第十二話 使徒の訓練3
少し下ネタが含まれているので苦手な方は気をつけてください。
─サリア達の特訓────────────
「“影滅の光”!」
サリアの魔法により的は消え去る。
“影滅の光”は対象を影とし全方位から光を浴びせることで影が消えるように対象を消す魔法だ。
「“逆戻り” 次はミルディアね」
「もちろんよ! “慈悲の焼滅”!」
“慈愛の焼滅”は灼熱で心すらも燃やし尽くす魔法だ。
どちらも上位魔法であり、ここ数時間でかなり上達していることがわかる。
「十分だね。 それじゃあ戻ろうか」
「でも私達の魔力制御はまだ完璧じゃないですけど……」
「でも的を壊すことはできたでしょ? 目標達成だよ」
どうやらパスはこれ以上訓練を続けるつもりはないようだ。
パスを追いかけ二人は元の空間に戻る。
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─サリア達が帰ってきて─────────
「これはどういうことですか?」
「いやほんと…… 特訓してただけで……」
俺は正座してサリアの説教を受けていた。
事の発端はサリア達が帰ってきたときにエリスが気絶して倒れていたことだ。
しかもエリスの顔は赤く、激しい訓練のせいで汗だくで呼吸も服も乱れいていた。
それを見てサリアが誤解したのだ。
ルディは見た瞬間に顔を赤らめて附してしまった。
今も
「ライムが…… えぇ? ほ、ほんとに?」
とかいっている。
パスは我関せずを貫き通している。
そして俺は正座している。
「ライム様、私の目を見て話してくださいね〜? 何してたんですか〜?」
「特訓してました」
「特訓ですか〜?」
あっ……
また勘違いされた。
「エリスを起こせばわかるから!」
俺はなんとかしてこの場を切り抜けようとエリスに回復魔法をかけて起こす。
だがそれは悪手だった。
「やめてください! 痛いです! もう無理です〜!」
「…………」
「ライム様〜?」
サリアのこめかみに血管が見える。
ここで下手なことを言ったら俺は終わる。
「エ、エリス? 俺何もしてないよな?」
「何言ってるんですか?! 痛かったんですよ! それにやめてくださいって言っても続けたじゃないですか!」
(俺死んだ……)
「少しお仕置きをしましょうか?」
サリアに掴まれ俺はサリア達が訓練していた荒野に連れて行かれる。
「ライムが逆らえない相手なんて…… 珍しいな〜」
いつの間にかパスはヒューに変わっていた。
「大丈夫だよミルディア。ライムはそんなことしてないから」
「ほんと……?」
「パスの力を使って調べたから絶対だよ」
ルディはやっと落ち着いたらしい。
「もしかして私のせいですか?」
エリスはやっと今の状況がわかったらしい。
一方でヒューは今頭をフル回転させていた。
(ここでライムに恩を売っておくのもいいけどそうしたらサリアに絡まれ状況が悪化する可能性がある)
天然なことで勘違いされやすいがヒューは頭が良い。
(う〜ん…… 自分より強いものの未来が見えないから考えるしかないよね……)
未来を見ると言っても万能ではない。
自分より強いものの未来は見ることができないのだ。
変わりにそれ以外の制約はなにもないが。
《ヒュー。ライムの未来が見えなくてもサリアの未来は見えるでしょ?》
(そうだね。見た感じは大丈夫そう? ライムが何か変なこと言ったら変わるけど)
《多分大丈夫だと思うよ。ライムも気づくだろうし邪魔なんてしないと思うから》
納得したヒューは荒野に向かう。
「ライム様〜? 正直に言ってくださいね? 何してたんですか?」
「本当に訓練してただけです……」
そろそろ死にそうなんだが……
「サリア! 何があったの?」
ヒューが来た。
(これ以上複雑にするな〜!)
本格的にやばくなってきた。
(待てよ…… パスの経験したことはヒューにも共有される。つまり助けが来たんだ!)
目頭が熱くなってきた気がする。
ヒューはこの場面を切り抜ける方法があるようだ。
だよな……?
「とりあえず一回はなれて落ち着こうか」
サリアから事情を聞いたヒューは俺とサリアを離す。
「サリア、さすがにそれは干渉しすぎだと思うよ?」
「え?」
ライムが離れて開口一番に言われた言葉をサリアは理解できずにいる。
「もしサリアが恋人とかなら仕方ないけどサリアとライムは違うでしょ? なのに干渉するのはよくないんじゃないかな?」
要するに恋人でもないのに恋愛事情に関与するなということだ。
「そ…… それはっ…… でも私は!──」
「それはサリアの一方的な気持ちだよね? サリアは確かにライムが好きなのかもしれないけど、それを押し付けちゃ駄目だよ」
ヒューの正論の嵐を受けるサリア。
いつしかサリアの目には大粒の涙が浮かんでいた。
「サリアにとっては恋愛対象かもしれないけどライムにとってそうかはわからないよ?」
さらに畳み掛けるヒュー。
サリアは泣き出してしまった。
だが、これは策略の内だったのだ。
「でもねサリア、あなたはライムにとっても特別な人だと思うよ。じゃないとライムはここまで構わないからね。」
「でも…… でもっ!」
「それにライムは本当にエリスに訓練してただけだよ。これはパスの力を使って調べたから絶対に絶対。」
「えっ……」
これぞヒューの奥義、下げて上げるだ。
一度下がった後に上がると事実以上に上がったような感覚になることをヒューは熟知していた。
ヒューは人心掌握に適しているのだ。
そこでサリアはさらに泣き出してしまった。
「わたしっ…… 嫌われましたよね…… 話を聞かずに一方的に自分の気持ちを押し付けて……」
キタッ
とヒューは思った。
「誰にだって勘違いはあるよ。それにライムはそんなに怒ってないよ」
「え……?」
「ライムは自分を責める…… もうあれは趣味のレベルだね。そんなとこがあるから今頃エリスに厳しくしすぎたのだ誤解させたので怒っているのは自分に対してだと思うよ」
それはなんとなくサリアにも理解できた。
「それにライムは自分のことではあんまり怒らないんだ。何か自分以外の大切なものがライムの逆鱗でね、今回はそれを触れたのは自分だから自分を責めてると思うよ。」
それは正解だった。
その時ライムは
(やっちまったな…… どうやって謝ろうかな…… なにかお詫びの品でも……)
と考えていた。
「ライムはしっかり謝ったら許してくれるよ」
「──わかりました」
「ライム様」
「サリアっ?! さっきはご──」
「勘違いしてすいませんでした」
サリアに頭を下げられる。
「──俺の方こそ誤解されるようなことしてすまなかった。」
俺も頭を下げる。
「ライムが頭下げてる……」
聞こえてるぞヒュー。
だがヒューは命の恩人だ。
「戻るか」
「そうですね」
「やっぱり仲良しが一番だよね!」
ヒューがそう言っている頃にはもう俺たちは出口にいた。
「えっ?! ちょっとまってよ〜!」
ヒューも走って追いかける。
〜裏話〜
これはエリスの訓練内容
「しっかり避けろよ!」
「避けれませんよ!」
俺の声にエリスが反応する。
俺が使っているのは“電気魔法”だ。
今は強制的に神経に電気信号を流させて痛みを与えている。
さらにそれで動きが制限された中で俺の魔法を避けさせている。
「痛っ?! んぅっ!」
エリスの叫び声?
キコエナイナ
「反撃でお前も魔術使え!」
「集中せずに使ったら暴走して死にますよっ?!」
「死んでも蘇生するから大丈夫だ!」
それでも使わないので強制的に魔術を使わせる。
「本気で制御しないと死ぬぞ!」
「そんな事言われても〜!」
エリスの泣き顔?
ミエナイナ
そんな訓練をしているとエリスは倒れてしまった。
「これで10回目か……」
さすが体が持たないだろうから起こさず休ませる。
そこへサリア達が帰ってきた。
気分によって度合いは変わりますがR15(できれば13)のラインは超えないようにするのでどうかお許しください。