貴族の青年との出会い
【前回までのあらすじ】
勇者を喪い、“灰にする者”と陰口を叩かれていたアレンたち。
その時、彼らの前に一人の青年ユリウスが現れた。
ユリウスが最初に声をかけたのはガルドだった。
彼は剣の手入れをしているガルドに近づき、寸分の狂いもない礼をした。
「剣の磨き方ひとつにも、勝利と敗北が宿る。そう思わないか」
その声音には冷たさがあった。
けれど理路整然とした態度には、不思議な説得力があった。
「君がアレンだな。……いいだろう。私の計算に従えるなら、生き残れる」
命令のように響いたが、救いでもあった。
灰に縛られる私と、無駄死にを拒む彼。
二人の道は交わりながらも、決して同じではない。
――後にカインから聞いた話だ。
ユリウスは若いころ、ある戦で上官の判断ミスにより部隊を失ったという。
それ以来、慎重すぎるほどの男になった……と。
彼を冷徹だと呼ぶ者もいた。
だが私には、それは仲間を守るために取り憑かれた執念にしか見えなかった。
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次回は 10/22の朝8時ごろ を目安に投稿する予定です。よろしくお願いします。




