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少年はなお見栄を張り続ける

カルレアは、紅潮するレヴィンの顔を覗き込み

ジト目でニヤニヤしながら杖を顔に寄せて転移の呪文を唱えた


『サタテリス!私と手を結びし少年と共に6374へ転移せよ!』

杖の主である名前を挙げて杖を起動させた後に、対象を宣言し

転移先の杖の名を口にし転移魔法を発動させた


転移魔法は二つの杖によって発動する魔法だ

故に転移用とされる杖の名前と置き場所は秘匿な場合が多い


ただし俺が転移先の杖の名6374を知った所で、その杖自体に

自分の杖を新たに直接刻印しなければ転移魔法を発動させることはできない

刻印済みであるカルレアの杖を貸してもらったとしても正当な杖の主ではない為、正しく詠唱しようが発動しない


転移魔法による白い光に包まれた後、徐々に視界がはっきりとする

そこにはログハウスがあった。木々が鬱蒼と生い茂り、その建物を覆い隠している


『ほら上っていいよ、私と妹しか住んでないけどね』

 依然として手を握られたまま家に上がり広間まで連れてこられた。

 他人と手を繋いだ経験など初めてだが、挑発的なカルレアが自分を弄んでる事は自明であった為

一矢報いようと無駄に平静を貫き隙を窺っていた


『ご両親は?』

『もう数年前から居ないんだよねえ・・・詳しい説明するから、ここで少し待ってて』

 とカルレアが握っていた手を解いた瞬間、レヴィンが握り返した

『不用心じゃないか?こんな得体のしれない男から目を離していいのか?』

 カルレアは何も言わずレヴィンに目を合わせ続けるとレヴィンが2秒もかからず目を背ける


『見つめてるだけで倒しちゃえそうな男の子は怖くないよ~また手は握ってあげるから』

と若干笑いながら繋いでいた手が彼女の両手に包まれ

目を細めつつ妖艶な雰囲気を醸し出す彼女にたまらず

手を振り解き頭を下げ謝った

『すみません!!!全く敵いません...』

『わかればよろしい~』とカルレアは上機嫌に二階に上がっていった。

レヴィンは真っ赤な顔を鎮めるために天井を仰ぎ続け自分の至らなさ情けなさを反省していた


流石に言い寄ってきた男の数による経験の差だろうか?

いなし方が一枚上手どころではない・・・雲泥の差だ

俺は一生情けない男に甘んじていたくはない、必ず一泡吹かせてやる・・・

と下らない対抗心を燃やしてる矢先に


右奥の扉が開き銀髪の少女が眠気眼をこすり、広間のこちらを見て叫んだ

『え!??だ!ダ!誰!?』

そう動揺の声を挙げながらも少女は即座に詠唱した

『木々よ男を拘束シテ!』

『いや待っ・・・』

杖は予め起動されており

レヴィンは成す術もなく年下の少女に制圧されてしまった


椅子から生えてきた木々によって体が包まれ動く事が出来ない

友達にもこんな高密度の木を即撃ちしてくる者は居なかった

詠唱に時間をかけ魔力を杖に込めれば威力は増すが

俺がどれだけ時間と魔力を使ってもここまでの物は発現させられないだろう


カルレアが終始お茶らけていたのも納得がいく

俺は彼女たちにとって圧倒的に雑魚であって、取るに足りない存在だったのだ

書物を抱えたカルレアが物音を聞きつけ急いで戻ってくる


『お姉チャン!!不用心!!』

『あはははははは』


先刻一丁前に説教してきた男が妹によって無様に制圧されているのを

目の当たりにしたカルレアは今までで一番笑っていた

惨めな気に陥っていたがレヴィンは満更でもないと満面の笑みのカルレアを眺めて感じた


『不法侵入者のレヴィンくん、こちらが妹のリレアよ』

『美少女姉妹だね・・・そろそろ解いてくれないか』

『ダメ 信用出来ナイ』

 

『リレア、この人はね無詠唱魔法が使えて魔法管理局から追われる身なんだって』

『信じられナイ弱すぎる』


『弱いけど無詠唱魔法が得意だったの、友達に披露しちゃって通報されたんだって』

『ンフフ 頭も・・・』

 声を小さくし、すんでのところで口を閉じたが、レヴィンは傷付いている

 しかし姉からの紹介であっても警戒を一切緩めず、視線と杖を向けて来る妹に感心しつつも

 リレアは自分より身長が10cm程低いのもあり、立ちながら終始ジト目で睨みつけられても

 威圧感など皆無で寧ろ可愛らしく見えてしまう

 

レヴィンは拘束してる木々の葉に火を灯して見せた

『わ!スゴ・・・でも調子乗らないで木々ヨ!』

『すみません二度と勝手な真似はしません』

『...リレア、私たちの事説明するから程々にね』

 さらに手まで拘束される形で治まった、とても人の話を聞く体勢ではないがカルレアは説明を始める


『無詠唱魔法ってね200年以上前はその使い手で殆ど構成されていた宗教や学校があったり、そこまで特別な物じゃなかったの』

『父上は俺を神の使いと崇めてたけど?』

『ンフフ』

リレアは誇らしげに言い放つ癖に情けない姿で拘束されているレヴィンに笑ってしまう


『世界中の国々がここまで躍起になって消すのだから、脅威なのは間違いないわね』

『うちの両親もそれらに関する書物を所持してただけで数年間帰ってこないから・・・ネ』

リレアの発言でレヴィンは指名手配犯の自分を受け入れたリレアに漸く納得がいった。

尚更それに応えないといけないと衝動に駆られた


『俺が助けるよ』


『!?私より弱いノニ!?』

『明日はもっと強くなるさ』

無詠唱魔法に関する記述すら許されないトレストリア国家の禁忌を身に染みていてもなお

助けてくれたカルレアにレヴィンはより一層恩義を感じていた


『恩は必ず返すよ』

『一緒に助けようね』

カルレアはレヴィンの真剣な眼差しに微笑みつつ少し彼を見直した

リレアは相変わらずレヴィンを睨め付けていたが、何とかこの男を育て上げるか追い出さないと姉が犬死にしてしまう...と真剣に悩んでいた


『それとね?もう一つグリフォンというこの星を管理してたとされる神聖な生物に関する宗教や伝記が未到達地域であった凍土地帯を我が国が制覇した160年前から消されていったわ、祖父母も恐らくその伝承が根付いてる土地のせいで村ごと滅ぼされたし』


狂気の沙汰ではない、惨劇が広まらなかったのは生存者を残さないのだけではなく

もしかしたら俺含めた一般市民は万が一耳に入っても記憶を消されて

平穏の暮らしを強制されていただけなのかもしれない


その神話通り、世界を管理していたというのならグリフォンが魔法をも管理していたのだろう

人間がどういう方法か知らないが詠唱という記録が残る仕組みを作り魔法を管理している?

自分の存在がわからなくなる。無詠唱魔法が使えるようになったのは半年前からだ、それまでは確実に使えなかった。それにグリフォンなどという神秘的な存在に触れた記憶が微塵も無いし....考えた所で強くなれるわけでは無いしと思考を止めた。


『・・・難しい事はさておき 俺は1秒でも早く強くならないとな』

『それもそうね~もし未だ捕まっているとしたら刑務所を特定して忍び込むとしても変装も必要だし、     

レヴィンは可愛い顔をしてるから女装も行けそうね

貴方が強くなっている間に私はこれからの予定と計画を複数考えておくね』

可愛い顔と褒められたのも束の間やはり男として見られていないようで、何も嬉しくはなかった


『ン!?』

参謀に名乗り出た姉から必然的にレヴィンの指南役をリレアが任されており

 拒否しようが無い状況に戸惑いソワソワし始めている

 ふとレヴィンに目線を戻すとこちらを微笑みながら見返してきて無性に腹が立った

 この男は危険な賭けを姉にさせていることを本当に理解しているのだろうか?

 姉は操られているのだろうか?理解が追い付かず納得できない


『リレア師匠!ご指導ご鞭撻のほどお願いします』 

『弱いままナラ魔法管理局に飛ばしてヤル・・・』 

レヴィンの顔に杖を突き付け殺意を感じさせる眼差しでリレアは言った

読んで下さりありがとうございました!!!

宜しければ評価お願いします!!!

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