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傷心中のクラスメイトは何故だか我が家に入り浸る  作者: 進道 拓真
第二章

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第七七話 主観と客観で見えるもの


 色々と過程の中で一悶着あったような気がしてならないが、何はともあれ美穂たちとも合流することが出来た。

 そうなればこれ以上はあの場に留まっている理由も皆無なため早速移動することとして、現在の四人は僅かでも時間を無駄にするのは惜しいと言わんばかりにプールで遊び始めている。


「──あっはは! 冷たいよー! もう、こうなったら…えいっ! お返しだっ!」

「ん…っ! ……美穂も、やり返してくるとは中々やる。でもやられてばかりは、癪…!」


 …夏の日差しが降り注ぎ、しかしだからこそプールの水に身を浸すと心地よい感覚に包まれる。

 そしてそんな場所にいる彼女ら──美穂と琴葉の二人が揃うとやはりその光景の美しさも跳ね上がっているように思えてならない。


 実際に景色が綺麗になっているわけでも無いというのに、どう考えてもそう捉えられてしまうのは見るからに美少女と分かるほどの魅力を兼ね備えていた少女二人が親し気に足元の水を掛け合っているからだ。

 していることはどこまでも無邪気なものであって、しかしやっている当人たちの容姿も相まってそこには夏という季節の魅惑が全て詰まっているようにも錯覚してしまいそうになる。


 ゆえに周囲の人の目も必然的に集まってくるもので………。


「……ふぅむ、やはり琴葉と鐘月さんがいると周りの空気も華やぐよなぁ…眼福とはまさにこのことだ」

「感想がおっさん臭いぞ。言わんとしてることは分からんでもないが」

「賛同してくれるなら最初に暴言挟む意味なくない?」


 …そのすぐ傍で美穂と琴葉を見守りながら、それでもあの戯れに参加することなくただただ傍観に徹していた蓮と京介の二人もそれぞれの感想を呟いていた。


 当初、一番初めはどこのプールに行こうかと実は少し四人の中で相談もしていたのだが中々意見がまとまらなかった。

 これだけ規模が大きいとその分選択肢も広がっていくもので、それだけに『これだ!』と一つの物に絞るのも難しくなるがために。


 それゆえに彼らも、最初はどのプールに向かうべきかと迷いかけて…しかし、その迷っている時間さえももったいないと感じたのだろう。

 誰かの『とりあえず目に付いた場所に行こう』なんて発言に従って向かった場所。

 他と比べて深さがそれほどではなく、子供の背丈程度までしか水のない浅瀬のプールへやってきたわけだが…これはこれで悪くなかった。


 始めから仕掛けや変わり種満載の場所へ下手に赴いても怪我をしかねない上、水にも身体を慣らしていないのだからここを選んで正解だったとも考えられる。

 また何より、他と比較してこれといった仕掛けや派手なアトラクション要素もない場だからこそ…共に来ていた女子二人組が楽しそうにはしゃぐ姿だって見られた。

 そう思えば納得以外の感想も出てこない。


「…ちなみにさ、蓮。一つ聞いておきたいんだが」

「何だよ。そんな渋そうな顔してどうした」

「いや……別に気にしてないしこれでも良いんだけど、どうして俺らは二人を見守るだけで参加しないわけ?」


 ……ただ、余談ではあるが。


 今も京介から問われてしまったので触れないわけにはいかなくなってしまったものの、目の前でそのような女子二人による目の保養になりそうな光景の裏にて。

 何故蓮と京介の男子二人組はあの絡みを()()()だけで、自分たちも参戦しようとはしないのかと純粋な疑問をぶつけられてしまう。


 しかしその質問に対する返事はさほど入り組んだものでもない。複雑なものではない。

 ただし唯一言わせてもらえることがあるとするなら…蓮では()()()()()()()()()()があることくらいだ。


「…俺だって、参加したくないからこうしてるわけじゃない。でも京介だって見ただろ…何でか美穂が、さっきから俺が近くにいくと()()()()()()()()()んだよ…」

「あぁ、うん…それは知ってるけど。ていうか見てたし」

「……一体何があったんだ。さっきまで普通に会話は出来てたはずなんだが…」


 その理由というのは分かりやすくまとめるとただ一つ。

 現在蓮が見守っている美穂は一見何てことも無いように見えるが、その実彼が近くにいくと何故だか挙動がおかしくなるのだ。


 しかもこうなった原因や要因について、これといった心当たりが微かにでもあれば対処のしようもあるはずなのにそれすら無いのだから完全にお手上げ状態。

 強いて言うなら、そう………彼女の挙動がおかしくなったタイミングは蓮と()()()()()()()の頃からというくらいのものである。


 その辺りの記憶を呼び起こしてみても特筆おかしな点も無かったと彼も首を捻るしかなかったが、しかしながら。

 どれだけ考えても不審な箇所など無かったはずだと思い込んでいる蓮の思考とは正反対に、客観的に出来事を振り返ってみればツッコミどころは満載であったはずだ。




 ──ほんの少しだけ時間を戻し、美穂と蓮が無事に合流を果たした後の事。


 この後はどこに向かおうかと彼らが相談をしていた最中。

 まさにその時に異変は起こった。


「えぇと、ここから先どうするかって話だったよね。それじゃあまずは大きなプールに行ってみる、のは………?」

「…美穂? どうしたんだ、そんなジッと見てきて」

「………えっ、あ、いやそのぉ…」


 それまでは真剣に悩む顔を浮かべながら、どの種類のプールに入るべきかと真面目に考えていた美穂。

 けれども不意に彼女が蓮の方向へ視線をスッと動かし、まるでその姿を確認し直すかのように見てきた直後。


 …何か、自分が見逃してしまっていた事実を改めて再認識したとでも言わんばかりに視線を彷徨わせ、微かに頬を紅潮させた彼女の表情は…どことなく気まずそうで。


「そ、その…気にしないで? う、うん。私ももう少ししたら慣れると思うので…」

「何だそりゃ。…まさか体調悪くなったわけじゃないよな? 少し顔を見せて…」

「…~っ!? ほ、本当に大丈夫だから! ほ、ほらほら! どこからどう見ても元気だよ!」

「…なら良いけど。具合が悪くなったなら我慢せずに言ってくれよ」

「わ、分かってます…」


 蓮がもしや彼女もこの日差しにでもやられて体調を崩してしまったのかと心配になり、顔色を確認しようとしたところで美穂は慌てたように自分は平気だと主張する。

 …その間も、決して彼の方を直視しようとはせずに必死に目は背けたままで。




「…あそこから、なんだよなぁ。美穂は何でも無いって言ってくれてたけど、俺の方から何か気に障ることしたのか…?」


 ──先ほどまでの出来事を粗方振り返ってみたわけだが、やはりこれといって変化の原因になりそうな箇所は見当たらず。


 傍から見れば思い当たる節など山のようにありそうな回想ではあるものの、本人からしたら大真面目。

 美穂の反応からして自分が粗相をしてしまったのかと懸念し謝罪をすべきかというところまで考え始めた蓮も……まさか、自分の水着姿に彼女が過剰反応しただけなんて可能性は微塵も考慮しない。


 それはひとえに彼の自己評価がまだ低い位置にあるために起きた弊害であるが、どちらにせよ蓮が正しい答えに行きつくことは最後まで無さそうだった。


「何というか…見てる側からしたら危惧してたことがそのまま起きたって感じだけどな。…鐘月さんのリアクションも、完全に想定内というか…」

「何だよ想定内って。お前なら原因も全部分かってるとでも言いたいのか?」

「分かってるというより、起きて当然のことが全部現実になっただけで……いや、やめとこう。こんなところで議論してても仕方がない。あれこれ話す前に、俺たちも行くぞ!」

「あ、おい! 引っ張るなよ!」


 が、目の前の問題に対して一つでも打開策をと唸っていた蓮を京介は無理やり引っ張り出す。

 今必要なのはあれこれと無意味な独り言をぼやくことではなく、とにかく直に彼女と接する時間であるとこの友人は気が付いていたのかもしれない。


 そしてそれはきっと正しい。

 無理やりに思案を重ねたところで直接接した方が分かることは格段に多いのだから、気になることがあるなら恐れずに飛び込めば良いのだ。


 ゆえに今までプールサイドに座り込んでいた蓮も水場へと足を踏み入れていき、楽しそうに水滴を滴らせる美穂の下へと近づいていく。


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