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傷心中のクラスメイトは何故だか我が家に入り浸る  作者: 進道 拓真
第二章

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第六九話 原因は意外なところに


「───…と、いうわけでして…」

「……………なるほど」


 美穂から飛んできた予想外に過ぎる事実を告げられ、蓮も詳しい経緯を聞いていたわけだが…何ともまぁ、内容が少々アレだったので少々気まずかった。

 彼女の方も自分の隠しておきたかった事実を赤裸々に語った弊害か耳元まで顔が真っ赤なので、おそらくは羞恥心に苛まれているのだろう。


 無理もない。好きな相手にこんなことを語っていれば誰であろうと大なり小なり気恥ずかしさを感じて当然である。


 しかしその辺りのことを一旦隅に追いやっておくと、大体の事情は理解した。

 要するに美穂が今まで取っていた謎の行動は全ていつの間にか増えてしまっていたらしい体重を落とすためのダイエット目的であって、単純な気分解消のためではなかった。


 …考えてみれば思いつきそうなものだったというのに、そんなことにまで思い至れなかった自分が少し情けなくなるがそれだけ視野が狭まっていたのだということにしておきたい。


 それに彼の方も、今の美穂の話を聞いていて一つ疑問に思った点がある。


「うん、まぁ事情は分かったけどさ…別に変わって無くないか? 少なくとも俺から見たらそうとしか思えないんだけど…」

「増えてるの、間違いなく! …うぅ、私だって信じたくは無かったよ」


(……本当にそうか?)


 彼女の説明とこれまでの動向を見ていて彼が思ったのは、大前提として美穂の体重が本当に増したなんてことがあったのかというところ。

 あくまでも彼の主観から見た印象にはなるが、根本的な部分で蓮は彼女が太ったなどとは全く思えなかったのだ。


 先ほどから向こうが気にし続けている腹部に関しても、特に目立って肉が上乗せされてしまっているという印象は受けないし顔だって今までと同様、人目を惹き付ける端正な可愛らしい目鼻のままだ。


 なのに美穂が太ってしまったなどと強く言われてもまるで実感が伴わないのである。


 ただ、彼がこのことをそうして軽く捉えていたとしても…美穂にとっては一大事であることもまた変わらない。

 蓮にこのことを知られてしまったことに加え、自らの隠したかったことが露わになったのも相まってまだ彼女の頬は赤らんでいる。


 そしてそれと同時に、改めて美穂が落ち込んだ様子もセットとなってしまった。


「こんなこと、蓮くんも知ったら…幻滅したよね? 自己管理もちゃんと出来てない私なんて…」

「ん? いやいや、どうしてそうなるんだよ」

「え…?」


 どうやらこの問題は彼女の中で思っていたよりも根が深かったようだ。

 極端なことを言ってしまえば、ただの他人でしかない蓮からすると軽く思えることであっても…美穂には大きすぎること。


 それこそ、この事実が明らかとなった途端に蓮へ怯えた目を向けてしまう程度には。

 発言からして彼女は体重が増加してしまった己など見限られて当然なんて思っているのだろうが………。


 ──しかし、それは流石に考えすぎというもの。


 この程度のことで蓮が彼女に幻滅するなどあり得ない。


「別に俺は美穂が少しくらい重くなろうが痩せようがどっちでも気にしないよ。それよりどっちかと言うと俺の場合は…お前が毎食の料理も満足に食べないで、さっきみたいに倒れられる方が余程心配なんだ」

「…っ!」

「こう言えば大丈夫か? …少なくとも俺は、美穂の見た目が変わったところで失望もしないし心変わりもしない。美穂に世話になってきた事実は絶対に変わらないんだからさ」


 ここでも少し認識の行き違いがあったようだが、蓮は美穂のことを容姿が優れているからとか…可愛らしい見た目をしているから一緒にいるわけでは断じてない。

 彼が彼女のことを受け入れているのは、ひとえにその相手が()()だったからだ。

 他の誰でも良かったなんてことは無い。


 仮の話ではあるが、もしここで彼女よりも美貌が優れており器量という面でも抜きんでた人物がやってきたとしても…蓮がそれを自身の領域に迎えることなど考えられないのだから。

 たった一人だけ、今日に至るまで多くのことで支えてくれた──そして自分の価値を肯定してくれた彼女だからこそ、彼もこうして心を許し始めているのだ。


 ゆえにこそ、美穂の体重が少し増えたくらいのことで幻滅も失望もしないと明言しておいた。


「まぁこんなこと言っても美穂からすれば何言ってんだとしか思えないだろうけど…それでも俺の考えはずっとこうだ。だから心配しなくてもいい」

「……そっか。ううん、私の方こそ今まで不安にさせちゃってごめんね? 蓮くんにも困惑させて迷惑かけちゃって…」

「そっちが謝る必要はないよ。誰が悪いって感じのことでも無いからな」

「あっはは……うん! ならもうむやみに隠し事するのはやめておく! 蓮くんがそう言ってくれるなら…私も無理なダイエットする意味もないもんね」


 ──そうすると、今の言葉のどこかが美穂の心に僅かながらに刺さってくれたようだ。


 彼の美穂を見捨てることなど無いという宣言が良いように効いてくれたらしく、少しばかりキョトンとした表情を浮かべた後にほんのりと吹っ切れた笑顔を見せてくれた。

 久しぶりに目にした明るい面持ちを確認し、そしてそれと共に明かしていた厳しいダイエットは現時点をもってやめるとのこと。


 どことなく晴れやかにも思える顔を見ればそれが嘘やこの場を誤魔化すための言い訳とも考えにくいので、彼女の悩みは取っ払えたと言って良いだろう。

 長かったが、これでようやくこの問題もほとんど解決したというわけだ。



「──だけどこれからは、無理はしないけど常識的な範囲内でダイエットはしていかないとね。…じゃないと油断したらすぐにまた増えてそうだし」

「そんな気にしなくても良いと思うけどな。…本当に変わったようには見えないんだぞ?」

「これはそういう問題じゃないの! 増えた分の重さは何としてでも減らしておきたいっていう乙女心なの! ……はぁ、体重が増えるようなことした覚えはないのにどうして増えたんだろう…」

「…それは確かに不思議だな」


 そして事態が一件落着となればこのリビングにも久しく感じられるいつもの空気が戻ってくる。

 ほっと心落ち着く時間が戻ってきたことは嬉しくもあるが…そうした瞬間に美穂からこぼれてきたのは一種の文句だった。


 言わんとしていることも内容も理解はできるのだが、どうやらこれ以上事態を過剰に重く捉えることはせずとも不満だけは止められないようだ。

 自身の腹部を擦って溜め息を吐いていたが、実際考えてみると不思議でもある。


 何しろ美穂はこの家の家事を一手に担ってくれているという役割柄、その生活習慣もかなり規則正しいものだったりする。

 毎食の食事もしっかりと栄養バランスが考慮されたもので、余計な間食やお菓子の類をつまむことも滅多にない。


 そんな健康的そのものな生活を送っていたのにも関わらず、美穂の体重に変化があったというのもおかしな話だ。

 もちろん彼らは成長期真っ只中である高校生の身なのだから、身長なんかが伸びた分だけ体重も増加したと考えれば不自然ではない。……美穂は例外だが。


 これも彼女から聞いた話にはなるが、どうも美穂は昔──およそ中学生に進級する直前の時点で身長の成長がストップしたらしい。

 それゆえに現在の背丈がやたらと低い、ミニマムサイズな自分が出来上がったのだと愚痴っているのを蓮は耳にしていた。

 おそらく、本来は身長に回されるはずだった栄養分も他の部位に吸い取られたのだろうという説明も聞かされたが…まぁそこは流そう。


 重要なのは残念なことに自然な成長が止まってしまった彼女では、余程の事でも起こらない限りは身長にも体重にも変化など無いということ。

 今回はそれを引っくり返す様な出来事が実現してしまったから彼女も特に動揺してしまったのだろうが、要はそれだけ健康的な生活を送った上で怠惰な日々を過ごしたわけでも無いのに重量だけが増したのが疑問なわけだ。


「蓮くんもそう思うでしょ? 全くもう……最近は()()()()()()()()()()()()()ばかりなのに、こっちまで増え始めなくても…」

「………うん?」


 ──が、その時。


 彼の言葉に力なく賛同するような返答をしてきた美穂が放った、何気ない一言に蓮の意識はどこか引っ掛かりを覚える。

 日頃なら単なる愚痴として流していただろう彼女の言葉。


 ただ今この時に限っては、それが何か大きなものに繋がっているように思えてならなかった。

 ゆえに蓮もこの時は多少デリカシーに欠けていることは自覚しつつも、こう問うた。


「…美穂、少し待ってくれ。その…今言ったことって?」

「ん、おっぱいとお尻のこと? なんか最近また大きくなってきたみたいでさー…持ってた下着とかも少しきつくなってきちゃったんだよ。…なになに、蓮くんもしかして今の話聞いて興奮しちゃった~?」

「…………あのさ、かなり言いづらいんだけども」

「なぁに?」


 向こうも大して深い意図は無かったのだろう。

 本当にぽろっと、口をついて出てきてしまったような発言を追及してみると…そこで語られたのは彼女のプライベートな情報。


 あまり女子としてはこういった話題に触れられたいものではないと思うしそれは美穂も同じだと思うのだが、彼女は蓮に限れば特にこんな話も恥ずかしげもなく語り始める。

 その目的の大半は、そうした話題に不慣れな蓮へとあえて聞かせることで彼が落ち着きを無くす様子を揶揄おうとすることがほとんどである。


 なのでこの時もその例に漏れず、さっきまで深刻な雰囲気を振りまいていたとはとても思えないニヨニヨとした笑みを彼に向けている。

 あの表情からは蓮が平静を保てなくなる姿を見てみようなんて思考がありありと察せられてしまうが……あいにく。


 現在の彼はそこに構っている余裕がなく、今の話を聞いて何となく掴めてしまったような気がする一つの()()が脳内を駆け巡っていた。

 それも、その内容というのが………。


「…美穂が重くなったって話さ、原因は…太ったとかじゃなくて、多分()()()じゃないか?」

「…………へっ?」


 …今も尚彼女が恨めしそうに持ち上げていた胸部や臀部。


 ただでさえ大きいのにそれが終着点ですらなく、未だ成長を続けていると語られた()()こそが今回の元凶なのではないかという推測だったのだから。

 最初から何かおかしいとは思っていたのだ。


 理由も原因もなく人の体重なんて増減するものではないし、要因に身に覚えがなく見た目上も変化がないなら尚更のこと。

 それに美穂も、目立ったところで肉がついたような覚えは無いと言うのだから原因があるとするならもっと別の箇所……サラッと明かされた胸や尻の成長が全ての大元だと結論が出せてしまう。


 彼女自身、そこのサイズなんて早々確認するところでも無いだろうし最近になって違和感を覚え始めたばかりだということだったので原因の候補としてもそこは無意識に除外していたのだろう。

 …それでも彼女の一部であることには変わりないその点が成長したというのなら、そこの分のボリュームが体重に加算されていたのは至極当然のこと。


「え、じゃ、じゃあ私は太ったとかではなくて……単にお尻とおっぱいの成長した分だけ重くなってたってこと…?」

「…そうなるな。多分、断定は出来ないけど…」

「………えぇ、何それ…」


 ただ、そう結論を出されたところで納得など出来やしない。

 散々自分たちを振り回してくれた騒動の原因が、まさか己の身体…それもまるで意識していなかった箇所から発生していたなんて伝えられれば脱力するのもやむなしだ。


 しかし他にそれらしい理由として思い当たる節は存在せず、多少なりとも納得が出来てしまうような意見だったからこそ…彼女も複雑そうな顔になってしまっていた。



 ……それとこれは蓮個人のどうでもよい思考だったが。

 話題の中でさりげなく美穂の胸や腰回りがまだ成長していると暴露されて、まだ今よりも上があったのかと内心恐れおののかされたという。


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