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お前をこの異世界から排除《ドレイン》する。 ー内閣府デジタル庁異世界転生救済課ー  作者: ねず ただひま
嚆矢濫觴(こうしらんしょう)の章

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諍(いさか)い

九鬼くき



 九鬼くきが洋館の扉を開けて部屋に入ると、荒れた室内では施覆花おぐるま合歓ねむが、お互いの剣先を突き合わせる形で立っていた。


「お前たち、何をしている!?」


 肩で息をしている施覆花おぐるまの額からは少量の出血が見られる。


 一方で白髪はくはつの少年、合歓ねむは涼しげな顔で目を細めて施覆花おぐるまをじっと見ている。


「双方、刀を納めなさい……」


 先に九鬼くきの言葉に反応したのは合歓ねむだった。


「くきさん、おひさしぶりですね」


 合歓ねむは左手に持っている鞘に刀身を納めると、悪びれる様子もなく九鬼くきに向かってにっこりと微笑む。


「そんなこわいかおしないで、おぐるまさんにけいこをつけてもらっていただけですよ」


 施覆花おぐるまはまだ、合歓ねむに見えない刀を突きつけて険しい顔をしている。


「そうだ、つぎは、くきさんがけいこをつけてよ。つよいんでしょ?」


 合歓ねむが悪意を感じさせない笑顔でそう言うと、施覆花おぐるまが感情を抑えつつ、怒りを露わにした。


「調子のんなよガキ、コラ…」


 室内の緊張を打ち破ったのはえんじゅだった。


「ほいほい!解散じゃ!終わり終わり、合歓ねむ!飯じゃ!飯食いにいくぞ!」


 両手をパンパンと叩きながらズカズカと入室してきたえんじゅは、真っ直ぐに合歓ねむに向かって行き、肩を抱き寄せる。


施覆花おぐるまくん、ウチの若いのがすまんかったの〜、今度一杯奢るわ〜」


 そう言い残して、合歓ねむを半ば強引に連れて足早に部屋を出て行った。


 二人が部屋を出た後、施覆花おぐるまは、ふーっと大きく息を吐き出して刀をおろし、力を抜いて安堵する。


「何をしているのだ馬鹿者!」


九鬼くきの叱責を受けた施覆花おぐるまは俯く。


「すんません…ガキの挑発に乗ってまいました…」


「まったく、お前という奴は……傷、みせてみろ」


 九鬼くき施覆花おぐるまの顔を両手で掴んで自分の方に向ける。まじまじと傷口を確認すると、ポケットからハンカチを取り出して額に当ててやった。


 施覆花おぐるま九鬼くきの顔があまりに近く、思わず赤面して目を逸らした。お互いの呼吸が聞こえるほどの距離に耐えられなくなった施覆花おぐるまは、後ずさりをする。


「くくく、車とってきます!」


 そう言って、慌てふためいて部屋を飛び出した。途中で何かにつまずいたのたろうか、ガシャンという音と、施覆花おぐるまの「いてッ!」という声が廊下から聞こえた。


「あ、おい!……まったく、せわしない奴だな」


 九鬼くきがそう呟いて、血のついたハンカチをポケットに戻した時、庭園側の扉から紫雲英げんげも部屋に入ってきた。


「血の気の多い若者は、扱いに困るな」


 紫雲英げんげ九鬼くきの前に静かに立つ。九鬼くきは何も言わず、感情のない顔で、ただ紫雲英げんげの目を見ている。


「昔のお前も、そうだったな……澄香すみか


 紫雲英げんげは、先ほどの会議の時とは違う穏やかな微笑みを見せながら九鬼くきの横髪を撫でると、九鬼くきはその手をそっと払いのけた。


「ここに、そんな名前の女はいませんよ……失礼します」


 九鬼くきは一礼すると、足早に部屋を出た。


 ただひとり部屋に残された紫雲英げんげは髪を撫でた手をじっと見つめた。


*次回、『茫漠(ぼうばく)

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