる。

体の周りを包んでいた液体は、もうない。

不安だけが私のそばにいた。


『ほらー。ままだよー』


誰かが、誰かに、私の身体を渡した。


『……よかった』


そう言いながら、私を包む、なにか。

今まで感じたことのない、温もり。


それはなぜか、私に心地よい安心を与えた。

不安が私に背を向ける。


『はじめまして』


その言葉と同時に、頬に指が触れる。


--------------------


いつか、あなたの言ってることが、わかるようになったら。


わたしも、あなたに挨拶しよう。

あかちゃんが生まれるまでのお話でした。

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