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傷心中のクラスメイトは何故だか我が家に入り浸る  作者: 進道 拓真
第二章

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第三三話 蒸し暑さの中で


「あっついな…ここまで気温上がらなくてもよくないか?」


 ──外から日差しが照り付けてくる灼熱の中。


 着込んでいる制服のシャツでさえも流れ落ちてくる汗のせいでまとわりついてくるように思えてならないが、この夏の気候だけは自宅だろうと今もいる学校の教室内だろうと大差ない。

 備え付けられている空調のおかげで屋外よりは多少居心地の良さも改善はされているが、根本的な暑さばかりはどうしようもならない。


 手で風を仰いで蒸し暑さをやり過ごそうと画策はしてみるものの、この程度の対処では焼け石に水もいいところだ。


「そうか? 俺はこのくらいの暑さも気持ちいいくらいだと思うけどな。思いっきり動いて汗かくと爽快感あるし」

「…俺はお前とは違ってインドア派なんだよ。体力馬鹿と一緒にするな」

「体力馬鹿とは何だ! 俺はただ琴葉のために日々を全力で過ごしてるだけだ!」


 …すると、そんな暑さにやられかけていた蓮に活発的な声を掛ける者が一人。


 近くの椅子に座りながら教室中に響き渡る声量を出しているのは彼の数少ない友人である京介であり、この気温の中にあっても変わらない騒がしさも今ばかりは室温を引き上げているようにしか思えない。

 それに根っからのアウトドア派でもある彼の意見はインドア派であると自負している蓮には理解できない理論が盛り込まれ過ぎている。


 付け加えるのなら、校内でも指折りの名物カップルとしても知られている友人には恋人である琴葉の存在があるだけで無尽蔵の体力を引き出せるらしい。

 …何度聞いても理解不能の理屈である。


「けどまぁ…お前にもいつかこの気持ちが分かる日が来ると思うぜ? 何せ蓮にはほれ、()()()がいるもんな!」

「……そっちが誰の事言ってるのかは分かるが、あいつとはそんな関係じゃないしそうなることも無いっての」

「大丈夫だ。…俺には全部分かってるからな」

「絶対に分かってないだろうが…」


 ──と、そんなどうでもいいことを語り合っていると唐突に向こうから()()()()()を指さして、傍からすれば訳の分からないことを言及される。

 しかし蓮はその一言だけで意図を全て察せてしまい、ほとんど無意識に指し示された先に目を向けてみると…そこには、一人の()()の姿がある。


 そこにいた人物は特に何かをするわけではなく、さして目立ったようなことをしているわけでも無い。

 ただ…本人が何かをするわけでもなく、そこにいるだけで人目を惹き付けてしまうような魅力が彼女にはあった。


 まず何といっても真っ先に挙げられるのはその容姿であり、同学年でも低めにある身長と兼ね備えた愛らしさを思わせる顔立ちは子供らしい庇護欲を掻き立てられるだろう。

 だが彼女の魅惑的な特徴はその点ではなく、むしろその先…豊満に過ぎる()()()()にこそある。


 低めの身長とはとことん対照的なまでに、成長している胸部なんかは男であれば否応にも目が引き寄せられてしまうほどに圧倒的な迫力を有し、臀部もまたそれに負けず劣らず凄まじい。

 幼さを感じさせる背丈と異性の魅力を抜群に持ち合わせた彼女──美穂は、辺りから注がれる視線など意にも介さないご機嫌な様子で授業の準備をしているようだった。


 そしてここ一か月で紆余曲折を経て急激に彼女と距離を縮めることになった蓮は、京介の示した意味を察して思わず溜め息を吐く。

 今更言うまでもなく、この友人は彼女と蓮が親密さを深めていくことを期待しているのだろう。

 分かりやすく言ってしまえば交際関係になることを待ち望んでいるのである。


 しかし非常に残念なことに、蓮と美穂がそのような間柄になることはありえない。

 大前提として蓮は彼女のことを尊敬もしているし色々な意味で感謝することも増えているが、特に恋愛感情に値するような情感は抱いていないのだ。


 それは向こうに関しても同様だろう。

 美穂はどういったわけか友人としての好意は持ってくれているらしいが、それだって細かく分類すれば異性に抱くそれとは別物なのだから。


 よって二人がくっつくような展開は期待するだけ無駄というものである。


「いーじゃんかよ! 可能性はゼロじゃないんだから、もしかしたらそういう事だってあり得るかもしれないだろ! それに、もう少しで()()()だって始まるんだからそこで距離が縮まることも無い話じゃない!」

「夏休み、ねぇ…確かにもうそんな時期か」

「おう! というわけでここは一発、この機会に鐘月さんとの距離を縮められるような作戦をだな…」

「いらん。妄想の中で勝手に考えてろ」

「酷っ!?」


 それでもそう言い聞かせたところでこの友人には通用するわけもなく、それどころか否定すればするだけ燃え上がってしまうという厄介極まりない性質をしているので京介の戯言は全て切り捨てておくに限る。

 こうでもしなければこちらの気が付かぬ間に突飛すぎるお節介を画策しかねないため、慈悲など考慮するだけ無駄だ。


(…しかし、夏休みか。色々とありすぎて忘れかけてたけど、もう少しでそれもあるんだよな)


 ──その一方で、蓮は京介の至極どうでもいい作戦立案を右から左に聞き流しながら今しがたの会話で夏休みの存在を思い出していた。


 既にカレンダー上の日付では七月も中旬に突入しようとしており、今ここにいる多くの生徒も期待感を募らせているだろう夏休みという長期の休暇期間。

 一か月を超える月日が丸々休みになるタイミングということもあって出来ることは無限大に考えられると言ってもいい。


 ただ蓮に関してはそれ以上にこの一か月近くの日々が濃密過ぎた弊害とでも言うべきか、すっかりその存在を失念してしまっていた。

 怒涛の展開続きであった日常に対応することで頭の中はいっぱいいっぱいとなっており、休みの日にまで気を掛ける余裕が残されていなかったのだ。


(休みか…まぁ当たり前だけど、あいつはいつも通りこっちに来るんだろうな。夏休みに入ろうと入るまいと同じ場所にいるんだから大して過ごし方も変わらない気がするんだが…そこはいいか)


 しかし一度冷静になって考えてみると、休みがあってもなくても蓮の生活スタイルにはさして変化もないことに気が付いてしまった。

 とある事情もあって美穂との交流が学校以外でも行われているため、それがおそらく休みに突入しても続くとなれば…彼女との関わりが途絶えることは無い。


 この接点がどれだけ継続されるのかは彼自身にさえ分かるものではないが、少なくとももうしばらくは続くに違いない。


「───ん?」


 …と、京介の賑やかな雑談を聞き流しながらそんなことを考えていた時。


 ふと蓮は会話の流れもあって見つめていた美穂の姿を視界に捉えていたわけだが…ある瞬間、彼女はどこかから()()を感じ取ったかのように辺りを見回し始める。

 一体何を探しているのか。


 何をしたくてそのようなことをしているのかは不明であるが、何気なくその様を眺めていると…きょろきょろと視線を彷徨わせていたこともあって一瞬、蓮と美穂の目線が合う。

 そうすると、それまで周囲を見渡していた美穂は彼女のことを見ていた蓮の存在を発見するのと同時に一転して表情を明るくし、何とも緩み切った顔持ちになりながら嬉しそうな態度全開で片手をこちらに振っていた。


(…っ! 鐘月のやつ、そんな態度してたら周りに誤解されてもおかしくないってのに…はぁ、後で注意だな)


 元々人の注目を集めやすい美穂のことだ。

 流石にクラス全員が見ていたわけではないだろうが、それでも彼女に目を向けていたクラスメイトは他にもいるだろうしそうだとしたら美穂の唐突な態度の変化とて気が付かれていても不思議ではない。

 となれば無論、その先にいる蓮に向けられた蕩けきった甘い笑みに関してもバレバレというわけだ。


 幸いなことに今彼の目の前にいる京介には身体の向きという関係もあって見られていなかったようだが、それ以外の教室にいた同級生の何人かは彼女の変貌っぷりに驚いたような反応を示していたのを蓮は見逃していなかった。

 …後ほど面倒な事態になりそうだという嫌な予感をひしひしと実感しながらも、この距離では美穂の対応を咎めることも出来やしない。


 なのでこのことを注意するのは後々に回しておこうと脳内のメモに記録しておいたわけだが…どうにも漏れ出た溜め息は抑え込むことも難しかった。


ここから第二章となります!


のんびりペースになるかもしれませんが、まだまだ続く二人の日常と甘さはどんどん増していきますのでお楽しみに!

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