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傷心中のクラスメイトは何故だか我が家に入り浸る  作者: 進道 拓真
第二章

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第七〇話 一風変わったお買い物


「ねっ、蓮くん今少し時間大丈夫だったりする?」

「時間? 特に用事も無いから問題はないけど何かあったか」


 …あらゆる意味でお互いが振り回されっぱなしだった騒動から一悶着を乗り越え、何とも締まらない結論に至った蓮と美穂だったがあれからはいつの間にか元通りの生活に戻っていた。


 そして騒ぎの大元でもあった彼女の成長云々に関しては…ひとまず良しとしたらしい。

 美穂曰く、『そっちが成長する分には蓮に意識してもらえそうなので受け入れることにする』とのこと。


 …そう言われた側としてはどう反応して良いか分かったものではないが、まぁ何はともあれそうした事情があったのだと分かれば色々と対応も出来るというものだ。

 単なる贅肉とは違って意識的に減らすことが難しい部分の成長となると…過度にダイエットをしたところで無意味だと悟ったのだろう。


 ポジティブに捉えれば己の持つ武器がさらに強力になったとも考えられるので、彼女も最終的にはそのように結論付けたらしい。


 と、そんなこんなもありつつもう少しで外出の日程も迫ってきた頃合いに、何もすることがなく暇を持て余していた蓮の後ろからヒョコッと首を伸ばして美穂が声を掛けてきた。


「うん! もし蓮くんさえ良ければちょっと()()()()に付き合ってほしいな~…って思ったんだけど。駄目だったら無理はしなくていいからね」

「買い物? 予定は無いから構わないけど…二人でか?」

「そうそう。今日は蓮くんにも確認してほしいものがあるから、それで来てもらえたら助かるなって!」


 背後から呼びかけてきた美穂の誘いは一緒に買い物に行かないかという旨のものであるが、何とも珍しいことを言い出してきたものだ。

 別に買い物に行くこと自体がおかしいわけではなく、美穂と蓮()()で行こうと誘われたのが少々意外だった。


 何しろ普段は二人で揃って買い物に赴くことなどあり得ず、それはひとえに他の者に目撃される危険性が高まるからだ。

 単純にどこかへ出かけるくらいならまだ誤魔化せる可能性もあるので良いが、美穂と親し気な様子で食材を買い込む姿をもし学校の関係者に見られれば…この家での繋がりが露見してしまうかもしれない。


 なので極力日々の買い物はお互いが交互に、一人で済ませるというのが暗黙の了解でもあった。

 ゆえにこの時、彼女の方から一緒に買い物に行こうと言われたのが驚きだったわけなものの、まぁ少しくらいなら構わないだろう。


 この近隣で美穂以外の他の同級生が住んでいないことは蓮も把握済みであるし、仮に見られてしまったとしても偶然近くで鉢合わせたとか適当な理由を付ければいい。


 それに何より、美穂がそう要求してきたのであれば可能な限り叶えてやりたいと思ったことも事実なわけで。

 面倒なことになるリスクはあるがその時はどうにか対処すればよいだろうと思い承諾した。


「いいぞ。そんな改まって言われなくても買い物くらいいくらでも付き合うからさ」

「ほんと!? よかったぁ……じゃあ私もちゃちゃっと準備してきちゃうから、十分後に出るってことで!」

「了解。…しかし、そんなに買うものあったかな」


 他の事ならいざ知らず、買い物くらいならそこまで長時間もかかるまい。

 美穂がわざわざこうして誘ってくるということは相応の量を買い込もうとでもしているのだろうが…おそらくそこで蓮の人手を借りたいといったところか。


 周りと比べれば大して筋力があるわけでも、ガタイが良いわけでも無い蓮だがこれでも一応は男だ。

 一部を除いてサイズは小さめな美穂相手なら流石に腕力でも勝っているので、ここは存分に頼りにしてもらいたい。


 なのでそう返事をするとパッと顔を明るくさせ、途端に嬉しそうなオーラを溢れさせながら準備とやらのために部屋を出ていく彼女の後ろ姿を目にしていた。


 ……だが、美穂があそこまで言うとなると一体何を調達するつもりなのやら。

 詳しいことを聞くのを忘れていたのでふとそんな疑問が浮かび上がってきたが、道すがらで確認しておけば良いか。


 そのように結論付けた蓮もまた、軽く持っていく荷物をまとめるために行動を開始した。




「ふんふふ~ん…何だかこうやって二人でお外を歩くのは久しぶりな気がするね。ワクワクしてくる感じ?」

「そんなら良かった。このくらいで満足してもらえるならこっちとしても安上がりだよ」

「まぁ、蓮くんと一緒にお出かけすることがそんなにないからねぇ…この機会をしっかり堪能しておかないと!」


 ある程度手荷物を用意し終えてしまえば間もなく出発となり、美穂は蓮と横並びになる形で歩き進んでいる。

 そして彼もまた、歩幅が小さめな彼女を無意識に置いていってしまわないようにと意識の片隅に置きながらも隣の美穂を見る。


 いつも家の中で目にしている彼女の姿であるが、こうして外を歩いているのは少し新鮮だ。

 一体何が楽しいのか…先ほどからご満悦な雰囲気で歩みを進めている彼女の様子が確認出来ているので文句もないものの、ただでさえ目立つ美穂がそのような態度になっていれば否応にも目立つことを痛感する。


 先ほどから満面の笑みを浮かべる彼女を目の当たりにした通行人たちが見惚れるような視線を彼女に向けているため、周囲への被害も甚大というものだ。

 ただ彼女の場合はもはや多少目立つくらいのことなら日常茶飯事であるゆえか、さほど気にした様子もなく蓮との外出を楽しんでいるといったところ。


 まぁ彼女がそれでよいなら蓮も細かい点を指摘するつもりは無いので、特に気にすることも無くそのまま歩いていき……普段から利用しているスーパーの最寄りまでやってきた。


 ──…が、そこに立ち寄ることなく()()()()()()()()美穂の行動に疑問を覚える。


「ん…? 美穂、ここに行くんじゃなかったのか?」

「え、違うよ? 私が買いたいものはここだと売ってないから、今日は別の場所に行くの!」

「あ、そう…なら良いんだけど」


 普段から食材を買い込むのはここだと決まっていたのですっかり今日もこの場所に行く予定なのだと思い込んでしまっていたが、どうやらそうではないらしい。

 美穂がご所望の品とやらはこの場では調達が不可能なようで、おそらくは更に先まで進んだところに置いてあるのだろう。


 …若干、この時点で妙な予感はしていたのだが追及するほどの事でもないかと無理やり自分に言い聞かせ、蓮は大人しくその後も彼女が進むままに付き添って行く。


 そうしてここから十分ほど歩いてきた場所。

 近所でもそれなりの規模があるショッピングモールを訪れた美穂はさっきのスーパーとは異なり、ここが目的地で間違いないらしくそこに足を踏み入れた。


 何とも珍しい場所で買うものがあったようだと頭の中で考えていた蓮であったが、しかし……そこでも、予想とは少し違ったエリアに突き進む美穂の動向に違和感を覚えた。

 このモールは幅広いニーズを客層としているため、抱えられている店舗のジャンルもまた多岐にわたる。


 もちろんその中には飲食を取り扱ったエリアも広く取り揃えられているので、てっきり美穂はそこを目的地にしているのだとばかり思っていた。

 だが実際に彼女の後ろをついていくと、美穂が向かうのはアパレル系の商品を取り扱っている店が集中しているエリアであった。


 しかも店頭に並べられている商品は明らかに女性ものがメインの店ばかりで、付き添いとはいえ連れてこられた蓮としてはどうも居心地が悪い。

 もしや今日美穂が誘ってきたのは食料品の買い物などではなく、もっと別の何かを──と、そこまで考えたところで。


「──うん。こんなところでいいかな」

「……美穂、ここって…」


 ようやっと目的地に辿り着いたような声を上げた美穂の眼前に広がっていたのは、季節の影響も相まってか…多くの()()の類が所狭しに売り出されている。

 …もうその時点で嫌な予感が止まらなくなっていたわけだが、まだ何かの間違いだという可能性は微かであっても残されているのでそれに縋ろうとして──美穂から直々にその希望をへし折られた。


「えっへへ…今日はこれを見に来たかったんだよね。あと、蓮くんの好みもしっかり確認しておきたかったから…一緒に私の水着を選んでもらいます!」

「………マジかよ」


 単なる蓮の勘違いであってほしいという淡い期待は微塵も残されず。

 まさかこんなことになるなどとは夢にも思っていなかった蓮は、彼女の()()()()に強制参加させられたという事実を知らされ…己が嵌められたという現状をこれでもかと思い知らされた。


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