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「ほっているけど、ほっておかないで!」
古びた縄梯子を引っぱり出して、
リヴォルヴと一緒に、穴の縁に立った。
「引っかけるぞー!」
下から、かすれた声が返ってくる。
俺は、リヴォルヴに支えてもらいながら、
縄梯子を慎重に穴の中へ垂らした。
ゆっくり、ゆっくり──
がたがた、ぐらぐらと、音を立てながら、誰かが這い上がってくる。
まず見えたのは、ボサボサの髪。
次に、真っ黒な顔。
最後に、全身泥だらけの、ちょっと……いや、かなり臭い人影。
(お、おお……?)
俺と同じくらいの背丈。
見たことあるような、ないような…
少なくとも、俺の知ってる“あの連中”とは別物だった。
泥まみれのその人物は、ようやく地上に出ると、
縄梯子にぶら下がったまま、へらっと笑った。
「た、助かったぁ……!」
息を整える間もなく、そいつは泥をぬぐいながら手を差し出してきた。
「ぼく、アウグル! ありがとうっ! これも──何かのお導きかもっ!!」
目が、キラキラしてた。
声が、弾んでた。
笑顔が、まぶしかった。
俺は少しだけ戸惑いながら、
そっとその手を握り返した。
──温かかった。
そして、なぜだか、少しだけ嬉しかった。