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傷心中のクラスメイトは何故だか我が家に入り浸る  作者: 進道 拓真
第一章

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第三〇話 とんでもない疑惑


 美穂が琴葉の手によってあられもない姿を晒しそうになりながらも、その後は何とか収まってきた彼女の暴走具合に合わせて彼らの行動も自然と決まっていった。

 今は四人ともが適当な場所に居座りながらも──とはいっても蓮と美穂、京介と琴葉という二人組がそれぞれ向かい合う形ではあったがそこでようやく落ち着いた状況の中改めて事情の説明がされていた。


「…つまり、蓮は鐘月さんが困ってるところを助けてそのお礼として家に上がらせた。そこでお前の生活を見かねて面倒を見てもらうようになったと」

「まぁ大体の流れはそんなところだ。細かいとこは省いたけどな」

「………道理で、相坂君の家に女子の私物があったはず」

「それに関しては俺も知らなかったんだが……おい鐘月。いつの間に持ち込んでたんだよ」

「え、えへへ。いつも相坂くんのお家にお邪魔してるから、置かせてもらっても問題ないかな~って思っちゃって…」

「…いいけどさ。けど今度持ってくる時は俺にも報告してくれ」


 先ほどまではおふざけに近い雰囲気が蔓延していたので京介のノリなんかもそれに準じたものとなっていたが、冷静な状況説明を諦めずに続ければ何とか大まかな経緯を語ることも出来た。

 そうしてその事情を聞いた京介らはというと…各々が納得したように頷きながら美穂がここにいる理由に関しても把握してくれたようだ。


 しかしその中で何気なく発覚してしまった事実であるが、蓮の家は彼の知らぬ間に美穂の私物が設置されていたらしい。

 このままいけば、流石にそれは考えすぎだと思っておきたいところだがいつしか蓮の自宅も美穂の存在によって浸食されていくといった事態にもなりかねない。


 現時点で大分手遅れな雰囲気が滲み出ていることも否定はできないものの、将来的にそのような未来が訪れることも一つの可能性として十分に考えられるので恐ろしいものだ。


「……だけど、それ。美穂は大丈夫? 仮にも女子が男子の家に上がるのは危険。美穂くらいの子なら尚更」

「おいおい琴葉。まさか蓮が鐘月さんに襲い掛かるようなことを疑ってるのか?」

「ううん、全く。そもそも相坂君にそんな勇気があるなんて微塵も、これっぽっちも思ってない。でも一般的な感覚としてリスクがあるのも事実だから、一応確認」

「……なぁ、今サラッととんでもない勢いで俺が貶されてなかったか?」

「…気のせい。それより、美穂は本当に納得した上でここにいるの?」

「うん、もちろんだよ!」


 されどそんなまだ確定もしていない将来のことを蓮が心配している間にも着々と話は進んでいき、話題は気が付いた時には琴葉が美穂の身を案じるようなことを述べている真っ最中。

 彼女が言わんとしていることはよく分かる。


 何しろそれは以前から蓮も言っていることだからだ。

 彼らのような交際関係ならいざ知らず、やはり向こうの目から見ても単なるクラスメイトに過ぎない間柄で異性の家に入り浸るのは危険ではないかと。


 …若干その途中の文言で何気なく蓮が女子にまともに手を出す勇気さえないヘタレだと貶されまくっている気がしないでもないのだが、周りからもそう言ってくれるのは素直にありがたい。

 場合によってはこう指摘されたことで美穂も正気に戻るのでは、なんて淡い期待も抱きそうになるが…そこはやはり美穂か。


 向こうからの問いに対し、一片の迷いも躊躇いもなく言い切ってみせる姿勢は変わらずだ。


「私から言っても説得力なんてないかもだけど、これでも相坂くんのことは信用してるから大丈夫! 琴葉ちゃんも心配してくれてありがとうね?」

「……ん、美穂がそれで良いって言うなら別にこっちからとやかくは口出しもしない。友達が傷つくのは見たくないから、それだけ」

「んふふ…ありがと! 私も琴葉ちゃんのことはお友達だと思ってるから、これから良かったら仲良くしようね!」

「…それはこっちこそ」


 琴葉が美穂を心配するような素振りを見せていたのは、徹頭徹尾彼女が傷つくようなところは見たくなかったから。

 とっくのとうに彼女のことを()()だと認識していた琴葉なりの優しさは美穂にも伝わり、だらしなく緩んだ口元から隠しきれていない喜びが表れている。


 仲良きことは美しきかな。

 そのような言葉がピッタリと当てはまりそうな女子同士の友情を前に、蓮も無意識に頬を綻ばせようとして…次に放たれてきた言葉に度肝を抜かされた。


「──それにねぇ、相坂くんって結構紳士的な男の子なんだよね。家の中でも絶対に私の胸とかお尻だって見てこようとしないし、むしろ見たって全然怒らないのにちゃんと私の目を見て話そうとしてくれるの! そういうところが優しくて素敵だなって思うんだよ!」

「げっほ! ごほっ!?」

「ほほぅ…? 流石蓮ってもんだな。普通こんな可愛い子と同じ空間にいたらガン見してもおかしくないってのに…その誘惑を振り切るとは大したもんだ! それに随分と鐘月さんに懐かれたものだな?」

「…京介てめぇ、あとで覚えておけよ」


 …一切の恥ずかしげもなく暴露されたのは、蓮の日常の過ごし方とも言えてしまうある種のリーク。

 彼女にとっては普段の彼の日常風景から何気ない過ごし方でさえも自身からすれば貴重な対応だと言いたかったのだろう。


 しかしながら、その言い方ではまるで蓮が日頃から美穂に誘惑でも受けているかのようにも聞こえてしまう。

 勘違いも甚だしい。

 いや、あながち外れてもいないのが厄介なところなのだが事実としてはそこまで爛れた生活を送っているわけもないので思わず吹き出してしまった。


 そこを突いてこんなネタを逃してなるものかとでも言わんばかりに茶々を入れてくる京介には後ほど事実を叩き込ませることが確定したが、美穂にしてももう少し慎みというのを持ってほしい。

 特に、自分の身体について言及する時なんかは切にそう思う。


「……それ、本当の話? もしかして相坂君って…女子に対して興味ない?」

「……………え。そ、それ…ど、どういうこと…?」

「…可能性は無くはない。ここまでの話を聞いておかしいとは思ってたけど、もしかしたら相坂君は女子よりも男子の方が──…?」

「えぇっ!? う、嘘だよね相坂くん!? ちゃんと私みたいな女の子でもリアクションとか偶にしてくれるもんね!?」

「いや、何でそっちではそんな話になるんだよ!? 心配されなくても俺は男を好きになるような嗜好は持ってないっての!」

「そ、そうだよね……よ、よかったぁ…!」


 ただそうこうしていると状況はより混沌とした方向に舵を切り始め、気が付けば美穂と琴葉の会話にて危うく蓮が独特な趣味嗜好をしていると断言されるところだった。

 一体どのような思考過程を経ればそんな結論に至るのか真面目に分からないのだが、少なくとも蓮はそんな好みを持ち合わせていない。


 世の中には一定数彼女らの言う趣味を持つ者もいるのだろうが…残念ながら彼はその対象から外れている。

 なのでそう断言すれば美穂は心の底から安堵するような挙動を見せていた。


 …とんでもない疑惑を掛けるのはいくら何でもやめて欲しい。


「はははっ、蓮の周りも賑やかそうで何よりだな! まぁ安心しろよ、蓮。いざって時はこっちに連絡してくれたらいつでも相談に乗ってやる。特に鐘月さんとの接し方に悩んだら迷わず言ってくれ!」

「…お前のアドバイスは九割方ろくでもないものだろうし、別にあいつとはそういう関係でも無いからいらん。あと、絶対にこのことは他のやつにバラすなよ?」

「おう、そこは心配せずとも平気だ。流石にこのことが漏れたら騒がれるのは理解してるし、言い触らすつもりは無い。…けど今の鐘月さんと蓮の距離感ならバレてもぶっちゃけ問題ないとは思うがな」

「それでもだ。要らないトラブルを背負い込みたくはないんだよ。鐘月だって俺の家に入り浸ってるなんて知られたら余計な噂を抱え込むことになる。それは避けるべきだろ」


 そうすると外野からまるで自分は関係ないと言葉など無くとも主張している京介が割り込んでくるが、蓮はそんな友人にもここで見たものは口外しないようにと口止めをしておいた。

 元々他の誰かにバラすつもりもなかった美穂との共同生活ではあるものの、これが仮に同級生に知られたりなどすれば余計なアクシデントを呼び込む可能性が高まるのは容易に想像できる。


 場合によっては美穂と近づくことを目的とした男子なんかがこの辺りまで寄ってくることも考えられるので、それは何としても避けなければならない。

 ゆえに京介にもしっかりと言い触らすのは厳禁だと伝えれば、案外あっさりとした態度で向こうも同意してくれた。


 一応はその点に関する理解も京介は持ち合わせてくれていたようなので、そこは一安心といったところか。

 普段はノリと勢いに任せた言動でこちらを翻弄してくることも多い友だが、こういう時は他人に降りかかるリスクを考慮した判断をしてくれるため空気を読める一面も持ち合わせていたりするのだ。


 …叶うのなら、日頃からその姿勢を維持してくれれば非常に助かるのだがそれは実現することもない願望というものだろう。


「まっ、俺としては蓮が学校だけじゃなくてプライベートでも鐘月さんと仲良くなってるって知れて大収穫だけどな。…この調子で頑張っていけよ? 応援してるからさ!」

「だから鐘月とはそういう関係じゃないって言ってるだろ!」


 それに空気が読めるとは言っても、蓮に対するスタンスに関してはまるで変えるつもりがないらしい京介の言動に絡まれれば冷静さを保つことも難しい。

 いつまでも諦める気配がない、蓮と美穂の仲が縮まっていくことを期待するような声掛けをしてくる彼に蓮は魂の叫びを張り上げた。


 …本当に、割と本気で叩いてでも諦めさせた方が良いのではないかと内心で蓮も考えたところである。


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