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名もなき盾  作者: 安楽公の罠
第1章 勇者リナ編
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最初の任務


街道を進む一行は、やがて森に飲み込まれた。


矢が飛ぶ。私は膜を一点に収束させて弾き返す。

リナは走り込み、剣を振るった。

危うい。だが、その危うさが場を奮い立たせる。


短い乱戦を制したとき、リナの鎖帷子には血の線が走っていた。

「くっ……」彼女が顔をしかめた瞬間、リディアが駆け寄る。


「大丈夫、すぐ癒すから!」

温かな光がほころび、裂けた鎖と皮膚を塞いでいく。


私は胸の奥に冷たいものを覚えた。結界はまだ未熟で、守り切れなかった。

だが彼女の癒しがあったから、戦列は崩れなかったのだ。


「大丈夫?」私はたずねる。

「大丈夫!」彼女は笑う。血の匂いの中でも眩しい笑顔だった。

「アレンがいると、ほんとに怖くない!」


その言葉に、私は喉の奥で苦く息を吐いた。

怖くない、という言葉ほど、戦場で危ういものはない。



夜。宿で私は彼女の鎖帷子を縫い直した。

糸ではなく魔力の縫い目で、編み目を補強する。


「器用だね、アレン」

「無駄に手先は器用なんだ」

「無駄じゃないよ」

静かな声。私は縫い目を結びながら、小さく笑った。


魔力の縫い目の縁は薄く伸ばせば刃にもなる。

縫い目を締めるときは、指先を切らぬように気をつけろ——師の言葉を思い出す。


カイン「それにしてもよく考えると結界って便利だよな。さっきだって、あれがなきゃ俺も串刺しだった」

アレン「便利って言葉で片づけるな。広げすぎればすぐに破れる。だから一点に絞るんだ」

ガルド「……なるほど。盾みたいな役割か」

アレン「そうだ。ただ、名も残らない盾だ」


お読みいただきありがとうございました。

次回は 10/13の朝8時ごろ を目安に投稿する予定です。よろしくお願いします。

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