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放課後16時44分、異界にて  作者: 秋月椛
第一章 異界にて
10/10

坂口弥生

<弥生side>


日常の中に紛れる非日常が好きだ。

その非日常が実際に起こりうるかもしれないと想起するのが好きだ。


不確かで、存在するのかも分からない。


オカルトと呼ばれたりもする、そんな不確かなものが好きだ。


今読んでいる本もそう。


『古典のオカルト』というタイトルで、昔のオカルト話を纏めている。

そこには初めて聞く話や、現代にも残るオカルト話の元ネタかなと考察出来るような話もあって大変面白い本である。


紙をめくる音が寝息のみが聞こえる静かな空間の中では良く聞こえた。


本を捲って文字を追いかけて最初はちゃんと読めていた文章も、時間が経つにつれてだんだんと違うことに思考が飛んでしまう。


それは今の現状について。


僕にとって、これは想起していた非日常だ。

『神隠し』という単語がここに来てからずっと頭を過ぎっている。


けれど神というには、あの化け物はあまりにも醜悪だ。

だからきっと、これは『神隠し』なんかではないのだろう。


次に考えたのは、鏡の怪異について。

鏡が起点というのなら、そういう怪談も沢山知っている。


けど、大体はアレをしちゃいけない、コレはしちゃいけないというルールのみの方が多い。

その次に続く「何故なら…」には、連れて行かれると続いてその先はなかったりもする。


僕自身にそのルールを破った覚えは無い。

知らないうちに何かルールを犯しているとしたら、それはかなりローカルなものかもしれない。


本格的に集中出来なくなって本を鞄に仕舞った。


時間はあと二時間もある。


襲ってくる睡魔に対抗する為に紙とペンを取り出して知っている限りの鏡に纏わるオカルトについて書いていく。


けれど、知っている中に合致するような話はない。


何かあるはずだと思い出そうとして、思い出せなかった。


書く手が止まって、半分も埋まってないページにぱたぱたと涙が落ちる。


「家に帰りたい…」


男だからとか。先輩だからとか。

そんなちっぽけなプライドだけで保っていた面が剥がれ落ちる。


「父さん…っ、クッ……ッ母さんっ、ズッ……兄ちゃん……」


あぁ、こんな風になるって分かっていたから何かを考えていたかったのに…!


分かってるんだよ!

僕はただの高校二年生で、なんの力もない。

オカルト好きって言ったって、ここじゃなんの役にも立たない!


僕は怪談で必ず生き残れる主人公にはなれない。


それが分かっているから恐ろしくて仕方がない。


早く泣き止まないと。

泣き止んで、早く寝るんだ。起きたらきっと今日のことが全部夢だったって思うから。


そうじゃなきゃ。

そうじゃなきゃ、僕は可笑しくなる。

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