第十一話 使徒の訓練2
今回はいろいろな視点があるのでわかりにくいと思います。
すいません
─サリアたちの特訓───────────
「ライムから言われたことは的を壊すことだよね?」
「はい」
「早くやっちゃおうか。まず得意な属性教えて」
「私は光属性です」
「私は火属性」
サリア達がパスに連れてこられたのは荒野だった。
「それじゃあまずお手本見せるね」
何事もないかのように的を200mほど先に複製する。
「“聖鐘”」
「えっ?!」
放ったのは初級も初級の光魔法。
だが、創られた的は粉々になる。
「どうしたの? “祝聖鐘”でも完全な魔力制御をすればこのくらいはできるよ?」
「そ、そうなんですか……」
「“逆戻り”」
吹き飛んだ破片の時間が戻り、的がもとに戻る。
「次は火属性ね。“火炎”」
次に放ったのも初級の火魔法。
だが、的を溶かすには十分の熱だった。
「これくらいはできるようになってもらうね」
「「…… はい」」
憂鬱な気分の二人にパスからの指導が始まる。
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─エリスの特訓─────────────
「なかなかいい魔術だぞ」
エリスの魔術を受けたライムは無傷だった。
「これでも無傷なんてどうなってるんですか?!」
「単純な肉体強度だ」
エリスは手を地面につける。
「なら、“多色魔術 黄”」
地面が脈打ち俺に迫る。
(多彩だな)
そんなことを思いながら地面から出てきた針をはたき落とす。
「それなら! “混沌色 橙”」
先程のように地面が脈打つが、これには“赤”の性質も含まれていた。
(おそらくはどんなのでも混ぜれるんだろうな)
魔術だろうが魔法だろうが普通混ぜようとすると拒絶反応を起こす。
この魔術は抵抗がほぼないからどんな色にもなる。
使い道は色の数だけあるのだ。
(本当にいいモノもってるな)
だが、またはたき落とすだけだ。
「どうなってるんですかっ?!」
「さあな?」
エリスは予想はしていたらしいがいざ実際に見ると信じられずにいた。
「“混沌色 暗深緑”!」
(お、明度や彩度まで決めれるのか)
俺の体に暗緑色のツタが絡まる。
(ちぎれないのか)
このツタは切れた瞬間に再生し、元の形に戻る。
つまるところ抜け出すのがめんどくさい。
「混沌色 純色紫」
至近距離でエリスが撃ってきたのは紫。
(狭い範囲だが空間ごと消滅させるのか)
もちろん俺には効かないが。
要するに消された瞬間に戻せばいいだけだ。
エリスは距離をとる。
「“混沌色 明色赤” 三重!」
ペールトーンの赤い光線が複雑に入り乱れ俺を狙う。
(威力を下げ速射性を上げたか)
つまり、囮だ。
ここで俺はあえて何もしない。
複雑に入り乱れた光線に紛れてエリスは俺の背後に移動していた。
「“混沌色 灰”」
全ての色を混ぜると黒ではなく灰に近い色になる。
全ての特性を持っているエリスの必殺技だ。
出てきたのは灰色の霧。
だが、その粒子一つ一つが魔術陣であり囲まれるのは魔術陣に囲まれるのと同義だ。
深い霧は多彩に輝き魔術が同時多発したのが見てわかる。
「これなら流石に── ぇ?」
エリスはこの技に絶対的な自信を持っていた。
ライムでさえも倒すまではいかないも深手を負うくらいの威力があると考えていた。
だがライムは無傷だった。
肩をはたきながら今の魔術について評価する。
「なかなかに良かったぞ。汎用性、威力、速射性、変則性、全てにおいてかなりのレベルだ。」
その言葉に他意はない。
「とは言ってもまだ魔術だ。俺には届かない。それに少し器用貧乏なとこがあるな。」
そう、これらはすべて魔術の域を超えていない。
「降参です……」
悔しそうにエリスが言う。
「十分に強かったぞ」
「ありがとうございます」
少し訓練を積めば更に強くなるだろう。
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〜裏話〜
─ヒューが召喚される前─────────
「本当なの?!」
目の前のティファに向かって私は叫ぶ。
「え? えぇ。そうよ」
ティファは困惑しているようだ。
《ヒュー。これはちょっと不味くない?》
パスもかなり焦っているようだ。
「気をつけてね。危ないから」
「え? うん」
ティファはまだ理解できていない。
新神だから仕方ないがかなりまずい状況だ。
創造神は強力な力を持ち、強奪神や強欲神などから常に狙われている。
それらを影で抑え、表でも最強の使徒として抑止力となっていたのがライムなのだ。
そのライムがいないとなるとティファは狙われるだろう。
基本的に神しか天界には存在することはできない。
神が召喚した場合は別だが今のティファにはライムを召喚することはできない。
ライムなら抜け道をいくつか持っているだろうがもし見つかるとすぐに修正されて使えなくなる。
(本当にやばくない? 創造神ってポテンシャルが最高クラスなのに)
経験が浅いティファでは太古の昔から居る神に抗うことはできないだろう。
(なんとかしてライムを戻さないといけないけど……)
ティファが解雇したのはライムが心配だったから。
もしこの事実を話すと無理をさせないように絶対に再雇用しようとはしないだろう。
(ライムはライムで特に何も思ってないだろうけど……)
ライムは自分のことでは怒らないが他人になるとそうではない。
ティファが怪我したのを知ると最悪天界の結界を破壊して無理やり来たりするだろう。
(どうしよう……)
《ヒュー。召喚されてるよ。》
ヒューは考えを切り替える。
「じゃあねティファ! ほんとに気をつけてね!」
そう言うとヒューはその場を去る。
(あっ…… そういえばライムになんて謝るんだっけ?)
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普通に考えてエリスめっちゃ強くないですか?