表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
drain ードレインー 内閣府デジタル庁異世界転生救済課  作者: ねず ただひま
嚆矢濫觴(こうしらんしょう)の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

異世界転生救済課

はなぶさ


異世界転生アプリ、『ネペンテス』を入手した時の記憶が残っている初の救出対象者ドリーマー松代まつしろ


俺たちは彼を、千代田区のデジタル庁本部とはかけ離れた場所、雑多なビルが群生するとある繁華街へと連行する。その中に俺たち救済課の本部がある。


俺達が乗っているワゴン車は、ボディの側面に『はなぞの製菓』の文字と可愛らしいキャラクターがラッピングしてある。世間をあざむくカモフラージュだが、実際に救済課が運営している製菓会社でもある。

車は活況かっきょうていする街の路地裏へ入り、シャッターが開いてある製菓会社ビルの車庫にそのまま進入した。


俺は車から降りると電動シャッターを操作して下す。

外界からの視線を遮ると、車庫奥の扉を開けてワゴン車を誘導する。

そこにはワゴン車ごと地下へ運べるエレベーターがあるのだ。俺たちは本部地下へ向かった。


俺たち四人は松代まつしろを囲むように地下の廊下を歩く。震えながら歩く松代まつしろにはあらかじめイヤホンと、頭から麻袋を被せて聴覚と視界を奪ってある。

後から記憶を改竄かいざんするのなら、普通こんな事はしないのだが、今回は特例の処置をとっている。


松代まつしろを裸のまま連れ回すのは(俺たちの)精神衛生上よろしくないので、彼にはいちおう服を着させてある。何故かワゴン車の中に残されていたアロハシャツとスラックスだ。


「ちょっと色々と臭いますね、ちなみにこのシャツ。誰のですか?」

松代まつしろの後ろを歩く千代草ちよぐさが鼻を摘んだ。


施覆花おぐるまさんが答える。

「多分、えんじゅさんのや。あの人、夏場はかりゆしウェアやからな、去年から()()()()まんま車内に忘れとんのやろ」


「あぁ、あの派手な……あの人苦手だなぁ」

えんじゅの名前を聞くと、千代草ちよぐさの表情が曇った。


松代まつしろの体からは、血と古びたシャツの匂いと糞尿と情交の後の様子が入り混じった匂いがする。


はなぶさ、お前は桔梗ききょうに怪我を診てもらえ」

南天なんてんがぼそりと呟く。


俺は「これくらい平気だ」と、答えた。


「駄目です!バイ菌入って腐って死にますよ」

千代草ちよぐさが俺のジャケットの裾を摘んでそう言う。


「ははっ、バイ菌やったら可愛いもんやけど、異世界には未知のウィルスや呪いなんかもあるからなぁ。ちゃんと診てもらえ」

千代草ちよぐさ施覆花おぐるまさんに促されるかたちで、仕方なく俺は医務室へ向かうことにした。


取り調べ室の前にたどり着くと、施覆花おぐるまさんと南天なんてんは「ほな」とだけ言い残して松代を連れて室内に入って行った。


俺はこれから桔梗ききょうに怪我を診てもらうのだが……


「なんでお前もついてくるんだよ」


「私が一緒にいて説明してあげないと、はなぶささんは怪我を負った時の状況を適当に伝えるでしょ?

それに、救済課ここでの私の唯一の癒しは、桔梗ききょうさんや九鬼くき班長とのガールズトークだけなんですから。逆にはなぶささんは診察が終わったらとっとと出て行って下さいね。」

保護者のような事を言ったかと思えば、終われば出ていけ……か。

軽いとはいえ一応怪我人。それを言うのはあまりにぞんぞいじゃないかと思い、ため息が出た。


医務室のドアの真ん中にはプレートが掛けてあった。

『♡診察受付中♡』

俺はドアをノックする。


「はぁ〜い、どうぞ〜」

中から間延びした女の声が聞こえてきた。


ドアを開けるとそこには、ミニスカの上に白衣を着た、ゆるいスパイラルパーマヘアーの女性が椅子に座ってコッチも見ずに退屈そうにスマホをさわっていた。


桔梗ききょうさん!」


千代草ちよぐさの声に反応して、スマホから目を離した桔梗ききょうは嬉しそうに千代草ちよぐさに両手を振る。

「チ〜ヨ〜!おつかれ〜」


桔梗ききょうさん、きのう日比谷の洋菓子店で買ったクッキー持ってきましたよ。一緒に食べましょう」

千代草《千代草》はシロを納めているポシェットからクッキーの袋を取り出す。


「チヨ!でかした〜、ういやつめ〜」

桔梗ききょう千代草ちよぐさに抱きついて頬ずりした。


「ちょっ、桔梗ききょうさん、くすぐったい!シロみたいですよ!」


「いいじゃん、減るもんでもないんだから〜あたしの愛情表現無制限〜♪」

キャッキャはしゃいでいる女子二人を呆れた目で見る。


「どうでもいいから俺の怪我を診てくれ……」

その言葉で桔梗ききょうはやっと俺を見てくれた。


「あら、ハナ、あんた居たの?」



*次回、『渇愛(かつあい)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ