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抱きしめる強さ
【前回までのあらすじ】
陰口に沈む中、赤毛の少女セリアが現れ、アレンたちの心を再び温めた。
彼女の名はセリア。教会の孤児院で育ったという。
幼い頃から年下の子どもたちの面倒を見てきた。
姉のように慕われ、同時に多くの幼い命の死を見送ってきた。
病、飢え、寒さ――守り切れなかった命の数だけ、彼女の心には「受け入れる」という強さが刻まれていったのだ。
「勇者なんて、たいしたもんじゃないよ。ただ、ちょっと人より前に立つ役を押し付けられただけ」
彼女はそう言って笑った。
リディアはそんなセリアとすぐに打ち解けた。
教会に関わりを持つ者同士、価値観が重なる部分が多かったのだろう。
ある夜、焚き火の前でリディアが呟いた。
「神はすべてを見守るけれど……私にはまだ救えない人がいる」
するとセリアは迷いなく笑って答えた。
「じゃあ、私がその人を抱きしめるよ。大丈夫、一緒にいるから」
そのやり取りは、私たちの重苦しい隊に光を差し込むようだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は 11/1の朝8時ごろ を目安に投稿する予定です。よろしくお願いします。




