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傷心中のクラスメイトは何故だか我が家に入り浸る  作者: 進道 拓真
第二章

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第八九話 賑やかさの権化


 さっきから怒涛の展開の連続で理解が追い付かず頭がショートしそうになるけど…それでもこれだけは私にとって良い展開であるということを確信できる。

 そのくらい私の中で蓮くんの存在は大きなもので、誰よりも無条件に信じることが出来る人だから。


 なので今回も突然ではあったけどここに来てくれた彼の姿を見てもう大丈夫だと安堵の息を吐き…そして、()()()()()()()を見せている蓮くんの顔を見て再び首を傾げてしまう。


「はぁ……美穂がいつまでも帰ってこないからおかしいと思って出てきたら、近所で馬鹿騒ぎが聞こえて嫌な予感を覚えたら案の定これだよ…全く」

「い、痛すぎ…っ! 頭が割れるわ…!?」

「あ、あのぉ…蓮くん? 色々聞きたいことはあるんだけど…だ、大丈夫なの? 私が言うのもあれかもしれないけど、その人…凄く痛がってるよ?」

「平気だ。むしろこれくらいしないと意味がないからな」

「…そ、そうなの?」

「あぁ。それより美穂は大丈夫か? …変な真似されてないよな?」

「私は…うん、平気だよ。ちょっとびっくりしただけだから…」


 見知らぬ女性の頭を許可もなく、それも力いっぱい叩くなんて普段の彼からしてみればありえない行動だ。

 いつもの蓮くんならそれこそ、女性相手なら慎重に慎重を重ねて接するくらいで暴力的な行動に及ぶのは男の子の友達相手くらいにしかしない。


 …まぁ、そういう紳士的なところが魅力的なんだけどね!


 と、いけないいけない。

 危なく思考が蓮くんの方向一直線に進みかけてしまったけど、この状況下で流石にそれは空気も読めていなさすぎるので自重しないと。

 そういうのは後で目いっぱい満喫するまでしておけばいい。


 今考えるべきことは目の前で繰り広げられている混迷した現状に関することであって、兎にも角にも端から端まで納得いく説明が欲しい。

 でも、流石の私もどこから聞いていけば良いのか脳の処理が追い付かず…こんなところから尋ねてしまった。


「…蓮くん、この人は──もしかしてお知り合い? それならそれで全然いいんだけど…」

「……ん、まぁ知り合いではあるな。ある意味それ以上でもあるんだが…」

「え? それってどういう──…」

「いったいわねぇ…! 一体誰よ、私にこんな加減知らずの暴力振るってくるのは……あら、蓮? 久しぶりじゃない! 元気にしてた?」


 一連のやり取りを眺めていた私の目から見て、やけに親し気に感じられた蓮くんと女性の接し方からこの二人は顔見知りの間柄なのではないかという可能性が浮かび上がってくる。

 そうでも無ければあの蓮くんがあそこまで遠慮なしに相手をするとは到底思えないし、初対面の人には良い意味でも悪い意味でも距離を置きがちな彼であれば尚更そう思う。


 だからそう質問してみた、んだけど……その効果は私が思っていた以上の効果をもたらしてしまったようで。

 これまた不思議なことに、いきなり頭を叩かれたのなら本来激怒してもおかしくはない様な女の人も蓮くんを見るととても親し気に表情を明るいものにしていた。


 …………蓮くんって、私以外にも距離が近い女の人いたんだ。


 その事実にちょこっとだけ胸がもやっとしそうになるも、どういうわけか()()()相手ならそこまで深い怒りは湧き上がってこない。

 明確な理由は私自身にも分からないけど普通なら蓮くんに近づく人は誰であろうと嫉妬の対象になっていても不自然じゃない私がこんな認識をしていたのは…多分。

 無意識の内にも、次に蓮くんから教えられた驚愕の事実を直感していたからなのかもしれない。


「くっついてこようとするな。…もう俺も子供じゃないんだから、ベタベタするのは勘弁してくれ」

「あらあら、一丁前に生意気なこと言っちゃって。あんたがどれだけ成長しようと私にとって可愛い子だっていうのは変わらないのに」

「……美穂、本当に悪かった。もう少し気を張ってれば良かったんだが…まさかこんなタイミングで戻ってくるとは…」

「あっ、そうよ蓮! あんたさっきから私が目を付けてたこの超可愛い子と仲良いみたいだけど、もしかして顔見知りだったの?」

「頼むから黙っててくれ。話がややこしくなる……んんっ。美穂、あのな。この騒がしいのは──一応、ちょうどこの前話したばかりの俺の()()()なんだ…」

「……………………うん?」

「うん? 何、教えてなかったの?」


 …その間、たっぷり数十秒は間違いなくかけて。


 苦々しい表情を浮かべた蓮くんから教えられた、目の前で必死に私を勧誘してきた女性こそが…好きな相手の()であったと気が付いた時。

 焦りやら困惑やら。多種多様と呼ぶにはあまりにも多すぎる感情の濁流を一瞬にして味わった私が咄嗟に放った一言は…多分、少しだけ間違えてたと思う。


「……お、お義母様!?」



     ◆



「その…大変申し訳ありませんでした。まさか蓮くんのお母さんであるとは知らずに…」

「いいのいいの! 私もごめんなさいねー? まっさかうちの蓮がこんな超絶可愛い女の子と仲良くしてたなんてそれこそ信じられないし…ちょっと蓮、本当の本当に妙な手段使って近づいたわけじゃないのよね?」

「…一体息子を何だと思ってるんだ。釣り合ってないのは重々承知だけどさ…俺がそんなことしないって分かってるだろ」

「いや、そりゃ私たちの息子なんだからそんな手は使わない子だなんて分かり切ってるけどね。だとしても女子との繋がりさえ微塵も無かった息子がこんな可愛すぎる子と接点持ってたなんていきなり言われても疑うわよ」

「……ぐうの音も出ない」


 いつもなら人気も少なく静けさに満ちた空気が流れているはずの公園にて。

 今ばかりはそのような空気感とも程遠い雰囲気が蔓延してしまっていたが…それもそのはず。


 ここまでの経緯を辿っていけば至極当然であって、美穂は相手のことを知らなかったとはいえ想い人の母に失礼な態度を取ってしまったと今更ながら焦って謝罪をし始め。

 また一方ではそんな謝られている彼の母が微塵も気にせず笑い声とある種の疑惑を浮かべ始め、その傍らで蓮がどうしてこうなったのかと痛んできた気がする頭を抱えていた。


 まさに混沌。


 現状を表すのにこれ以上当てはまる言葉もないだろうと確信させる状況を前にして収拾のつけようも無くなってくるが…そこは一応大人としての自覚があったのか。

 この場で最も不真面目な印象を美穂に抱かせておきながらも、意外なことにあちらの方が最も落ち着いた対応を示してくる。


「というか、私もあなた達に問いただしたいことはあるんだけどね。蓮は当然にしても…ここまで可愛い子とお知り合いなんて、どういう関係? …もしかして、付き合ってるとかなの…?」

「ふぇっ!? そ、そんな私が蓮くんとなんて……」

「いや、無いから。余計な邪推しないでくれ」

「…………………」

「……そんな目を向けられても困るぞ」

「だって……私の気持ちは蓮くん知ってるよね?」

「そりゃそうだけどさ。実際、まだそういう関係ではないわけだし…」

「……むうぅぅ! それでも即答されると複雑なの!」


 が、そこで美穂との間にただならぬ縁があるのではないかと探りを入れてきた母の言葉に蓮がそれは無いと断言すると、隣にいた美穂から猛反発を食らう。

 …一応彼としては確かな事実としてこう返しただけなのだが、その点は彼女も納得がいかないらしい。


 パンパンに頬を膨らませて怒りを露わにする美穂の様子は何とも可愛らしくあるものの、しかし今回に限ってはその一部始終を見ている者は彼ら二人だけではない。


「…ふぅむ? なるほどなるほど…最初は単なるお友達かとも思っていたけど、これは想像以上の結果な気がするわね。…これは何としてでも、蓮から聞いておかないといけないことが増えたわ…!」

「……何か不穏なこと言ってるとこ悪いけど、とりあえず話せるところは説明するから一回家まで来てくれ。でないと話が進まないから…」

「はいはーい。なんだか我が家に帰るのも久しぶりな感じするわ」

「……何カ月もまともに帰ってなかったら、そりゃ懐かしいだろうさ」


 美穂と蓮のやり取りを眺めていた母の不穏なつぶやきは誰に聞かれるわけでもなく空気に溶けていく…とも思われたが、しっかりその囁きをキャッチしていた蓮に釘を刺されながらもあっけらかんとした態度を崩さずひとまずは家に戻ることに。

 …久方ぶりの母との再会だというのに、嬉しさよりも疲労感が勝るのはどうにもやるせない気分になってしまいそうだった。


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