表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

第零話 プロローグ

勢いのままに書いてしまった小説です。

至らない部分の方が多いかと……。

でも温かい目で見守ってくれると嬉しいです。

中篇予定で不定期更新になると思いますがどうぞよろしくお願いします。

 今から二ヶ月ぐらい前までは、私も立派な王妃だった。でも今は、二ヶ月前までは家事も食事も何もかも使用人がやってくれたのに自分自らせっせと食事の準備や家事をこなしている。

 二ヶ月前ぐらい前までの私はまさかこんなことになるだろうと考えもしなかっただろう。

 そう、私は王宮から逃げ出してきた逃亡者だ。


 *


「シャナ、話がある」

「何でしょうか? レオンハルト様」


 陛下専用に設けられた執務室の中は、私とレオンハルト様だけである。

 もともと無口な陛下から私に声をかけるのは珍しく、長年付き合ってきた私はこういう場合は大体私にとって嬉しくない事だと分かっているので何ともいえない空気の中、私は陛下に顔を向けた。


「町外れに一人で住んでいる、テルという女を側室に向かいいれようと思っている」

「……えっ!?」


 いきなり何を言い出すかと思ったら。こんな話聞きたくもなかった。今すぐ逃げ出してしまいたかったが、あまりにも衝撃的すぎて足が震え立っているのもやっとで逃げ出す事なんて到底出来なかった。

 それに、町外れに住む女ってどういうこと?

 みるみるうちに顔色が悪くなっていくのが自分でも分かる。


「…どう…いうこと…?」


 聞きたくもなかったが、動揺を隠せない私は恐る恐る口を開いた。この先は言わないで欲しい。そして、私だけを愛してるって言って欲しい。

 こんなにも私は陛下を愛しているというのに、何で?

 そんな私に追い討ちをかけるように陛下は静かな低い声でぴしゃりと言い放った。


「シャナは何も心配することはない。シャナの家に泥を塗るような事はしない故、シャナが正妻であることには変わりない。シャナもテルの事を頼む」


 そう陛下が言った瞬間体が勝手に陛下の頬を叩いていた。胸が痛い。泣きたい。それじゃあまるで私が必要ないみたいじゃない。私が家の名を上げるために結婚したようなものじゃない。

 確かにすれ違ったり喧嘩する事はよくあったけれど、愛し合っているのだと思っていた。そうじゃなきゃもともと結婚しなかったし、一緒に食事したり寝たりはしなかっただろう。

 でも今の状況、私はどうすればいいの? 何て答えればいいの?

 生憎私は素直に「わかった」なんて言えるような出来た女じゃない。

 今までの三年間、私の愛が伝わらなかったのなら。それが陛下の出した答えなら。

 私は貴方の側から消えましょう。

 大体何で今なのだろうか? 実の話私のお腹には我が子だっているのに。

 昨日見て貰ったら「赤ちゃんがいますよ」と言われ、お医者さんに私から陛下に伝えた方が宜しいでしょうか? と聞かれて私は自分で伝えますと答えたのだ。

 いや、でも私のお腹に赤ちゃんがいるからってきっと陛下の考えは変わらないだろう。


「分かったわ。貴方がそう決めたのなら私は何も言わない……」


 ――今までありがとう。これで私はここから出て行く決心もついた。

 貴方の二番目の女になるのはごめんだ。たとえ私が正妻であっても、これ以上ない屈辱、やり場のない気持ちはどうしたらいいの。

 相手に当たるのは嫌だから、執務室を出て荷物をまとめはじめた。

 一応私も上流貴族なわけだし一生分のお金はいくらでもある。でもかといって両親に迷惑をかけられないから、少しずつお金をもらいながら自分はアルバイトなり何なりして暮らしていこうと思った。

 案外、今までこういうこと一切した事がなかったから楽しんで暮らせる事が出来るのかもしれない。

 さようなら、陛下。きっと私はもう貴方の前には現れないでしょう。

 左手にはめていた綺麗な指輪をはずし、机の上に置くと誰もいないことを確認して裏口からそっと王宮を抜け出した。




 この日から、私はこの王国から抜け出して今は小さな隣町で花屋で働いている。

 私が王妃だったっていうのは誰にも知られてはいけない秘密である。もしその秘密が誰かに知られたら、牢屋いきに違いない。

 そしたら……私のお腹にいる我が子だって。




「いらっしゃいませ」


 今日も今日とて日は昇り、いつのまにかこの町にも馴染んできた。そして花屋の制服に身を包み、今日一番目のお客様に私は微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ