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プロローグ
初投稿です。読んでいただきありがとうございます。よろしくお願いします。
物語に名を残すのは、いつだって勇者だ。
人々の記憶に刻まれるのは、剣を振るった者の名、光を掲げた者の姿。
けれどその光の背後には、必ず盾があった。
結界を張り、道を均し、誰にも気づかれぬまま矢を弾き仲間を守る。
その役目は、記録にも歌にも残らない。光の隣に立ちながら、誰の視線も受けない。
だが私は、それでいいと思っていた。光は前へ進み、盾は後ろで見守る。――それが、正しい世界の形だと。
しかし、光は思ったよりも脆かった。
振り返ることなく走る太陽は、ある日あっけなく地平に沈んだ。
そして、残された盾にすら、歩みを止めることは許されなかった。
これは、幾度も勇者を守り、幾度も勇者を喪った、一人の裏方の物語である。
光を支え続けた盾が、やがて自ら光を担ぐまでの――長い旅路の記録である。
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次回から第1章(リナ編)が始まります。




