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第二十五話 簒奪

序盤はセネガル視点、中盤はライム視点、終盤はセネガル視点に戻ります。

視点が目まぐるしく変わりますがお許しください。

ネルガルはしっかりと相手を見据える。

頂上者同士の戦いの場合、先に動いたほうが基本的に不利になる。だが、そうとも言ってられなかった。


「ゴハッ……」


テミスが苦しそうに吐血する。


(……力吸われとんのか。不味いな)


このまま停滞していても何も始まらないと判断したネルガルは一気に距離を詰める。


「邪魔をするな」


重く、恐ろしく、だが同時に畏敬するような声だった。

それに対して響くのは能天気な声。


「嫌や」


ネルガルは鎌を振り降ろす。

魂を刈り取り存在を殺すその鎌は無慈悲に謎の男に襲いかかる。

だが──


「──ッチ……。硬すぎやねん」


男に傷はつかなかった。

男はつまらなさそうにふたたびテミスがいた方向を見たが……


「居ない……?」

「なんや、今さら気づいたんかド阿呆」


ネルガルの脇腹にはテミスが抱えられていた。もともとこれが狙いだったのだ。


「小賢しい……」

「お前がアホなだけなんちゃうん?」


ネルガルは煽るのをやめない。煽らなかったらネルガルじゃないのだ。


「ゴホッ……」


テミスは未だに吐血している。


(こらひどい状態やな……。せやかて避難させる場所……、あそこがあるやんか!)


最も安全な場所。それは最も強い者の守護を得られる場所。


ネルガルは右手だけでテミスを持ち上げて構える。それに嫌な予感を感じたのは当然だろう。


「ううう、嘘ですよねっ!?」

法廷(オリジヌ)に行ってこいやー!」

「ちょっ!? えぇーー!?」


ネルガルは思いっきりテミスをぶん投げる。

その進行方向には時空の切れ目があった。距離を殺すことで無理やり繋げたのだ。


「後で覚えてなさいよ!」


涙目のテミスは罵詈雑言を吐きながら時空の切れ目に入っていく。

テミスが通過した時空の切れ目はふたたび殺すことで閉じることができる。


「忌々しいっ!」


男の手刀による斬撃を軽く躱した後に髪をかき上げる。

その目は無慈悲にだけども美しく輝いていた。


「さて、始めよか」




───────────────────────


個人面談も終わり俺は部屋を片付けていた。

土魔法で作ったのなら土魔法で消すこともできる。

やっぱり便利だな。


その時、突如として巨大なエネルギー反応が産まれる。俺だけでなくサリア達まで気付いたようだ。


(この反応はテミスか……。こんなにエネルギーを垂れ流しにしてるなんて、体に大穴でも開けてるのか?)


ここまでエネルギーを垂れ流しにされたら無視するわけには行かない。しかも場所は法廷(オリジヌ)だ。何か急用でもあるのだろう。


「少し用事ができた。この場はサリア達に任せる」

「ライム様、私も行きますよ」


サリアはしっかりと目を見つめてくる。その隣ではルディが頷いてるし、リアに至っては既にフクロウの姿になって肩に止まっている。

時間に余裕がないしこのまま行ったほうがいいだろう。


「ならエリスとニグ、この場は任せたぞ」

「お任せください」

「早く戻ってくるのだぞ!」


返事だけ聞いてから俺はすぐに転移をする。




転移した先では法廷(オリジヌ)に穴が空いていた。

リアが真っ先に飛んで穴を確認する。


「……! 早く来て!」


その場に着くとテミスが廊下に倒れていた。その辺りには紅い水たまりが出来ている。


「っ! すぐに治療します!」

「傷口を焼けば血は止まるわよね! 手伝うわよ!」


それを見た瞬間にサリアが回復魔法を使い始める。ルディは火で傷口を焼く。炭化すれば血は流れ出ないので失血死は無くなるのだ。


「……先……輩、はやく……、ネルガル……を……、奪われ……、ました……!」

「奪われた……? まさかっ!?」


(冗談じゃない。象徴を奪われたのかっ!?)


執行神が最強である理由、それは3つの象徴にある。


““調和(ヴィシュヌ)””

““正義(ラシュヌ)””

““執行(アヌ)””


この3つの象徴による能力があるからこそ執行神は最強なのだ。


執行(アヌ)法廷(オリジヌ)に埋め込まれている。そのため奪われたのは調和(ヴィシュヌ)正義(ラシュヌ)だろう。だが、それで十分過ぎる。

なぜならその権能は──




───────────────────────


ネルガルは男と打ち合っていた。


(こいつ硬すぎやねん! こちとら鎌やぞ!)


男は素手でネルガルと打ち合っていた。

だが、だとしてもネルガルは男に勝つ自信があった。


ネルガルはまだ本気ではなかった。既に勝利の方程式は完成していた。だからこそ、誤算がないのか打ち合って確認していたのだ。


結果は誤算ナシ。男よりネルガルの方が圧倒的にエネルギー量も多いし、技術も圧倒的にネルガルが上だ。


(これは勝確やな。とはいえ油断するのはアホのすることや。確実に勝……、は?)


ネルガルは自分の胸に穴が空いていることに気付き、距離を取ってから傷を殺す。

傷があるという事実ごと殺したので傷なんて見当たらない。


(不自然やな……、まるで調和(ヴィシュヌ)や……)


男は突然高笑いする。


「ハハッ、ハハハッ!! 完全だ。目的は果たされた!」


空間が歪み、異界への扉が開く。それは見覚えがあった。


正義(ラシュヌ)……、やと……!?)


ネルガルはこの瞬間、テミスが何を奪われたのか理解した。


(シャレにならんで……)




〜裏話〜

「ネルガル様まだかなー……」


エレシュキガルは一人悩んでいた。目玉の亡者は途中で死んでしまった。


(まさかテミスがあんなに強く結界を張ってたなんてなー……。確かにそれは正しいんだけど……)


エレシュキガルは考える。そして決める。


(もう様子見に行っちゃおーっと!)

視点ぐるぐるでしたが面白かったでしょうか…?

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