第二十一話 ギルドマスター
更新頻度が上がり始めました。
つまりまた下がるかもしれません。
気をつけます。
「どうなってるんですかー?!」
ギルドの受付でカナは叫んでいた。
テーブルには大恐海蛸子の討伐証明部位である肝臓が山積みにされている。
「1、2、3──ええと、とにかくいっぱいありますね」
サリアが数えようとしたが途中で諦めてしまった。
ぱっと見90個くらいありそうだから数える気も失せたのだろう。
だが、俺は大恐海蛸子よりも滅死凶邪海竜の方を見てもらいたい。
滅死凶邪海竜ほどになれば換金したときにとんでもない額になりそうだ。
金はあって困るものじゃないしな。
「えっと、大恐海蛸子の肝臓が87個で依頼は達せ──」
「待ってくれ。本当に見てほしいのは別のものだ」
カナがもう話を終わらせそうだったので止める。
「別のもの?」
「ついてきてくれ」
「わかりました」
俺が踵を返してギルドの外に出ようとするとカナも受付から出て付いてくる。
サリアが小走りで寄ってくる。
「ライム様、別のものとは?」
「まあ見ておけ」
人目につからない路地に着いてから神判の宮殿に転移する。
「こ、ここは?!」
カナが驚いているが気にせず滅死凶邪海竜の死体を出す。
「これだ」
「……」
「滅死凶邪海竜か」
ニグ以外は驚いて絶句している。
「滅死凶邪海竜…… あの伝説の?!」
「そうだ」
カナが代表して聞いてきたので素直に肯定する。
「ギ、ギルドマスターを呼んできます……」
カナは自分だけではどうにもならないと考えたのかギルドマスターを呼ぶと言うので俺はギルドに転移させる。
「ここで待っていて下さい」
「わかった」
俺たちはギルドの応接室に入れられて待たされる。
そして数分すると扉が開いて男が入ってきた。
茶髪に水色の瞳。そして服が裂けそうなほどに筋骨隆々な大男だ。
「お前らが滅死凶邪海竜を討伐したってやつか?」
「あぁ。そういうあんたがギルドマスターなのか?」
「おうよ。ギルドマスターのマーズだ」
やはりあっていたか。
冒険者ギルドの最上位の人間にぴったりな容姿をしている。
「で、その滅死凶邪海竜を見せてくれないか」
「もちろんだ」
そう言って俺はまた神判の宮殿に転移する。
滅死凶邪海竜を見ると流石のマーズでも絶句した。
だがすぐに我を取り戻す。
「残念ながら俺は滅死凶邪海竜を見たことがない。だが、滅死凶邪海竜と同程度の脅威であるのはわかる」
「どうしてそんな事がわかるんだ?」
死体だけで危険度を推し量るのは難しいことだ。
俺みたいに滅死凶邪海竜を見たわけでは無いのだからな。
「俺の目は特別なんだ。“旧時の眼”と言って見たものの過去を見ることができるんだ」
「つまりその眼でこいつが生きている時を見たってことか」
マーズは不敵な笑みを浮かべながら頷く。
これは戦うと厄介になりそうだ。作戦を立てても過去を見られたら筒抜けだからな。
「ところで、これはどうするんだ?」
マーズは滅死凶邪海竜の死体に手を置きながら言う。
「買い取ってくれるか?」
「無理だな。どれだけの値をつければいいのかもわからん」
予想外の言葉が返ってきて少し困惑している。
だが、買い取ってもらえないなら──
「じゃ、この死体はもらおうかな。鱗は防具なんかにも仕えるし」
「それがいいだろう」
マーズも納得してくれたようだ。
しかし、それだけでは終わらなかった。
「ライムといったな。お前さんのランクはSSSにしておこう」
「あぁ。それで頼── なんて?」
「今日からお前さんはランク昇格でSSSランクだ。俺は実力者が不相応なランクなのは嫌いだから、絶対だ」
絶対を強調するあたり引き下がる気はないだろう。
地位が上がるとできることも増えるがその分狙われやすくなる。
ここは慎重に──
「これでお前さんはSSSランクだ。だがいつも通り冒険者をしてくれればいい」
俺の冒険者カードが光り輝きSSSの文字が表示される。
「は? 受付で変えるんじゃないの?!」
思わず声を出してしまう。
「どうやらしっかり見てなかったようだな。冒険者カードは俺のさじ加減でランクを変えられるんだ」
まさかそんな能力があったとは……。これからはしっかり確認しよう。
「ランクは上がって困ることじゃないし気にするな!」
マーズは豪快に笑いながら俺の背中を叩いてくる。
痛くはないはずなのになぜか痛い気がする。
「わかったからやめてくれ」
「む? おお、すまんすまん」
マーズもやめてくれたことだし滅死凶邪海竜の死体を再び倉庫に戻す。
「にしても、お前さんは転移魔法も仕えるのか。ホルストが言っていた通りのようだな」
「ホルストを知っているのか?」
「もちろんだ。俺は昔あいつとパーティーを組んでいたからな」
どうやら話を聞くとホルストとマーズは文通をしていたらしく俺が来ることを事前に聞いていたようだ。
もっとも、信じることができずにいたらしいが。
「お前さんをみているとすべて本当なんだったと思い知らされるよ」
そんな人を化け物のような……。
「お、そうだった。お前さん宛にホルストから手紙をもらっているんだ」
マーズから手紙を渡される。
やぁライムくん。突然なんだけど教師をやってみないかい? 実はライム君たちが出ていったあとにAクラスになった子たちに物を教えれる教師が不足していてね。その子たちがSクラスになるまででいいんだ。それにまだ卒業証書もらってないだろ? サラスには上位クラスの生徒が下位クラスの生徒の教師になる制度もあるから頼むよ。じゃないと卒業証書あげないからね。
確かに卒業証書はもらってなかったな。
俺だけなら大丈夫だがサリアやルディはないと困るだろう。
これは受けるしかないのかもしれない……。
「ライム様、これは受けるしかないのではありませんか?」
手紙を背伸びして覗き込んでいたサリアが聞いてくる。
「そうだな。受ける他ない」
「まぁそういうことだ。ここからはギルド関係者は要らないだろうから帰るぞ」
マーズはカナと共に転移してギルドに帰っていく。
「まって、じゃあ私卒業してないのに卒業祝いを提案したの?」
リアのとぼけた声が聞こえるがそのとおりだ。
あの時本当はまだ卒業してなかったんだな。
キャラ紹介
マーズ
略称:なし
種族:亜神 性別:男
髪色:茶 瞳色:水色
髪型:オールバック
身長:199cm 体重:98kg
一人称:俺 二人称:お前さん
ライムを呼ぶ時:お前さん
昔ホルストとパーティーを組んでおりポジションは前衛。
〜裏話〜
ホルストは悩んでいた。
最近転入してきた生徒たちが優秀だが問題児だからだ。
(正直、教えることはほとんどないんだよね……)
その生徒たちに物を教えることができる教師がいない。そのためその生徒たちも増長しているのだ。
(ここは過去のSクラスに頼ることにするかな……)
そう思ってホルストは生徒履歴を見ていた。
そして見つけた。
現役Sクラスであるためホルストも声をかけやすい人物が。
(お、今日はついてるかも?)
そんなことを考えながら手紙を書き始める。
今回は筆が乗ったから早く更新できましたが普通はこうじゃないので覚えておいてください。