第二十四話 個人面談②
久しぶりの更新ですね。すいませんでした。
「おまたせしまシタ! ナンの話をするんデスか?」
「まあ、まずは座れ」
フローラはニコニコとしながら座る。
顔は元気な少女そのものだが一つ一つの仕草には上品さがにじみ出ていた。
「聞きたいことは一つだけだ。なぜカタコトなんだ?」
「なぜって……、そんなの最近ここに移住してまだ言葉に慣れてないからデスが?」
フローラは呆れたような、尚且つ驚いたような顔をしながら答える。
「それはおかしいな? お前の従魔の中には言語を翻訳する“ユヴァゼソン”が居たはずだが?」
ユヴァゼソンとは従魔の中でも重宝されている魔物だ。人の言葉を使うことのできる狼のような姿で言葉を翻訳する以外にも見た目も愛らしい方なのでほとんどの従魔師が契約をしている。
ちなみにフローラがユヴァゼソンを持っているかどうかなんて俺は知らない。ただおそらく持っているだろうという推測だ。
「……よくわかりましたね。ユヴァゼソンは見せてないはずですが?」
急に流暢になるフローラ。
そこにいるのはいつもの元気ハツラツな少女ではなく聡明な女性だ。
「理由は?」
「深い意味はありません。追われている身である私にとってはそちらの方が都合がいいからです」
フローラ曰く、自身は遠いところにある国の没落した貴族の令嬢とのこと。家を立て直すためにはここで好成績を収めた方が良いがあまりに目立つと目をつけられる。そのため今の自分を演じているらしい。
「そうか。なら次だな」
「え? ちょ、えぇ……? そ、そのまま見逃していいんですか?」
フローラは思わず聞いてしまう。
「え? 別にいいだろ。俺に直接害が加わるわけでもないし」
「……そうですか。ありがとうございます」
「あ、でもしっかり勉強はしておけよ。特に戦術に関してはお前が一番必要だからな」
「もちろんです」
そうしてフローラとの面談は終わる。
部屋から出る瞬間にフローラはいつものような年相応の少女の態度に戻る。
「マリーさん! 次は貴女デス!」
そうしてマリーが入れ替わりで入ってくる。
「あの……、先生。話っていうのは……?」
「まあ、とりあえず座れ」
マリーに座るように促してからマリーをじっと見る。
やっぱり水神霊ネレイドが憑依しているな。
「あの……、な、なんですか……?」
マリーが目を少し背けながら聞いてくる。
さすがにじっと見すぎたようだ。
「いや……、水神霊ネレイドについてなんだが」
「!? な、何でそれを……?」
「どこで憑依した?」
マリーは少し悩んでから自白し始める。
「私には……、前世があります。信じれないかもしれないけどっ……、本当なんです!」
「担当はリーインだったろ?」
「えっ……!? 何でそれを……?」
リーインは転生神であり俺が現職の神だった頃も転生神をしていた古き神の一柱だ。
「リーイン様が……、『異世界に転生するならチート能力はつけないとねっ!』って言ってて、それで……」
あれ? あいつはそんな奴じゃなくてもっと生真面目で引くくらい公平な神だったが……
「そ、そうなのか……。まあいい、これで終わりでいいぞ」
そうして個人面談は終わったのだった──
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テミスは神を緊急招集していた。
と、言っても招集したのは一柱のみ。
「なんや? 緊急招集なんて珍しいやないか」
入ってきたのは糸目のひょうひょうとした長髪の男だ。
ライムの美しい銀髪をそのまま伸ばしたような髪はシルクより滑らかだ。
「遅いですよ? 舐めているんですか?」
「それはワイも悪いと思ってんねん……って! まだ集合の十分前やないか!」
男の名前はネルガル。
ライムが現職の神の頃から冥界を治めている最古の神だ。
ライムがいない今では誰よりも強いだろう。それこそテミスよりも。
「で、今日はなんの用や?」
「先輩が解雇されました」
「ほ〜ん。で?」
ネルガルは明らかに興味がなさそうだ。
「一大事ですよ!? 先輩がいなくなったら誰が抑止力に──」
「ワイがおる」
ネルガルの言葉は傲慢に聞こえるかもしれないが事実だ。
ネルガルは“冥界の神”故にどんなものでも殺せる。
例えそれが概念だろうが、事実だろうが、はたまた能力だろうが、何でも殺せる。
「話しはそれで終わりやな? ワイ、まだ仕事が残ってるさかいおいとまするわ」
「エレシュさんとイチャつく何が仕事ですか?」
エレシュとはもう一人の冥界の神であるエレシュキガルの略称だ。
テミスはエレシュキガルと仲がいいのでそうやって略して呼んでいる。
ちなみにネルガルがあまり冥界から出てこないのは基本的にエレシュキガルに拘束されているからだ。
「それ以外にもあんねん。ほな」
そう言ってセネガルは虚空に扉を開く。
その先の光景は荒んでおり、死者の世界だ。
ネルガルが行ったあと、テミスがひとりで考えていると、背後に気配を感じる。
「何ですか? まだ何かあったの── カハッ…?」
テミスが見た光景は自分の腹に何者かの手がめり込み、鮮血が流れているものだった。
「……何者ですか」
出てくるのは掠れた声だ。
そうしながらテミスはネルガルに救難信号を出す。
(早く来てくれるといいですが……)
現在、テミスは能力や力をどんどん吸われて抵抗できなくなっている。
下手をすると執行神の能力まで奪われるかもしれない以上、祈るしかない。
すぐに頭にくる声が聞こえてくる。
「何やねん。暇やないって言ってんねんやろ。ええかげんに──」
状況を見た瞬間にネルガルは大鎌を構える。
死者の怨嗟さえも飲み込み殺し去る死の大鎌、禍々しくも神々しい黒い光を放っている。
「テミス、離せや」
ネルガル
略称:なし
種族:神 性別:男
髪色:銀髪 瞳色:紫(糸目でほとんど見えない)
髪型:長髪、エレシュキガルのお陰で整っている
身長:187cm 体重:71kg
年齢:世界とだいたい同じ
一人称:ワイ 二人称:自分
ライムを呼ぶ時:ライム
好きな食べ物:キノコ類
嫌いな食べ物:春菊
ライムに次ぐ最強。神の中でもずば抜けて強く、相手になるものはほとんどいない。冥界の神であり、エレシュキガルとは恋仲。基本的にエレシュキガルと一緒にいるためあまり冥界から出歩かない。(勝手に行くとエレシュキガルが亡者を使って呼び戻そうとするから)
〜裏話〜
「ネルガル様……、本当に行くんですか?」
「ああ、しゃあないやろ。仕事なんやからな」
エレシュキガルはギリギリまで粘っていた。
「……、なら、15分以内に帰ってこなかったら呼びに行きますからね? わかりましたか?」
「わ、わかった……。そうするわ。ほな、ちょっと行ってくるわ」
エレシュキガルはこっそりと目玉の亡者に追尾させて監視させた。
セネガルずっと出したかったんですよねぇ……。
一番喋らせやすいかも?