旅路と成長
【前回までのあらすじ】
幼馴染のリナが勇者に選ばれ、アレンは結界士として旅に加わる。
仲間たちがそろい、一行は静かに旅路を歩み出した。
旅は順調ではなかった。
森や荒野で幾度も魔物の群れに襲われ、窮地に立たされることもあった。
だが、そのたびに私たちは連携して乗り越えてきた。
リナは先陣を切り、ガルドがそのサポートに入り、リディアの祈りが後ろから支え、カインが素早く隙を突いた。
私はただ必死に結界を張り、仲間たちを守った。
戦いを重ねるごとに、皆の動きは洗練されていった。
互いに息を合わせることを学び、確かに一行は「勇者の一行」と呼べるものに近づいていた。
時に、進軍の途中で罠に出くわすこともあった。
落とし穴、仕掛け弓、毒針の隠し扉。
「こういうのは俺の仕事だな」
カインが前に出るとき、他の者は一歩下がった。
私を含めた仲間たちは結界の中で息を潜め、万一に備える。
私はそれを誇りに思いながら、結界の強度をさらに増した。
ある日、森の奥で異様な気配が走った。
草木を踏み割る音が幾重にも重なり、数え切れぬ影がこちらに迫る。
「魔物の群れだ!」
カインの声が響くより早く、リナが剣を抜いた。
「一番槍は任せて!」
リナは真っ先に突っ込む。
続く巨躯のガルドが吼え声を上げて追い、後衛のリディアが祈りを始める。
私は反射的に前へ出た。
リナがぶつかる地点を予測し、その瞬間に合わせて結界を展開する。
牙を剥いた魔物が突進するが、結界に弾かれた刹那、リナの剣が閃いた。
叫び声と血飛沫。
ガルドの大剣が振り抜かれ、結界の向こう側に突破口が開かれた。
私はすぐに結界を張り替え、彼女の背を守り続けた。
戦いの後、皆が息を切らしながら笑っていた。
互いを信じ、命を預け合い、成長を実感できる瞬間だった。
「ね、見たでしょ! やっぱり私たち、いけるよ!」
リナが剣を鞘に納めながら声を弾ませる。
「まったく……無茶の後始末は骨が折れる」
ガルドが苦笑混じりに言うと、
「でも決まってたよな! 俺の斥候あっての勝利だな!」
とカインが胸を張る。
「違います、祈りがあったからです」
リディアが眉を寄せて抗議し、また笑いが起きた。
私は何も言わなかった。
ただ口元が緩むのを抑えきれず、仲間たちの輪の中に立っていたのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は 10/15の朝8時ごろ を目安に投稿する予定です。よろしくお願いします。




