南門での顔合わせ
翌朝。南門前に集められた小隊規模の人間の中で、勇者リナの一行が発表された。
剣士ガルド、僧侶リディア、斥候カイン、そして補助役として私アレン。
ガルドは寡黙な巨躯の戦士、リディアは芯の強い僧侶、カインは軽口の斥候。
彼らと共に、私たちは北方辺境町リムへ向かう補給任務を担うことになった。
「おや、あんたが噂の結界の人?」
カインが気安く肩を叩く。私は少し身を引き、頷いた。
「アレンだ。よろしく」
「おれはカイン。罠解除と鍵開けと、あとちょっとした雑用全般。……冒険者さ。勇者の依頼なんて、誰だって一度はやってみいだろ?」
軽口を叩きながらも、その目は獲物を狙う獣のように鋭い。
「わたしはリディア。僧侶よ。特技は癒しの技」
白い外套に身を包み、胸元の小さな十字を握る。
「教会の推薦で派遣されたの。……彼女が選ばれたと聞いて、断れなかったの」
声には決意と、わずかな緊張が混じっていた。
「ガルドだ」
最後に口を開いたのは、がっしりとした巨躯の男だった。
剣を肩に担ぎ、無駄な言葉はない。
「元は傭兵だ。この依頼は支払いも良さそうだし、名声も得られる。――それで十分だ」
淡々とした口調だったが、背中には戦場を渡り歩いた者の重みがあった。
そして、人々の間を割ってリナが現れる。
鎖帷子の上に青い外套、腰の剣は磨き上げられ、それより何より、顔が晴れ晴れとしている。
「おはよう! 全員、集合!」
彼女の声に、空気が軽くなる。
誰もが背筋を伸ばし、彼女を見る。
私は胸のどこかが少し痛むのを自覚しながら、その姿を見ていた。
誇らしさの裏にある寂しさか、この先の不安か――自分でもわからなかった。




