外伝 ハロウィン
Happy Halloween!!!
今回はギリシュ教国に行く前、先生としてのライムのお話です。
「おはようございマス!」
「……今日はやけに元気だな。それは何だ?」
朝っぱらからフローラの声が響き渡る。
そして、フローラは猫耳のカチューシャをつけ、頬には3対の線を入れている。
「きょ、今日はハロウィンって話をしたら……。フローラちゃんが気合い入れちゃって……」
マリーが言うには、何気なくハロウィンについての話をしたらしい。
だが、地球を知らないフローラにとっては知らない文化で、しかも自分の大好きな動物にも仮装できるから気合いを入れてしまったとのことだ。
少し遠くを見るとサラムは外側が黒く、内側が赤いマントを付けて顔を赤らめながらそっぽを向いている。さては吸血鬼だな。
その隣では頭に大きなネジを付けて顔にツギハギを描いたジークがずっとサラムに話しかけている。あれはフランケンシュタインだろう。
「ハロウィンって何ですか?」
「まあ……、少し遠くでの年中行事だ。悪霊とされているものから身を守るために悪霊の仮装をする行事だな」
サリアは俺の話を全部聞き終わる前にフローラの元に行って仮装セットを貰っている。
「つまり、毒をもって毒を制すってことね?」
「え? ああ……。うん。そうだと思う」
ルディは言いたいことを言い終わったのかサリアと共に仮装セットを選んでいる。
聞いたんだから最後まで聞けよな……。
「私は悪霊なの……?」
「あー、吸血鬼は人間側から見ると悪霊なん──」
目の前には目元に涙の溜まったリアの顔。
導き出せる俺のすべき行動は一つだ。
「悪霊なんかじゃないな、絶対に。サラム! 今すぐ仮装を変えろ!」
「はあ!? なんでだよ先公!」
「うるさい! 早く変えろ!」
サラムはごちゃごちゃ言いながら仮装を変えに行っている。
そして、サリアとルディは仮装し終えて俺のところに見せに来る。
「ライム様! こんな感じでどうでしょうか?」
「なかなか似合ってるでしょ?」
サリアは小さな赤い角のカチューシャに赤い先の尖った尻尾を細い紐を腰に巻くことでくっつけている。サリアは悪魔のつもりだろうが、どちらかと言うと小悪魔な感じだ。
ルディは先端が折れている紫色の大きな三角帽に外側が紫色で内側が黒いマント。魔女だな。
「似合ってるよ」
「えへへ……」
その時、響き渡る大声。
「我を見るのだ!」
声の主は白い布をかぶったニグだ。ちゃんと角のところは切り抜いて出るようにしている。
その隣には大きなゴーグルを頭に着け、茶色いミニスカートに白いシャツの上に茶色いジャケットを手を通さずに羽織っているエリス。
「ご主人様、これが“すちーむぱんく”と言うのですね?」
「そうだな」
「そのような装いをするのは久しぶりです」
偉そうに胸を張っていたのに何も反応されなかったニグは唖然とする。
「わ、我は無視か……?」
「はいはい、似合ってる似合ってる」
「そうだろう!」
俺の答えが雑になったのも仕方ない。
だって顔も見えないんだからな。白い布から角が生えているようにしか見えない。
「ライム、どう?」
リアが衣装を見せてくる。
青と白を基調としたメルヘンな服には赤に少し黒を入れたようなシミがべっとりとある。
「……そのシミは?」
「私の力で血を付けた」
「そんなことに力使うなよ……」
呆れて漏れた俺の言葉にリアはムッとする。
「それはマリーに言って」
「いやいや、マリーはこういう時には節度を持って──、は?」
俺の目の前にいるのは下半身に青い魚の尾ひれのところを着たマリー。
それだけじゃない。マリーは自らの魔法で水の直方体を作り、そこに浮いている。
本気で人魚をしている。
「は、ははは……」
マリーは自分でもやりすぎたと思っているのか顔を赤くしている。
だが、辞めはしないようだ。
そこへ仮装を変えたサラムが戻ってくる。
今度はくり抜いたガボチャを被って、紫を基調としたマントを付けている。
ジャック・オー・ランタンだな。
「先公! 俺たちも仮装してんだからあんたもしろよな!」
「はあ? なんで俺もしなくちゃならない?」
「あんただけしないのは不平等だろうが!」
俺とサラムが言い合いをしている間に後ろから頭と腰に何かをつけられる。
触って確認すると、頭はどうやらカチューシャのようだ。立った三角形の耳はふわふわで、腰の方には毛の生えた尻尾……?
バタンという音が重なる。
音がした方を見るとサリアとルディが倒れている。
エリスが静かに笑う。
「脱落者が出てしまいましたね」
「そうだな」
リアも目を逸らしながらつぶやく。
「……きょ、凶器」
フローラの持ってきた鏡を見ると、俺の髪色と同じ色の狼の耳のカチューシャに紐を腰に巻くことで付けた狼の尻尾。
狼男だ。
「……」
「なかなか似合ってんじゃねえか。先公」
サラムが茶化す。
「何をしてるんだい? ライムくんも楽しそうだね?」
突如背後に現れたサラス。
奴は烏帽子にゆったりとした白い狩衣。
袴を着て白足袋に草履を履いている。
「これが“陰陽師”ってやつだろう?」
どうやらヒューに色々教えられたらしい。
サラスならそういうのは率先してするタイプだろう。
「私も来たよ!」
元気ハツラツな声。
その方向を見ると、黒装束にカラスのような白いマスクを付けたヒューが立っていた。
ニグといいヒューといい、なぜ顔を見えないようにするのだろうか?
「みんなで記念作ろうよ! パス特製の記録媒体があるんだ!」
ヒューがそう言いながらカメラのようなものを取り出す。
てちてちと歩いていき少し離れた場所にカメラを置く。
「じゃあ、今から撮るよ! 合言葉は何にする?」
「と、トリックオアトリートとかが……、いいと思います」
ハロウィンを本当の意味で知っているマリーが意見する。
「いいね! それじゃあ行くよ!」
「任せてください!」
「準備オッケーよ!」
いつの間にかサリアとルディも復活している。
「せーのっ!」
「「「トリックオアトリート!!!」」」
〜裏話〜
冥府にて──
「ネルガル様っ! 今日は地球でのハロウィンですよ!」
「ん? せやけど、仮装衣装とかないで?」
鼻息の荒いエレシュキガルは何かの衣装を渡す。結構複雑そうだ。
「これを着てください!」
ネルガルは言われるがままそれを着る。
黒いタキシードに左が黒、右が白の大きな三対六枚の翼。
そして頭には半分ほどが黒くなった天使の輪っかを付けている。
堕天使だ。
「……って! まるでアイツやないかっ!」
「えへへ……、でも似合ってますよ!」
エレシュキガルも着替えていた。
官帽にチャイナ服。髪を二つのお団子にして顔にはお札を貼っている。
キョンシーだ。
「どうですか?」
「まあ……、似合ってるんとちゃう?」
「あ、照れてますね」
「ち、違うわっ!」
その後もいちゃついていた2人だった。
結構長くなりましたね。




