第二話 出会い
すきま時間がなかなかない……
爆発の起きた方までは到着した。
その場にいたのは体長4mは超えてそうな茶色の熊と、豪華な馬車、そして女騎士だ。
よく見ると熊の腕の毛先ではチリチリと小さな爆発が起きている。
爆発音の原因はあの腕を高速で振り回したことにより、爆発が激化したからだろう。
(……豪華な馬車、何かしらの権力者の関係か。助けて損はない)
俺が今いるのは何万、いや、何億とある世界の一つだ。
当然俺もここがどのような世界かは見当がついていない。そんな世界では権力者とコネクトを取ることは大事だ。
(毛皮の爆発で外側からの攻撃は通りにくい、ならば内部から壊す)
走っている勢いを落とさないまま手のひらの下の方を突き出して熊の心臓があるであろう場所を突く。
いわゆる掌底と言うやつだ。
掌底は内部に衝撃を与えやすい。本来は顔に打つのが最も効果的だが、あの速度で打てば内臓のいくつかは破裂するだろう。
予想通り、熊はそのまま息絶えたようだ。
爆発も止まっているし、息も感じられない。
「何者だ……?」
女騎士はこちらに剣を向けてくる。
あちらからしたら苦戦していた魔物を見ず知らずの奴が急に倒したのだから、かなり警戒されている。
「ああ……、えっと……。この先に向かう途中だ」
《この先》それはトップレベルに使いやすい言葉だ。どこへ行こうとこの先と言えばやり過ごせる。
「……この先か。それは学園国家ムサミューズのことだな?」
「そう。そこだよそこ」
「見たところ15歳ほどだな。ならば合点が行った」
女騎士は緊張がほぐれたようだが、ハッとした顔をしてすぐに馬車へ向かった。
「ご無事ですか!? 姫様!」
馬車の扉を開けると、一人の女の子がうずくまっていたが、こちらに顔を向けた。光のような金髪に紫色の瞳。15歳ほどだろうか。
「外はもう大丈夫なのですか? フォルム?」
どうやら女騎士はフォルムと言うらしい。
「はい こちらの方のおかげで」
「し、失礼しました! 私はサリア・フォン・フェイルです。あの、お名前は……?」
「ライムと呼んでくれ。それより、なんで護衛一人で?」
俺が聞くとフォルムが答える。
「サリア王女もムサミューズに向かう途中なのですが国王が反対していて……」
「それで抜け出してきたと」
俺が続けるとフォルムが頷く。
親との対立で家出みたいな感じか。
まあ、この年ならそういうこともあるだろう。
「申し訳ありませんがムサミューズまで護衛を頼まれてくれませんか?」
「問題ない。もちろん、確実に守れるとは言えないが」
俺が一応の保険を付け加えておくと、フォルムが笑いながら言う。
「B+ランクの魔物を素手で倒す人はそんなこと言えませんよ」
「そ、そうだな……」
ランク……、おそらくは魔物などの強さを表すものだろうが、基準はわからない。
「その──」
「あっ、馬車動かしますね」
ランクについて聞こうとしたが、フォルムは思い出したように御者席に向かう。
「ライム様は馬車の中へどうぞ」
サリアに呼ばれる。
そうだな、サリアに聞くか。
「そういえばランクって?」
馬車が動き始めると、俺はランクについて聞く。
「ご存じないのですか?」
サリアは驚いたようだ。俺は小さく頷く。
「ランクというのはF〜SSSまでの魔物の強さです F〜Dまでは冒険者で倒せますがそれ以降は違います Cランクは聖騎士級 Bランクは聖騎士小隊級 Aランクは一国の軍に相当してそれ以上は災害に分類されます」
また新たな疑問が湧いてくる。
「じゃあ+とかは何なんだ?」
「ほ、本当に知らないんですね……。+や-は勝率を表します -は六割以上の確率で勝つことができ+は四割以上の確率で勝つことができます」
なるほどな……しかしそう考えると俺は化け物じゃないか。
そうこうしながら雑談を交わしているとフォルムの声が聞こえる。
「もうすぐムサミューズに着きますよ」
窓の外には高い外壁に囲まれた都市が見えてくる。
あれが、ムサミューズか
今回もキャラデザ書いておきます。
サリア・フォン・フェイル
身長159cm 体重39kg
Aカップ
おとなしい性格だが、自分で決めたことはしっかりする強い意志を持っている。
フォルム
174cm 50kg
Eカップ
フェイル王国でも1、2を争う実力者。サリアの専属の護衛をしており、どんなことにもサリアの意志を尊重する。
追記:改修しました10/4