新たな勇者、レオン
【前回までのあらすじ】
勇者リナ、ユリウス、セリアを喪い、一行は再び王都へ戻っていた。
それぞれの胸に、守れなかった者たちの記憶と教えを抱きながら歩んでいた。
勇者を三人喪い、人々の陰口はますますひどくなっていった。
街を歩けば視線が突き刺さる。それでも、私たちは新たな勇者に従うことになった。
その名はレオン。
武門の家に生まれた青年で、豪胆にして明るく、兵からも慕われていた。
「勇者は、みんなを導く灯だ。
名誉や称賛じゃなく、誰かに勇気を与えることが勇者の役目だろう?」
そう笑う彼の姿に、私はかつてのリナの光を見た。
私たちは再び国境砦の防衛線に駆り出された。
国境砦の攻防戦は、すでに幾日にも及んでいた。
魔王軍の攻勢は鈍り、矢の雨もまばらになっていた。
だがこちらも同じだった。
盾は欠け、矢筒は空に近く、兵たちは息も絶え絶えに立ち尽くしていた。
勝敗は紙一重――わかっているのに、誰の足も動かない。
砦の上に漂うのは、血と疲労の匂いだけだった。
その沈黙を裂くように、ひときわ強い声が響いた。
「うろたえるな!」
短いその一言に、砦全体が震えた。
勇者レオンが、肩口から血を流しながらも剣を敵に向け、立ち上がった。
鎧は焦げ、呼吸は荒い。それでも背筋は真っ直ぐだった。
その姿に兵たちは再び剣を握り直した。
確かに彼は勇者だった。
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次回は 11/8の朝8時ごろ を目安に投稿する予定です。よろしくお願いします。




