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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第一章:ヴァイゼン村編
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9話:弔い

「……一先(ひとま)ず、村の人達の遺体(いたい)埋葬(まいそう)してあげよう……流石(さすが)にあのままでは(しの)びない」


 ウォルフとレヴィンの言い合いが一段落(いちだんらく)した後、()くなった村人(むらびと)達の(とむら)いを提案(ていあん)すると言い合いをしていた二人は素直(すなお)(うなず)いて村の方へと(もど)り始めた。


 アルスも二人に続き歩き出したところで、ウォルフを追って村を出た時と同様(どうよう)()()付いてきていないことに気付く。


「フィルビー……?」

 振り返ると、そこには先程(さきほど)と同じように目を(つむ)り、手を合わせて(いの)りを(ささ)げるフィルビーの姿があった。


挿絵(By みてみん)


「まさか…(きみ)は…」

 その祈りが捧げられていたのは────たった今ウォルフが斬った()()()()()()()


「この村の人達を……君の大切な人達を手に掛けた魔族を……君は(ゆる)すというのか?」

「……許せませんよ」


 アルスの()いにフィルビーは(しず)かに首を横に振って答える。


彼等(かれら)は私から村の皆さんや孤児院(こじいん)の子達……そして神父様(しんぷさま)まで(うば)ったんですから……当然(とうぜん)(ばつ)です」

「だったら何で……」

「でも……()くなった(いのち)(ひと)しく(とむら)われるべき……それが神父様の教えだったから……私はそれに(じゅん)じます」

「そうか……強いな、君は」


 (あま)りにも真摯(しんし)姿勢(しせい)に感心して思ったことをそのまま伝えると、彼女は「あはは…」と小さく笑った。


「もしも私がほんとに強かったら……(ちから)があったら……神父様や、村のみんなを(すく)えたかもしれませんね」

「フィルビー……君は君に出来る最大限(さいだいげん)(こと)をやった……少なくとも俺はそう思う……だから、あまり思い詰めないでくれ」

「ありがとうございます……でも考えてしまうんです……村を出ずに残っていれば……無理矢理にでも連れ出していれば……神父様が…みんなが(たす)かる(みち)もあったんじゃないかって……」


 自責(じせき)(ねん)を口にする彼女……その声は震え、目から(こぼ)れ落ちるのは(しずく)のような(なみだ)

 そんな彼女の様子に()()(おぼ)えつつも、アルスは首を横に振る。


「フィルビー……俺も()()()今の君と同じようなことを考えたことがある……でも起こってしまった事は変えられない……その答えは多分、一生(いっしょう)出ないよ」

「……」

「ただ……君のこれからの行動で救われる人達はいるかもしれない……俺から言えるのはそれだけだ」


 アルスの言葉にフィルビーは何も答えない。

 ─────後は彼女自身が決める事だ。

 そう考え……アルスは村に向かって先に歩き始めた。



 ・・・



「……終わったな」

「……うん」

「おぅ……」


 ────もうすっかり()()ける(ころ)……(ようや)く村人全員の埋葬が終わった。


「皆さん……ありがとうございます」


 埋葬した一人一人に祈りを捧げた後、ヴァイゼン村の住民であったフィルビーはアルス達に深々(ふかぶか)とその頭を下げた。


「フィルビー……君はこれからどうする?よければ首都(しゅと)まで送り届けるが……」


 そんな彼女に対し今後のことを(たず)ねるとフィルビーはその首を横に振り、真っ直ぐにアルスの目を見つめて口を開く。


「アルスさん……お願いがあります」

「……なんだ?」

「どうか私も……皆さんの仲間に(くわ)えてください」

「……!」


 回復魔法を使える者の加入(かにゅう)────その申し出はアルスにとって願ってもない事だった。

 しかし、一般人(いっぱんじん)の彼女を魔王討伐隊(まおうとうばつたい)に入れる……そのことについては少し気が引ける。


(いや)()に参加してもらえるのは有難(ありがた)いが……いいのか?」

「はい……他に行く場所なんてありませんから」


 ……しかし、(とう)の彼女には(まよ)いはない様子だった。


孤児(こじ)だった私にとって……(ひろ)って(くだ)さった神父様と…受け入れてくれたこの村だけが世界の全てでした……それさえあれば良いと思ってた……でも、それは(あさ)はかな考えでした」


 彼女は孤児院があったであろう瓦礫(がれき)の山を見つめ、淡々(たんたん)と自身の過去と抱いていた思いを(かた)る。


「私は……唯一人(ただひとり)……私と家族になってくれた大切(たいせつ)な人を失ってしまった……」


 その目からは一筋(ひとすじ)の涙が流れた。

 彼女は涙を(ぬぐ)うと、決意(けつい)()ちた顔で言い放つ。


「もう二度と……私のような思いをする方を出したくない……だから私も……貴方達(あなたたち)の戦いに付いていかせてください!!」


 ────その懸命(けんめい)(うった)えを見て、アルスは横にいたウォルフやレヴィンと顔を見合(みあ)わせ……共に(うなず)いた。

 皆、彼女が仲間になることについて賛成(さんせい)らしい。


歓迎(かんげい)するぜ…一緒(いっしょ)頑張(がんば)ろうや」

「わ、私も…女の子同士(どうし)よろしくね」


 そうと決まり、早速(さっそく)フィルビーに(から)み出すウォルフとレヴィン。

 そんな二人に続くように、アルスは彼女に向かい手を差し伸べて口を開く。


「神父やここの村の人達の代わりにはなれないが……俺達は君の仲間(なかま)にはなれる……ここが君の(あら)たな居場所(いばしょ)だ……(あらた)めてよろしく頼む、フィルビー」


 その言葉にフィルビーは一瞬(いっしゅん)目をパチクリさせた後、差し伸べられた手を取り元気に返事(へんじ)をした。


「はい!不束者(ふつつかもの)ですが…よろしくお願いします!」


 ────そこでフィルビーが見せたのは、出会ってから初めての満面(まんめん)()み。


 年相応(としそうおう)の可愛らしい少女の笑顔(えがお)にアルスは少しだけドキッとした。

 そんな思いを知らない彼女はそのまま笑顔で言葉を続ける。


「改めて……フィルビーと申します!気安(きやす)()()()って呼んでください!!」


 その言葉に、内心(ないしん)それはちょっと……とアルスは()(あせ)を流した。

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― 新着の感想 ―
ここまでの率直な感想ですが「たまらない」ですね。良さに溢れています。 世界観、ほどよいテンポ感の展開はいつの間にか読み手を引き込む魅力があります。また、しっかり練られた各キャラの背景は読み手にさまざま…
2025/08/28 12:38 ノクティス
フィルビーちゃん、また素敵な可愛らしい子が仲間になってくれて心強いですね。魔族が滅ぼした村がいくつかあるのですね、次の冒険でもまた戦いが広がりそうですね!!応援します!!
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