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名もなき盾  作者: 安楽公の罠
第3章 勇者セリア編
13/15

大所帯の一行

【前回までのあらすじ】

教会育ちの勇者セリアが仲間に加わり、一行は再び歩き出した。


 セリアの一行は、いつしか自然に大所帯となっていった。


 ある村を通ったとき、魔物に怯える人々を彼女は放っておかなかった。

「助けを求められたなら、応えるのが勇者だよね?」

 そう言って先頭に立ち、私たちも加勢して魔物を退けた。


 最初の戦闘は村の防衛だった。


 魔王軍の斥候が威力偵察を兼ねて夜襲をかけてきた。

左翼の一角が崩れ、若者の一人が地に倒れた。

だがセリアは彼の腕を引き、立たせて叫んだ。

「大丈夫! 一緒にいるから!」

 その声は確かに力を与え、持ち場は守り抜かれた。


 そのとき、彼女は皆の中心に立っていた。

誰もが彼女の姿を見つめ、その背に希望を見た。

私もまた――その光に、自然と目を奪われていた。


 村は救われ、戦いの後、若者たちが「自分も力になりたい」と剣を手に加わった。


 また別の日には、街道の脇で、飢えと疲れに膝を抱えて座り込む孤児たちと出会った。

セリアは迷わず馬車に乗せ、食料を分け与えた。

「行くあてがないなら、一緒に来なよ。危険だけど……一人よりはいいから」

 子どもたちは涙ぐみながら頷いた。


 次の戦は補給路の護衛。


 荷車を囲んだ志願兵たちは士気こそ高く、魔物の群れを押し返した。

だが一度、側面が崩れかけたときがあった。


「ここは任せて! 下がらないで!」

 セリアは自ら側面に飛び込み、剣を振るいながら仲間を励ました。


 周りにいた志願兵たちはその声に勇気づけられ、再び魔物の群れを押し返した。


 勝利の後、彼女は誇らしげに言った。

「ほらね、みんながいたから勝てたでしょ!」

 その成功体験は、彼女と仲間たちに「大人数でもやれる」という自信を植え付けた。


 孤児院時代の幼なじみも合流し、気づけばその数は二十を超えていた。

 セリアは誰も拒まなかった。

「一緒に来たいって言うなら、仲間だよ」

 その笑顔に救われた者は多く、集った人々は自然と彼女を中心にまとまっていった。


 私は言った。

「人数を減らすべきだ。熟練した者だけを残せ。守りきれない」

「だめだよ。みんな一緒に行くって約束したんだ」

 彼女は即座に首を振った。


 その瞳は真っ直ぐで、人を惹きつける不思議な輝きを放っていた。

それは、かつてのリナを思い出させた。



けれどその光はもう少しやわらかで――そばにいたくなるような、勇気をもらえる温もりを帯びていた。


お読みいただきありがとうございました。

次回は 11/3の朝8時ごろ を目安に投稿する予定です。よろしくお願いします。

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