灰にする者
【前回までのあらすじ】
勇者リナを喪い、旅は終わりを告げた。
アレンは結界士として、再び王都に戻っていく。
勇者リナを失って戻った私を、王都の人々は冷ややかな目で見た。
酒場の片隅で耳にした声。
「まただ、勇者と組んだやつが生き残って戻ってきた」
「灰にする奴――アッシュだ」
勇者が死んだとき、生き残った仲間は「勇者を灰にするもの」――アッシュと呼ばれる。
私は黙って椅子に座り、水を飲み干した。
言い返すことはしなかった。事実だからだ。
リナを喪ってから、私は勇者の仲間として次に選ばれることを恐れもしたし、同時に避けられないことだとも思っていた。
王国は複数の勇者を立て、魔王に迫ろうとしている。
結界士の出番は嫌でも必ず来る。そうわかっていた。
「くだらない陰口だな」
そこに現れた彼は、噂をする者たちに吐き捨てるようにいった。
振り返ると、鋭い灰色の瞳を持つ青年が立っていた。
「無駄口を叩く暇があるなら、計算の一つでも覚えろ」
若くして軍の指揮を執る才を示した青年。その名はユリウス。
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次回は 10/20の朝8時ごろ を目安に投稿する予定です。よろしくお願いします。




