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傷心中のクラスメイトは何故だか我が家に入り浸る  作者: 進道 拓真
第一章

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第二九話 正反対でも合致


「──なんだよ蓮! そういうことがあったなら早く言ってくれっての! てっきり俺は鐘月さんと全く進展が無いものかと思い込んでたが…家に通い詰められる程親密になってたとはな!」

「…楽しい勘違いしてるとこ申し訳ないが、何度も説明しただろ。鐘月はただ俺の生活習慣を見かねて面倒見てくれてるだけで、お前の愉快な妄想みたいなことは微塵もないんだよ」

「またまた、照れる必要はないぞ?」

「照れてないっての! …ったく、こいつは…!」


 ──蓮が予想だにもしていなかった、京介と琴葉。その二人組と美穂の対面が果たされてしまった直後。


 当然だが双方にとって予定もされていなかった鉢合わせをしてしまえば全員が驚きを露わにするもので、困惑するのは自明の理。

 ただそれだけでは時間が過ぎるごとに状況がより悪化していくのも分かり切ったことで、京介たちからも詳しい事情の説明が求められた。


 即ち、『美穂と蓮がどんな関係なのか。またどんな事情があって彼女がここにいるのか』という事を延々と問われたのだ。

 ちなみに意訳をすると『二人は既に付き合っているのか』という質問であったとも言い換えられる。

 かなり深掘りをされかけた上に彼女が自宅に来ている場面まで目撃されてしまえばそう思うのも無理はないのかもしれないが……。


 流石にそれは見当違いにも程がある上、そもそも蓮と美穂は交際関係にあるわけでもない。

 既に家まで上げておいて何かと思われるだろうが、美穂はあくまでも蓮の生活を見かねてサポートをしてくれているだけだ。


 具体的な経緯を語るにあたってあの夜の公園での出来事や、そして何故美穂が蓮の自宅を訪れてきたのか。

 そういった理由に関しても明かす羽目にはなったがその辺りの誤解は早々に解いておいた。


 断じてこちら側があの二人のような恋愛感情を前提とした関係性にあるわけではないと。


 …まぁ、そんな再三繰り返してきた説明もあらゆる解釈を自らにとって都合のいいように認識を変化させてしまう京介相手には全く役に立たなかったのだが。

 今も尚、現在進行形で美穂と蓮が()()()()()()()にあると信じて疑わない様子を見れば一度叩いてでも正気に戻した方が良いのではないかと真剣に考えたくなる始末だ。



 それとこれは話も逸れるが、そもそも何故美穂がこのタイミングでここに来てしまったのか。

 彼女には事前に蓮から来ないようにという旨のメッセージを送っていたというのに、それを無視するかのような行動。


 しかし…よくよく話を聞いていけば別に彼女も意図して無視をしたわけではないとのこと。

 というのも、美穂は普段であったら非常にありがたいことに先ほどまで近所のスーパーにて夕食の買い出しをしてくれていたらしい。


 毎日のように継続してくれている料理には欠かせない食材の調達であるが…運の悪いことに、その買い物に夢中になるあまり彼の連絡に気が付かなかったらしい。

 道理で返信が来なかったわけである。


 それを指摘したのはとっくに手遅れとなった状況下でもある京介らとの対面を果たしてしまった後だったので、自身のうっかりミスによってこの鉢合わせが実現してしまったのだと知ると美穂も流石にマズいと思ったのか何度も謝罪をされてしまった。

 ただ…こうなってしまったのならもう仕方がない。


 もちろん希望を述べるのなら彼女との過剰な接点は隠し通しておきたいところだったが、知られてしまったのなら無理に言い逃れようとする方が想定外のトラブルを巻き込みかねない。

 だったら諦めて細かい事情と正しい経緯を話してしまった方がいらぬ勘違いを生み出すことも無くなると判断した。


 それゆえに京介と琴葉にも美穂が我が家に入り浸っているという現状に関して明かすこととなったのだ。


「……まさか、相坂君と鐘月さんが一緒の家で過ごしてたなんて驚き。前からこうだった?」

「えぇっと~…一か月弱くらい前だったかな? そこで相坂くんに助けてもらった恩があって、今はご飯を作りに来たりしてるんだけど…天宮さん、でいいかな?」

「………そんな他人行儀な呼び方じゃなくて、普通に琴葉でいい」

「そ、そう? じゃあ…せっかくだから琴葉ちゃんって呼ばせてもらうね!」

「ん、ならこっちも美穂って呼ばせてもらう」


 …と、そんなてんやわんやな騒動を引き起こしかねない京介をどう対処すべきかと蓮が頭を悩ませる一方、もう片方の女子同士の対話は平穏そのものと言っていい。

 最初こそクラスが別なので初対面だったらしいお互いの対面に困惑した様子を見せていた美穂と琴葉も、一度話してみると案外気が合ったようだ。


 今は大まかな事情を耳にしながらも柔和な雰囲気を保ちながら会話を続けており、横並びになってソファに腰掛ける光景からは剣呑な空気も感じられないのであちらは大丈夫だろう。


 クールな言動が多い琴葉と人懐っこい雰囲気が前面に出ている美穂。

 一見性格も正反対のように思われるが…個々人の相性の良し悪しにはその辺りも大して影響しないらしい。


「それにしても…こうやって琴葉ちゃんと話す時が来るなんて思ってなかったよ。()ではいっぱい聞いてたんだけど…」

「…噂?」

「うん! なんか他のクラスにすっごい美人な子がいるって聞いてて、それも橋本君とすっっごい仲が良いんだって小耳に挟んでたから気になってたの! でも実際に見てみると納得だよねぇ…」

「……そんなにまじまじ見られると、恥ずかしい」


 そのままの流れで継続されていく女子の会話というのは美穂から琴葉へと抱かれていた印象に触れられていき、校内でも有名なカップルたる京介との仲の良さに関しては彼女も把握していたようだ。

 まぁ、その辺の情報は他学年であればともかく蓮と同学年の者であれば知らぬ者はいないと言い切れるくらいに有名なものなので特に知っていても驚きはない。


 どちらかというとそんな話が広まるほどに所かまわずくっつくあの二人の方が異常なのである。


「…でも、それなら私も美穂のことは話には聞いてた」

「え、そうなの?」

「ん、京介のクラスに目立つ子がいるって噂。あと………………色々、()()()って話とか」

「大き…っ!? …も、もう! どこ見て言ってるの!」

「…………正直、その大きさは卑怯だと思う」


 ──が、そんなほのぼのとした談笑の最中に放たれてきた噂話とやらの一つ。


 美穂だけではなく、琴葉も彼女なりに美穂に関連した話を聞いていたということだったが…その内容は少しアレだった。

 それとそう告げた瞬間の琴葉の視線は、ほんの一瞬だけ自身の身体へと向けられていたのは言わぬが花というものなのだろう。


 ……その、何だ。

 別に琴葉のスタイルが悪いとは言わない。


 むしろ彼女のプロポーションは全体のバランスを考えれば人目を惹き付けるほどのもので、美しさに重点が置かれたような容姿は憧れの的になり得るとさえ評価されるほど。

 しかし……その一方で、そんな整った容姿を持つ彼女であっても一点だけ。

 とある一部分だけは…ほんの少し平坦なものをお持ちであった。


 ゆえに琴葉とはこれまた正反対に、抜群に実りすぎている美穂のプロポーションをどこか羨まし気な感情を込めた目で見つめていたのだろう。


「そ、それにそう言われても…! …こんなのあっても不便なだけだよ? 大きいとずっと肩が凝るし、身長が小さいのにこういうところだけ成長していくからお洋服のサイズも中々合わないし……」

「……美穂、それは愚痴に見せかけた自慢? だとしたら…私は許さない…!」

「えっ? …や、やんっ! ちょ、ちょっとぉ! そんなに力強く揉まないで!?」

「許すまじ……持つ者はいつだって持たざる者の前でそう言う! これはそのお仕置き!」


 ……さらにさらに、そこで美穂が弁明をしようとして逆に火に油を注いでしまったものだから琴葉の怒りは頂点に。

 蓮の家のソファの上で、内心溢れかえっている感情の激しさをそのまま吐き出すかのようにとびかかった彼女は美穂の身柄を抑え込むと恨めし気な態度をありありと表に出して身体を揉みこんでいく。


 彼女らが一つ身を動かすたびにどこかしらの部位が大きく揺れ動き、男であればどんな者であろうとも視線を引き付けられてしまいそうな極上の魅力を放っている。


 もちろんその場に居合わせた蓮も思わず目を引かれかけて……その直前、あまり見ていい景色ではないだろうと気合いで踏みとどまりサッと視線を逸らしておいた。


「どうした蓮。鐘月さんを助けに行かなくていいのか?」

「…そう言うなら京介が天宮を止めてくれよ。お前の恋人だろうが」

「はっはっは! …それは無理な相談だな。普段は琴葉も可愛いんだが、ほら…地雷を踏んだ時は俺でも手が付けられなくなるんだよ。だからこういう時俺は無力だ!」

「堂々と宣言するな! そんなこと!」


 琴葉の魔の手に追いやられた美穂は何とか自力で逃れようともがこうとしているが、体格の差もあって思い通りに逃げられないらしい。

 それどころか力を入れようとすればするほどに、彼女たちの密着度合いが増してしまい絵面が凄まじいことになっているのだが…幸か不幸か、蓮は視線を全力で逸らしているのでその光景は目にしていない。


 なお、この状況で頼りに出来そうな唯一の存在である京介にそれとなく琴葉の暴走を沈静化させられないかと打診してみたが全くの無力であった。

 曰く、恋人のこういった動向を相手にするとなると打てる手がないとのことだったがそれでももう少しは美穂を助けるために手を貸してほしかったところである。


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