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邪悪な、許しがたい、異端の。

「ここ、は……カティエの、むらです」


それを言えば、旅人は安心してうなずく。


俺の役目は、それだけ。ほんとうに、それだけ。


長老の魔法で、喉の奥に“それ以外”を封じられて言葉は喉の奥で腐っている。




語ることを奪われた案内人が、それでも語らなきゃいけない日が――来るなんて。



村の掟では、それ以外を話してはいけない。


──いや、正確には「話せないように」されている。

喉の奥に、長老の魔法が“封じ”として埋め込まれているのだ。

俺の声は、もう使えない。

腐って、熱もなく、ただ沈黙だけが眠っている。

おまけに指も無い。

右手は人差し指が、左手は親指と人差し指がない。全部で7本指しかない。


おまけっていうか、足らないんだけどな。



俺が暮らしているのは、村の外れ。

門を越えて、さらに向こう。

ひび割れた白い地面、むき出しの岩肌。

……もう、木も草も育たない。

村の連中は、たぶんこう思ってる。

「盗賊が攻めてきたときに、最初に燃やされる場所」

「魔物が出たら、最初に食われる場所」

──つまり、俺は「切り捨てられてもいい」存在。

でもさ、それでいいんだ。

役目があるだけ、まだマシなんだから。



……笑えるよな。

笑えないけどさ。


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― 新着の感想 ―
声を奪われ、指も欠けた案内人の孤独と絶望が、静かに胸を打つ。言葉にできない痛みが喉に腐るように蓄積していて、読んでいて息苦しくなる。なのに「役目があるだけマシ」って笑うところに、哀しみと皮肉が滲んでい…
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