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第五話 一緒に逃げよう

「それってどういう意味かな?」


 マリスさんは戸惑っている様子で尋ねた。


「そのままの意味です。もし、私が王妃だったらマリスさんは……マリスさんはどうしますか?」

「それって本当に君が王妃様だったっていうように聞こえるんだけど」


 これでいいんだ、きっと。

 短い間だったけど楽しかったなぁ、マリスさんと出会えてお花屋の店長に出会えて後それから……。それは数え切れないほど沢山の思い出があって、今更ながら自分の正体を打ち明かそうとした自分に後悔した。

 でも言わなくちゃ。



「はい、今まで黙っていてごめんなさい。でも黙っている事しか私には出来なかったんです。私は無力でちっぽけだから。だから最後まで嘘をついて皆を騙して過ごそうと思っていたけど、やっぱりそれは私には出来ませんでした。本当にごめんなさい。私は元王妃です」


 涙がポロポロと溢れ出てきて頬を伝い首元に流れ落ちた。これからの事が怖いし不安だけど、気持ちは随分と楽になったような気がする。

 マリスさんの顔を見る事が出来なくて下に俯いた。こんな顔誰にも見せられないし、気まずい雰囲気に耐えられない。

 ここはさっさと出て行ってしまおうかな。



「……実は僕も薄々気がついてたよ」

「え?」

 

 思いがけない言葉に私は思わず顔を上げた。


「最初に会った時からどこか雰囲気が似ているなって。でもあの王妃様が金髪を黒髪にしてまで脱走しているとは思ってもいなかったというか、でも声も話方もまるで王妃様本物みたいにそっくりだったからそうなんじゃないかなって。でもそれを聞けるような僕じゃないから、ここまでずるずる引きずってしまった」



 マリスさんは最初からもう私が元王妃であることが薄々分かっていたんだ。なのに、何故マリスさんは誰にも言わなかったのだろう。

 私を引き渡せば多額のお金が貰えただろうに。

 もう冷めてしまった紅茶を一口啜った。


「そうだったのですか……」

「だから――」

「だったら話が早いですね。私はもう此処にはいられません。少しの間だったけどありがとうございました」


 お財布から自分が食べた分のお金を取り出し机の上に置いた。

 もうマリスさんとは会えない。これから先逃亡するに当たってマリスさんを巻き込むわけにはいかないし、それにマリスさんが気が変わって誰かに話してしまうかもしれない。

 私はもう決めたから。どんな手段を使ってでも逃げるって。



「それじゃあ、さようなら」

「ちょっと待ってっ」


 マリスさんに背を向け歩き出すと、慌てた様子でマリスさんは私の手首を掴んだ。

 そして――



「一緒に逃げよう」


 マリスさんは真剣な目をして私にこう言った。

 

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