第十話 使徒の特訓1
この特訓回は3つぐらい続けるつもりです。
ホルスト学院長の愚痴は長かった…… 本当に
小一時間かかり、俺に関係のないことまでずっと言われた。
「はぁ〜〜……」
俺は大きなため息をつく。
「だいぶ長かったですね」
エリスが飛んできて肩にとまる。
「永遠と愚痴言われたよ……」
なかなかにストレス溜まってきたな……
「サリアとルディは?」
「部屋で待っております」
「“八つ当たり”だ」
「え?」
ストレスを溜め込むのはよくないからな。
それにこれは俺の八つ当たりでもあるが急に扱える最大量が増えた二人には絶対に必要だ。
つまりWin-Winなのだ。
完璧だな。
え? エリスには必要ないだと? そこは、まぁ…… 強くなるに越したことはないからな。
「“転移”」
俺はサリアとルディをこの場に転移させる。
「え?」
「ここど──」
「“世界創造”」
逃げられる前に捕らえる。
60m四方の周囲が白くなり、体が浮く。
「えっ? 浮いて?!」
「新しい世界だからな、重力もなんのルールもない」
サリアの疑問に答えてやる。
「どうしてこんなところに?!」
ルディがスカートを押さえながら叫ぶ。
「八つ当たりだ」
「何か別の意図を感じるのですが……」
(うるさいぞエリス)
俺は笑顔でエリスを見る。
「えっと〜…… なんでもないです」
目をそらしながら答える。
それでいいのだよ。
「“条件追加”重力」
全員がその場に落ちる。
「イテテ……」
エリスと俺、サリアはうまく着地したがルディはもともとの体勢が悪かったので尻餅をついている。
「今から八つ当たりの時間だ」
俺は的を創る。
「サリアとルディはこの的を破壊、エリスは一旦俺と模擬戦だ」
淡々とやることを告げる。
「サリアとルディには特別講師をつける」
急に話が進んで全員の頭の上に?が浮んでいる。
魔法陣を二つ描く。
「過去を辿り、未来を創る神。相反する二つは重なり軌跡として道を示せ。召喚“ヒュパス”」
二つの魔法陣が輝きながら重なった一つの魔法陣の上に一人の白いワンピースを着た女が現れる。
空をそのまま映したような髪、その瞳は自由を示す大空のようだ。
「えっと、何ていうんだっけな、たしか……」
女はライムがいる逆方向を向いている。
「おい…… ヒュー」
ヒューはビクッ! とする。
「ひっ?! ライム?!」
「ちょっとお願いが──」
「ごめんなさいごめんなさい! 謝るから許して!」
ヒューは俺の足に泣きながら抱きついてくる。
「許すから離れろっ!」
俺はヒューを引っ剥がす。
「許してよ〜…… て、許してくれるの?!」
急に顔が明るくなって俺の手を掴む。
「顔が近い」
「え〜…… もうちょっとだけ、ね?」
「駄目だ、離れろ。命の保障ができなくなる。」
ヒューはすぐに離れる。
(相変わらず扱いやすいな)
その時、肩に手が置かれる。
「ライム様? こちらの方は?」
サリアが笑顔で聞いてくる。
(目が笑ってないんですけど……)
「特別講師をつけるって言ったろ?」
そう。特別講師とはヒューとパスのことだ。
「ヒュー、パスに変わってくれ」
「うん…… わかった」
端で縮こまっていたヒューの髪色と瞳色が空色から栗色に変わる。
ワンピースも足の方から司書風の服に変わる。
立ち上がると眼鏡を創りかける。
「久しぶり、ライム」
「やってほしいことがあるんだが、頼めるか?」
「その代わり許してくれるってことね?」
パスは相変わらず飲み込みが早い。
「そうだ」
「やることはこの二人に魔法や戦い方を教えること?」
「その通りだ」
「じゃあ行くよ、サリア、ミルディア。」
「え?」
「どうして私の名前を?!」
「驚くことじゃない。過去に起きたことはすべて把握している。痕跡の書は一人ひとり、一つひとつにある。」
パスは過去を司る。つまりそれら全てを知っているのだ。
これまでにあったことをすべてパスは把握している。
パス達は的を持って新しく作った空間に入っていく。
「さて、じゃあエリス。かかってこい」
しかしエリスは来ない。
「どうした?」
「だって私死んでしまいますよ!」
エリスが涙目で叫ぶ。
「大丈夫だ。ここはできたばかりの世界、だから死なんて現象もない」
「そうなんですか?」
「できなくはないがな」
「やっぱり危険じゃないですか!」
小さい声で言ったのによく聞き取れたな。
「加減は得意だから大丈夫だ。それに模擬戦と言っても俺は攻撃しないから。」
「本当ですか?」
「もちろんだ」
怪我するから俺は攻撃しない。
エリスは小さくため息をつく。どうやら納得したらしい。
「わかりました…… それではいきますよ!」
「!!!」
「多色魔術法“赤”!」
赤色の光線が五本、折り曲がりながら飛んでくる。
見たことのない魔術だが、少し色魔法に似ているな。
とりあえず防御──
(いや、無理だ)
この魔術は貫通に特化している。
さらに魔法としての性質を持っているから魔術でも魔法でも防ぐことはできない。
おそらくは独自で創った“固有”だろう。
「いいモノ持ってんじゃないか!」
久しぶりに楽しめそうだな。
次から技が大量に出る予定です。
覚えれるかな?
〜裏話〜
「それでね〜、リオルさんがうるさくてね〜。」
長い……
太陽の位置が目に見えて変わっている。
「そろそろ帰っていいですか?」
「駄目」
「……」
帰れない……
(チッ 早く帰らせろよ……)
かなり鬱憤が溜まってきた。
(なんか当たるものないかな……)
そこで思い出した。
(特訓するんだった! そうだな、特訓だ)
八つ当たりを正当化することができる。完璧だ。
ホルスト学院長の話を聞き流しつつ訓練内容を考える──