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第一話 新しい出会い

大変遅くなってしまい申し訳ありません。

これからも亀並み更新になりそうですが、宜しくお願いします。


これだけ多くの人に読んでいただけて嬉しいです。

読んでくださった皆様本当に感謝しています。そしてお気に入り登録をしてくださった皆様、もうすでにプレッシャーに負けそうですが生暖かい目で見守って下さい。質を落としているんじゃないかと不安が…。

まだまだ不十分な所がありますが、宜しくお願いします。


追記:お花の名前など架空のものにしております。

 王宮から逃げ出して、二ヶ月と十日目。

 大分この町にもこのお仕事にも慣れてきたが、そろそろ終わり時かなと感じてきてる今日この頃。

 一つの場所にずっと長居する事は思った以上に難しくてわずかな時間さえも長く感じる。そういうわけで、つい最近からまた違う場所にへと引っ越そうかと計画を練っているところだ。

 もちろん、私でも暮らしていけそうな此処よりも治安の良い場所に。


 *


「いらっしゃいませ」


 今日一番目のお客様に微笑んだ後、私はいつものように店内の一番奥に足を進めた。新人でまだ花の種類を覚えきれていない私は、当たり前だけど下働きや雑用しか出来ない。

 そんな私の一日の仕事は倉庫内にある肥料や植木鉢やお花の種が入っている袋に値札を貼ったり、整理整頓をする一見地味な作業ばかりである。

 そのため仕事中の大半は薄暗い倉庫の中で、外に出たとしても皆の昼食を買いに行くだけで。でも生きていく分には問題ないし、あまり表に顔を出したくない私にとっては嬉しい事でありがたく働かさせてもらっている。けれどそろそろ危ないんじゃないかと思ってきた。何故か嫌な予感がしてならないのだ。




 王宮から逃げ出してすぐに近くの散髪屋で髪の毛を切って染めた。綺麗だと褒められた金髪の髪の毛は、今はもうない。今私に残るのは黒い髪の毛とシイナという新しい名前だけ。

 お陰様で、今の私の雰囲気からまさか私が元王妃だったなんて思いもしないだろう。でも不安にはなる。だから自分の不安を打ち消すために、定期的に違う場所へ移ろうと決めた。

 絶対に見つかっちゃいけないもの。だって私のお腹の中にいる赤ちゃんの将来が危なくなってしまうかもしれないのだから。私のお腹に宿った小さな新しい命を失う事は絶対にしたくない。

 そして、少なくともこの子だけには私みたいな生き方をしないで欲しい。



「シイナ、悪いんだけど今からお昼を買いに行ってくれるかな。今日はちょうどお昼頃に忙しくなりそうなんだよね。あ、それといつも頑張ってくれてるからお昼まで好きにしてていいよ」


 薄暗い倉庫の中に店長の声が響いた。どうやら今から昼食を買いに行けということらしい。本当は気が乗らないけれど……店長のお言葉に甘えてやってみたかったけれどもう歳が歳だから中々出来なかった、町の中を探検してみることにした。

 王宮の方でもお庭には飽きるほど行ったけれど外には出たことがない。というか、出させてもらえなかった。子供の頃も外は危ないからと家の中で遊ぶばかりで。

 なので外にいける機会がなかった私は、本などを読みあさって外の世界の事を調べたり陛下の書類を覗いてみたり使用人に聞いたりして情報を集めたりしていた。

 お陰様で、王宮から逃げ出した時に初めて外の世界を見て驚いたものの何事もなく事を進めることが出来た。でも、一人暮らし!! ともなると大変で。今ようやく使用人や働いている人達の苦労を改めて実感した。



「あら……こんな所に…」


 綺麗な薄いピンクのお花があるわ。まだお花屋からそう離れていないのに私はその場にしゃがみこんだ。このお花の名前は何と言うのだろうか。

 もしもっと私に知識があったのなら分かったのかもしれないけれど、今の私では知識不足なので首を傾げる事しかできないので悔しい。

 これを本に挟んでおけば栞にできるのかしら?

 摘んで良かったのか分からないけど一目見て気に入ったのでその花に手を伸ばした。

 ――その時だった。


「こんな所で何をしているんだい?」


 後ろからいきなり声をかけられて、ビクッと肩を揺らした。恐る恐る後ろに振り向いてみると、金髪の美青年が微笑みながら不思議そうに私の事を見つめている。

 私が王妃だったっていうのはばれていないみたい。良かった。

 安堵の溜息を吐きながら、その男性の方向へと向き直す。


「お花を見ていたんです。このお花綺麗だったから……」

「そうなんだ。そのお花ピルティといって、本に挟むとすごく綺麗な栞ができるんだ」

「そうなんですか。実は私も栞にしようと思っていたところなんです。でも、どうしてこのお花の名前を? 私なんて、お花屋で働いているくせにまだ全然分からないのに……」

「僕の実家もお花屋だからね、物心ついた時にはお花の名前をひたすら覚えていたからどれがどの花かよく分かるんだ。ちなみにピルティの花言葉は『嫉妬』かな」

「詳しいんですね。羨ましいです」


 嫉妬か。まるであの日の私に相応しい花言葉だわ。陛下が私を見てくれないから、側室相手に嫉妬して…。しまいには、自分勝手に逃げ出して。

 今思えば、自分はなんて幼くて莫迦な事をしたんだろうと思う。でも今更王宮に戻るなんて私のプライドが許さないから、王宮に戻る何て絶対に考えない。考えてはいけない。



「もし良かったら、今からお茶を飲みに行かないかな。無理にとは言わないけど」

「あの……私でよければ少しだけご一緒させても……構わないでしょうか?」

「あぁそれじゃあ行こうか」


 この人を信用してもいいのだろうか。もし王宮に仕えている者が変装していたら? でも、王宮では一度も見たことがない顔だし。新人だったらありえる話かもしれないけれど、その前に何で私一緒に行くなんて言ったんだろう。まだ会って間もない人と、お茶を一緒に飲みに行くなんて変なのに。


「どうしたの? もしかして行くのやっぱり嫌だった?」

「そんな事ありません。ちょっと考え事をしていただけです」


 首を傾げてる男性に、私は慌てて駆け寄った。一瞬陛下の顔が頭によぎったけど、それを振り払うかのように頭を叩く。

 これって浮気とかじゃないよね。ただ一緒にお茶を飲みに行くだけだから。それに、もう私は陛下の妃ではないのだから浮気だの何だのもう関係ないだろう。たぶん。

 変だと思いつつも、男性の話に乗ってしまう私もどうかしてる。けど、最近忙しくて何も出来なかったからこれくらい……大丈夫だよね。


 

 変な罪悪感を胸に、私は男性と一緒に近くの喫茶店へ中に入った。

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