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マサオくん

作者: 卯月朔

 マサオはイジメられっ子だった。


 みんなより背が小さくて、みんなより声が高いというそれだけの理由でイジメられた。


 マサオはイジメられても泣かなかった。


 涙がこぼれそうになるのを必死でこらえて笑顔でいようとするものの、クシャクシャになった顔はサルみたいで、それでまたイジメられるのだった。




 マサオは常々思っていた。


 いつかはクラスの人気者になって、イジメっ子達や周りの子達を見返してやると。


 マサオは考えた。


 どうすればいいんだろう?


 マサオは勉強で一番になることした。


 しかし、滑舌の悪いマサオは7の段が言うことができなかったので、勉強で一番になることはできなかった。




 マサオはまた考えた。


 どうすればいいんだろう?


 マサオはドッジボールで大活躍することにした。


 しかし、友達のいないマサオはドッジボールに誘われなかった。




 マサオはまた考えた。


 どうすればいいんだろう?


 マサオは立て笛を上手に吹けるようになることにした。


 しかし、練習中にうっかり好きな女の子の立て笛を盗んでしまったマサオは、それどころではなかった。




 マサオはまた考えた。


 どうすればいいんだろう?


 考えに考え、考えることを考えすぎたマサオは、夏休みになっていたことに気づいていなかった。




 誰もいない教室に愕然としたマサオは、家に帰る途中にイジメっ子達に出くわしてしまった。


 イジメっ子達は、崖の上から川に飛び込んで遊んでいた。


 「あんなに高い崖から飛び込むなんて、チビのマサルじゃ無理だよな」


 イジメっ子にからかわれた上に、名前まで間違えられたマサオは、これこそチャンスだと思った。


 ここで誰よりも高いところから飛び込めば、きっとイジメっ子達を見返すことができると考えたからだ。


 「よし、飛び込んでやろうじゃないか。いままで誰も飛んだことのないくらい高いとこから、飛んでやろうじゃないか!」




 マサオは後悔していた。


 いくらなんでも高すぎる。


 まるで、人がアリかゴミのようだ。


 しかし言ってしまった手前、マサオは引き下がれないでいた。


 「やめろマサル!そんなとこから飛び込んだら死んじゃうよ!」


 イジメっ子達はそうやって、やめさせようとする。


 いや、ここで引き下がればどうせまたイジメられるのだ。


 「そんなのは嫌だ」


 マサオはそんな人生とおさらばしたかったのだった。




 マサオは飛んだ。


 軽くジャンプしたマサオは、枯れ葉のように宙を舞った。


 何かが破裂したような音と、高い水しぶきがあがった。


 そのままマサオは浮かんでこなかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


ご意見、ご感想あれば、どうぞおよせください。

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