第十九話 海!
良ければ評価をお願いします。
俺アルメリア王国のギルドに着くとサリアたちとは別れて受付で成功報告をしていた。
「こちらが報酬の銅貨8枚です」
カナさんが受付のテーブルに銅貨8枚を置く。
「次はこの依頼を受けてもいいか?」
俺は次の依頼書を見せる。
「“大恐海蛸子”討伐…… これってAランク、しかも昇格依頼じゃないですか?!」
昇格依頼とは達成することでその依頼の推奨ランクの次のランクに昇格される依頼だ。
今回でいうとAランクの依頼なので達成するとSランクになることができる。
「駄目です! 危険すぎます!」
カナさんは断固反対のようだ。
「だが俺はSランクの依頼から生きて帰ってきたぞ?」
俺は冥府の牢獄の調査の依頼について言う。
「ですが──」
どうやらまだ納得してないらしい。だがそんなとき、一人の女冒険者こちらに来た。
「ならば私も同行しよう!」
金髪をきれいにウェーブにした女性が自信満々に声を張り上げる。
「リミアさん…… ですが──」
「私はSランクだが不満なのか?」
「──わかりました」
どうやらこのリミアという女性がはSランクの冒険者らしい。
カナさんも折れて了承してくれた。
「感謝するよ」
「保証人として見るだけだ。手助けはしないぞ?」
俺の感謝に不敵な笑みで返すリミア。
なかなかいい性格をしてそうだ。
「場所はヒメルド海沿岸だ。私は先に向かっておくぞ」
そう言い残してリミアは先にギルドを出ていく。
「──って言うことがあったんだ」
俺は先程あったことを素直にサリアたちに話す。
「ならば水着を用意しなければな!」
ニグは楽しそうに笑う。
神龍からしたら大恐海蛸子の討伐など遊びでしかないのだ。
「法廷の収納庫にあるから取りに行くぞ」
俺は転移門を創り出す。
転移門とは転移魔法を刻印した門であり、この転移門の行先は法廷だ。
俺達は転移門をくぐり法廷の収納庫から水着を選ぶ──
「どうしてもういるんだ?」
リミアの呆けた声が美しい沿岸に木霊する。
俺たちは法廷に乗って移動してきた。
法廷の移動速度には上限はないので俺たちのほうが早いに決まっている。
だがリミアはそんなことを知らないため自分よりあとに出発して先について遊んでいる目の前の光景に理解は追いついていない。
「というか──そもそもどうして水着なんだ?! 防御力はどうした?!」
リミアは必死に訴えている。
「? 当たらなければ問題はないとは思わない?」
リアは当たり前の事かのようにリミアに問い返す。
「それはそうだが──」
「来たぞ!」
俺はこの場にいる全員に聞こえる声で言う。
沖合には大きな渦が生まれ、一匹のタコが出てきた。
20mほどの黒い体に生えている8本の足には大きな吸盤がついている。
大恐海蛸子だ。
「私が──」
「待てルディ! お前の火力だと食べる分がなくなるじゃないか!」
[は?]
ニグと俺以外の全員の声が綺麗にハモる。
なんだよ?! 大恐海蛸子は滅茶苦茶美味いんだぞ?!
「ニグ、できるな?」
俺はニグを見る。
「もちろんだとも!」
ニグは戦闘態勢に入る。
「言霊」
ニグその言葉と同時にニグの口元に魔法陣のようなものが浮かぶ。
「“死”」
ニグの発した“死”という言葉で大恐海蛸子は命の灯火は消える。
ニグは呪術という特別な術を使う。
その本質は魔法でも魔術でもないためそれらでは防御不可能。
さらに物理的な影響も受けないので防ぐためには同じ呪術を使うしかない。
ニグが使った言霊の“死”は防ぐことができなかったらたとえ神であろうとも死に至る。
条件はなんてものはない。
「終わったぞ!」
「お前は馬鹿か!」
俺はニグにげんこつする。
「なぜだ?! ちゃんと味を落とさずに殺したぞ!?」
「俺が防御しなかったら他の奴らも巻き込まれてただろうが!」
「あ」
先程の言霊の効果範囲は俺たちも含まれていた。
俺が防御しなかったら全滅だっただろう。
そしてニグはそれについて全く考えてなかったようだ。
「すまなかった……」
ニグ涙目で顔を伏せて謝ってくる。
うっ?!
「──次から気をつけろよ」
俺はつくづく甘い。
「わかった!」
頭ではこれはニグの策略だと理解している。だが、だからといって無下にはできないのだ。
「やっぱりロ──」
「さあ! 腹も減っただろうしご飯にしようか!」
ルディの声を遮ったのはここにはリミアもいるので変な誤解を持たれないためだ。本当に。
俺はジト目のルディを無視して大恐海蛸子の死体を回収する。
「食べれるんですか?」
「もちろんだ。少し待ってろ」
俺は急いで大恐海蛸子を法廷に持っていく。
決して逃げたわけではないので安心してほしい。
「まだなのか?!」
「なんだよニグ。待ってろって言っただろう?」
厨房にはしびれを切らしてニグが乗り込んできていた。
「遅いぞ! 早くしろ!」
ニグは聞く耳をもたない。
「今できたところだから持っていってく──いや、俺が持っていく」
俺はニグに頼もうとしたがやめた。
ニグに持って行かせたら途中で半分くらいになりそうだ。
俺は全ての料理を異空間収納に放り込んでサリア達のところに行く。
「またせたな」
俺は創造魔法で机等を出してから料理をおいていく。
「伝説の創造魔法がこの様に使われるとは……」
何かリミアが言っているが気にしない。
今回の料理は主に刺し身。
後は酢の物とかタコの唐揚げ、アヒージョとその他。
サリアのためにもわさびも用意する。
「本当に大恐海蛸子を食うのか?」
リミアは信じられないといった顔をしている。
「食えるって言ってるだろ?」
「ライムは魔物が好きなのだ!」
「好きってまではない」
ちょっと目を離せばニグは誤解をさせようとする。
「食べてみろよ」
俺はリミアに刺身が乗った皿を渡す。
「な、生で食べていいのか?」
「生で大丈夫だ」
リミアはサリア達が食べているのを見て覚悟を決めた。
「美味しい……?」
リミアは初めて食べる大恐海蛸子に困惑していた。
コリコリとした食感の淡白な味はショウユという調味料の味によって昇華されている。
「大恐海蛸子は美味いんだよな〜」
俺も刺し身を食べる。
ある程度食べると俺はエリスとニグとともに少し先の海岸に来ていた。
今はエリスとニグは小龍形態で俺の両肩に止まっている。
なぜそんなところに来ているかと言うと敵対反応があったからだ。
また、大恐海蛸子は海域の守護者である“護海龍”の好物であり、おそらく俺達が狩った大恐海蛸子は獲物だったのだろう。
「そろそろでてこいよ!」
俺は海に向かって叫ぶ。
「我の食物を奪いし人の子よ。死の覚悟はできているのだろうな?」
海からでてきたのは手足のない中東の龍の形をした青い龍だ。
そしてまだ体の半分以上が海中だろうに体の大きさはゆうに30メートルを超えている。
通常は全長15メートルほどなのを考えると永い時を生きた護海龍なのがわかるだろう。
「母なる海の中で懺悔しながらあの世へ行くがいい!」
その言葉を開始の合図として護海龍との戦闘が始まった。
キャラ設定
リミア
略称:なし
種族:聖人 性別:女
髪色:金髪 瞳色:金 髪型:ウェーブ
身長:184cm 体重:58kg バスト:D
年齢:25歳
一人称:私 二人称:おまえ
〜裏話〜
みんなで水着を選んでいるとき──
サリアが選んだのは黄色のフリルが付いた可愛い水着だ。
なぜそんな物があるかって?
俺もいつからあったのかはわからない。
ルディは赤いビキニでエリスは白のビキニ。
ニグはサリアの水着の色を黒と紫に変えた感じの水着だ。
そしてリアは──
「リアは陽の光は苦手なんじゃないのか?」
俺はついリアに聞いてしまった。
リアが選んだのは普通の黒いビキニ。
だが、普通ということはがっつり陽の光に当たるということだ。
「私ほどになれば陽の光は弱点じゃない」
俺の記憶ではもっと古くから生きる吸血鬼じゃないと危なかったはずなのだが、どうやらリアは特別らしい。
「ちょっとピリピリするだけ」
「やっぱ駄目じゃねーか?!」
どうやら俺の記憶は間違っていなかったようだ。
「別にそのくらい大丈夫」
リアはムッとした顔で反論してくる。
まあ本人がいいならいいだろう。
「それじゃ、もう着くから準備しておけよ」
ちょうどヒルメド海沿岸に到着した。
今回いつもより多く分けています。
こちらのほうが区切りをあまり意識せずに書くことができたのでこれからこのくらい分けていきます。