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第一期 武器のないバトルロワイヤル

プロローグ


霧が立ち込める離島の森。そこに響くのは、風の音と、時折聞こえる獣の遠吠えだけだった。しかし、その静寂はすぐに破られる。遠くから、何かを叩く鈍い音が聞こえた。次に続いたのは、誰かの絶叫。恐怖が、この島全体に蔓延していた。


ここは、政府によって選ばれた中学三年生の生徒たちが互いに殺し合い、生き残りをかけた「バトル・ロワイヤル」の舞台だった。


第一章:いじめられっこ・大谷和也


大谷和也は、いつもクラスの隅にいる存在だった。背が低く、細身で、眼鏡をかけていた彼は、クラスメートから「弱虫」や「ダメ男」と呼ばれて、いつもいじめられていた。特に、クラスのリーダー格である藤田翔太やその取り巻きたちは、彼を標的にしていた。


和也はいつも反抗することなく、ただ耐えるだけだった。しかし、今、彼はその同じクラスメートたちと、この島で生き残るために戦わなければならなかった。和也の心の中には、これまで抑えてきた恐怖と怒りが混ざり合っていた。


第二章:地獄の始まり


政府の役人が説明を終えた後、一人ずつ袋を渡され、島に解き放たれた。和也は、袋の中を覗き込んだ。そこにあったのは、水と簡単な食料、そして地図だけだった。武器はどこにも見当たらない。


和也は冷たい汗が背中を伝うのを感じながら、森の中に足を踏み入れた。彼はこの状況に慣れていないし、武器も持っていない。やがて夜が訪れ、和也は茂みに身を隠し、震えながら一晩を過ごした。


その夜、遠くで誰かが叫び、そして沈黙が訪れた。和也はその声が誰のものかを考え、胸の奥に不安が広がっていくのを感じた。


第三章:反撃の始まり


翌朝、和也は森の中で一人のクラスメートと遭遇した。それは、彼をいじめていた藤田翔太だった。藤田は和也を見ると、にやりと笑って近づいてきた。「お前なんか、このゲームじゃ真っ先に死ぬだろうな」と言いながら、和也を押し倒した。


和也の中で何かが切れた。これまでの屈辱が、一気に爆発した。彼は藤田の顔に手を伸ばし、両目に親指を押し込んだ。藤田の悲鳴が森に響き渡ったが、和也は力を緩めなかった。藤田はもがき、叫びながら地面に倒れ込んだ。和也は震えながらも、自分がやったことを信じられなかったが、これが生き残るための現実だと理解した。


その後、和也は藤田の地図と食料を奪い、茂みの中に身を潜めた。これからどうするべきか、全く分からなかったが、一つだけ確かなことがあった。彼はもう二度といじめられることはないということだった。


第四章:混沌と恐怖の拡大


その後、和也は様々な状況に遭遇した。ある時は、女子生徒の一人である斉藤美咲が、男子生徒に押し倒され、喉に噛みついているのを目撃した。美咲の顔には狂気の表情が浮かび、血が口から滴っていた。和也は恐怖に駆られてその場を離れたが、彼女の姿が頭から離れなかった。


他にも、槍を作り出した鈴木亮介や、投石紐を器用に作り出した博識な優等生、松田健太郎と出会った。彼らは和也にとって強敵であり、彼の存在に気付かれる前に、何とかして逃げるしかなかった。


和也は、次第にこの殺し合いが単なるゲームではなく、サバイバルのための冷酷な戦いであることを理解していった。だが、それと同時に、クラスメートたちが次第に狂気に駆られていく様子を目の当たりにし、自分もまたその一部であることに気づいていた。


第五章:転機と裏切り


和也は、洞窟の中で息を潜め、夜目を鍛えていた。他の生徒が入ってくる度に、彼は暗闇に紛れて素早く動き、相手を倒した。和也の心は次第に冷酷なものへと変わっていった。


その一方で、島の高所を占領していた岡村大輔は、次々と岩を転がして下にいる生徒たちを撃破していった。和也はその恐ろしさを理解し、彼に近づかないようにしたが、彼の存在が頭から離れなかった。


だが、最も予想外の展開が訪れたのは、ある晩のことだった。和也が森の中を歩いていると、突然、何者かが高所から矢を放ち、大勢の生徒を射抜いた。驚いた和也がその方向を見ると、そこには以前に倒れたと思っていた生徒、石川拓也が立っていた。彼は生きており、驚異的な精度で次々と矢を放っていた。


第六章:最終決戦


石川の放つ矢は的確に和也のクラスメートたちを撃ち抜き、次々と倒れていった。和也はその光景を目の当たりにし、逃げるしかなかった。石川の存在は、和也にとって最も恐ろしいものとなった。


洞窟の中で鍛えた夜目や、暗闇の中での戦術も、飛び道具には通用しない。和也はそのことを痛感し、逃げ場がないことに気づいた。


そして、和也は最後に立ち向かう決断をする。彼は森の中で最適な隠れ場所を見つけ、石川の攻撃を避けるための策を練った。しかし、奇跡は起こらず、和也はついに石川と直接対決することとなった。


エピローグ:最後の瞬間


石川の最後の矢が放たれ、和也はそれを避けることができなかった。矢は彼の胸に深く突き刺さり、和也は倒れた。彼が最後に見たのは、石川が無表情で弓を引く姿だった。


和也の視界が暗くなる中で、彼は自分が生き残るために何をしてきたのか、そしてそれが何の意味も持たなかったことを悟った。彼は結局、ゲームの犠牲者に過ぎなかった。


そして、島には再び静寂が訪れた。政府のヘリコプターが、唯一の生き残りである石川を迎えに来た。彼は弓を手にしたまま、無言でヘリに乗り込んだ。


その後、この「バトル・ロワイヤル」について、何も語られることはなかった。石川は冷酷な勝者となり、和也の存在もまた、記憶の片隅に消え去っていった。

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