第六話 魔境探索1
更新遅れました。
もう片方の作品も更新できてなくてすいません。
校庭につくとホルスト学院長がいた。
「みんな! 適当でいいから並んでくれ!」
生徒たちはホルスト学院長の言う通りになんのルールもなく不規則に並んでいく。
「今から魔境探索が始まる! 今年も死者が出ないように最大限注意すること! それと、魔境と言ってもその入口だ。みんなが思っているほど危険ではないよ。」
そう。魔境探索で死者が出ないのはそういうことなのだ。出てくるのは強くても最低のFランク程度、普通は気性が荒い動物だ。しかも教官はCランク。これで死者が出るほうがおかしいのだ。
「それではいってらっしゃい!」
ホルスト学院長はそう締めて全員を移動させた。転移魔法だ。使えたのか……
(少し予定が狂ったな)
俺はホルスト学院長が転移魔法を使えることを意外に思いつつ細工をしてから身を任せる。
─魔境─
目を開けると鬱蒼とした森林の中だった。どう見ても入口なんかじゃない。
「あれ? 入口でもこんなものなんですか?」さっと周りを見渡すとサリアがいた。そこへルディも到着する。
「んん……ここは?」
「魔境の奥地。だぶん4thぐらいか?」
「「え?!」」
魔境は入口から5thまででランク分けされている。4thとは上から二番目だ。出てくるのはB〜Sランク。入口とは比べ物にならない。
「は、早く逃げたほうがいいんじゃ?」
「それはなしだな。自ら魔物のいる場所に行くようなものだ。」
サリアの案を却下する。下手に動いたら守りにくいしな。
「今の現在地がわかった。3日ぐらいで出ることができると思うぞ。」
なんせここにきたのは俺が細工をしたからだからな。
「ライムの転移魔法ではどうにかならないの?」
(チッ ルディは冷静なのか)
「それについてだが、ここの魔素濃度が高くて無理だな。」
サラリと嘘を付く。本当は今にでも帰れるがここは二人を鍛えるチャンスだからな。
それに魔素濃度が高いのは嘘ではない。まぁそれは俺が魔素を放出しているからだが。
魔力と魔素の違いは<魔力は魔法に使う>だが、<魔素は魔術に使う>
魔法と魔術は双方を打ち消す力があるが、それは魔力と魔素にもその関係があるからだ。転移魔法はあくまでも魔法なので魔素濃度が高いと使えない。
魔素濃度が高いのは俺のせいなのだが。
そんなことはつゆ知らずルディは納得する。だが、サリアも冷静だった。
「でも、魔法が使えますよ?」
サリアは光魔法の光を指先で出している。
「転移魔法は特別でな、繊細なんだよ。少しずれると頭と体の座標がずれてそのまま死んだりするからな。」
これも事実だ。俺なら失敗の可能性はないが。
なんやかんやで二人を丸め込むことができた。
俺もひとまず一息ついていると、ガサガサッと物音がする。
俺は二人の口に手を当てる。
「二人とも、何かいる。」
少し先に鶏がいた。だが、よく見てみると大きさが違う。4〜5m程あり、蛇の尻尾がある。あれは……
「コカトリスだ。」
幸いコカトリスは耳が悪い。俺は手を離す。
「コカトリスはAランクです。早く逃げましょう。」
「そうよ。敵う相手ではないわ」
サリアとルディの意見は同じだ。逃げろ、と。
だが俺は違う。コカトリスは美味いんだ。
「いや、食う。」
「「は?」」
俺はコカトリスに向かって歩く。
「電止」
電気系統の状態異常魔法をかけるとコカトリスは痺れを超えて心臓が止まる。
俺はそのままコカトリスに近づく。
「あっ、ナイフも包丁も無いな…… 手刀にするか。」
俺は手刀でコカトリスを捌く。石化器官は何かに使えるかもしれないから収納魔法に詰めておこう。
「着火、そして…… 自然創造」
火を起こしてから自然創造で作った串に肉を刺して焼く。
「二人も来いよ!」
「あ、あ! はい!」
固まっていったサリアとルディを呼んぶとサリアだけ返事をしてルディは何も言わずに来る。
俺は二人に焼けたコカトリスの串を渡す。
「た、食べれるの(ですか)?」
サリアとルディは抵抗があるらしい。俺は二人を気にせず食べる。
うん! うまい!
鶏のモモよりは脂が少ないけどササミよりは多い。淡白なようでジューシーな味はいくらでも食べれそうだ。
恐る恐る二人も食べる。
「「美味しい!?」」
顔を見合わせて信じられないという顔をしている。
コカトリスは面倒度がその分うまいのだ。
「だろ? コカトリスは結構好きなんだ。」
脂っこくもないが淡白でもない絶妙な味は一度食べたら忘れられない。
その後、ある程度食べたら収納魔法に入れる。
「さて、このあとだが向こうに向かおうと思う。」
俺は北の方向を指す。魔境5thだ。
予定としては魔境5thで数日彷徨ってから空間を繋いで魔鏡の入口に着くといった感じだ。
「わかりました。」
「このままいても仕方ないものね。」
二人も納得しくれている。
俺達は魔鏡5thに向かって歩き出す。
─数時間後─
そのまま歩いていると何かの叫び声が聞こえた。
「グゥァァァァアア!」
「「ひっ?!」」
二人は驚いて止まる。
(おかしいな……生息域はもっと奥の筈だが)この叫び声はドラゴンだ。それも古龍の。
龍は五段階に分けられる。
低位龍···生まれたての弱いドラゴン
中位龍···そこそこ経験を積んだ半人前程度のドラゴン
上位龍···成体の一人前のドラゴン
古龍···龍の中でも選ばれた者しかなれない一流のドラゴン
神龍···最強のドラゴン。いずれの時代にも三柱しかいないドラゴン内の調停者。
古龍は多分今のランクにするとSSぐらいだろう。本当は5thでも奥の方にいかないといないはずだが……
どうやら縄張りが変わったらしい。
目の前に二十メートルはあろう巨大な赤龍が降り立つ。
「声はこの波長であっておるな?冥土の土産にしろ。我が名は炎獄流アドラヌス! 神竜である虹龍エリス様配下にして獄炎の支配者である! 此度は地を這う蒙昧な貴様らに鉄槌を下しに来た!」
アドラヌスはどうなってしまうのでしょうか?
〜裏話〜
僕はホルスト。サラスの学院長をやっている。
「それではいってらっしゃい!」
そう言って転移魔法を発動する。
(!?!?)
誰かが僕の術式に干渉した。対応者は三人。ライム君と、サリアさんとミルディアさんだ。
(誰かが罠にはめようとでもしているのか?)
ともかくすぐに転移魔法を消す。だが間に合わなかった。
対応者の三人は飛ばされてしまう。
「まずい! 生徒はここで待機! 教師は魔境へ救助に向かう!」
僕は指示を出してすぐに魔境へ向かう。
何もなければいいが……
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ライムのせいで先生は大変なようです。