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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第三章:アミナス教国編

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57話:黒血の外套

神秘の森を取り込み"巨大な木竜"と化した魔王ハイルの力は圧倒的だった。

余りに次元の違う強さに、戦場に合流したアルスは手も足も出ず……また唯一奴と渡り合える巫女"レイア"も徐々に消耗していってしまう。


そんな苦境の中、巫女が下したのは……一角獣の騎士"グラシア"を一時的に戦場から離脱させる決断。

周囲の上級魔族を殲滅し、各地に散らばった戦力を集める事を願い……一行は彼女の後ろ姿を見送るのだった。

一方その頃、アルス達と別の場所では──────


※今回はウォルフ視点の話です。

「チッ……この森どんだけ広いんだよ……!!」


 広大な神秘の森(エリュシオン)の中、息を切らしながら必死に前へと進む男が一人──────────


 "ウォルフ・ソリダン"

 勇者アルスが(ひき)いる魔王討伐隊の一員である戦士の大男。

 ()()()()()()()()()()()不測の事態(アクシデント)により仲間達と(はぐ)れてしまった後、不意に聴こえてきた()()()()()()()()()を頼りに彼はひたすらに走り続けていた。


「……()()()で合ってるよな?」


 しかしどれだけ進んでも視界に広がるのは変わり映えのしない草木が生い茂る翠緑(すいりょく)の景色。思わず方向感覚を見失ってしまいそうな広大な自然を前に、ウォルフは立ち止まって胸中(きょうちゅう)の不安を口にする。


 ()()()()()()()で一気に駆け抜けようにも木々が立ち並ぶこの場では危険すぎる。

 だからといって上空に飛んで位置確認を行おうにも、そこは戦場……出た瞬間に飛び交う魔法の餌食(えじき)になる可能性が高い。一体どうしたら……


 ──────そんな風に思い悩んでいた、正にその時だった。




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」


 突如(とつじょ)として場に(とどろ)く耳を(つらぬ)かんばかりの(すさ)まじい悲鳴。聞こえてきたのは、向かっていたのとは()()()()だ……それも近い。


「クソッ!!」


 ウォルフは迷いなく進路を変えて走る。

 仲間達の事は無論(むろん)心配だ────が、近くで魔族の脅威に(さら)されている人がいるのなら無視する事は出来ない。何よりもこれ以上、自分や仲間(フィルビー)の様に大切な人を失う……辛い思いをする人を増やしたくない。

 たとえ全員は無理だとしても、目の前にまだ救える命があるのなら……


 そんな強い想いを胸に()め、戦士ウォルフは一直線に樹海を駆け抜けて行き────────






「な……ッ!?」


 ──────その先に待ち受けていた光景に、目を見開き……戦慄(せんりつ)した。



『ズチャッ……』



 そこには、魔物の姿はなかった。

 ()ったのは……一人の騎士が、味方と思われる魔導士の身体から剣を引き抜く異様な光景。

 更に周囲には、見渡す限り一面の血の海……ズタズタに引き裂かれ切断された人々の死体──────



()()は……ッ!!」


 仲間割れ?────咄嗟(とっさ)(よぎ)ったその思考は違うと、中央に(たたず)む犯人を見てウォルフは気付く。

 何故ならば……全身が銀の鎧で(おお)われた(ソイツ)は、まるで血で()め上げたように()()()……黒血(こっけつ)色の外套(がいとう)を纏っていたから。


 "黒血騎士(こっけつきし)"

 ()しくもその姿は、以前の事情聴取やアルス達との話の中で出てきた……城塞都市(じょうさいとし)クヴィスリング崩壊の一因(いちいん)となった正体不明の敵の特徴に酷似(こくじ)していた。

 それだけじゃない。事情聴取の中、スーヤ騎士団員から聞いた話が正しければ奴は……



「テメェが()()()()()か……!!」



 ──────大陸北部で目撃(もくげき)され、一時期騒ぎになった元凶(げんきょう)の存在そのもの。

 思いがけず自分達が追ってきた敵と遭遇(そうぐう)し武器を構えるウォルフ……それに気付いたらしい奴は、ゆっくりと此方(こちら)へと振り返った。



挿絵(By みてみん)



「……ッ!!」


 瞬間、全身に怖気(おぞけ)が走る。

 大戦の始まりに遠目から見た"魔王"とは違う。強大な魔力だとか威圧感とか……そういう(たぐ)いじゃない。


 "殺気(さっき)"──────これまで対峙(たいじ)してきたどの上級魔族から向けられたものよりも(するど)く、冷たい……全身を(ヤイバ)で貫かれるような感覚に、ウォルフの本能は目の前の存在に対し全力で警鐘(けいしょう)()らしていた。



『ダンッ!!』


 次の瞬間、衝撃(しょうげき)音と共に視界からその姿が消える。

 ──────刹那(せつな)、ウォルフの首に(にぶ)く光る血染めの刃が差し迫ってきた。


「ぐッ!?」


 (すんで)の所で"重力の方向(ベクトル)を変える"自身の固有魔法を発動し、強引に体勢を変えるウォルフ。

 結果、紙一重(かみひとえ)で回避に成功するが奴の剣撃はそこで終わらない。


『キンッ!』『カンッ!』『ギィンッ!』


 大斧じゃ間に合わない────咄嗟(とっさ)の判断で得物(えもの)を双剣に切り替えたウォルフは、黒血騎士からの連撃に何とか対応していく。


「チッ!!」


 ……が、余りにも凄まじい剣速に身体が追い付けない。対応し切れず、やがて一方的に何度か斬り付けられ手傷(ダメージ)を負ってしまう。


 一瞬でも反応が遅れれば即あの世に送られる。クヴィスリングで死闘を演じた因縁(いんねん)の敵────"黒鉄(くろがね)のザヴォート"を彷彿(ほうふつ)とさせる……いや、それ以上の速さだ。

 奴との戦闘やスーヤ騎士団の団長(ペルデール)との手合わせによる経験値がなければ、最初の斬撃に反応出来ず首を()ねられていたことだろう。



「どういうことだテメェ……!!」


 ────しかし、それ以上に強烈(きょうれつ)()()()をウォルフは今……戦いの最中で感じていた。


 最初の踏み込み、そして一見正統派に見えて変幻自在(へんげんじざい)剣筋(けんすじ)……それらに対応出来たのは、これまでの戦いの経験値だけが理由ではない。


 ……()()()()()()()のだ、()()()()に。

 たった今戦っている"黒血の騎士"……奴が(あつか)っている剣技は────────



「そいつは……()()()()()()だ……!!」

「……!?」



 ──────核心(かくしん)を突く言葉……それを聞いた奴は突如として動きを止める。



「おおおおおおおおオオオオオォォォッッッ!!!」


 何故急に隙が生まれたのか、それを考える前にウォルフの身体は動いていた。

 この機会(チャンス)を逃せばもう次はない────本能的に確信を抱くと同時に、先程手放した大斧を手に一直線に奴に向かい勢いよく振り上げる。


『ズドォンッッ!!』


 刹那、轟音と共に立ち(のぼ)るは土煙(つちけむり)。固有魔法の作用により、分厚い鎧の重さが加わった斧の威力はどんなに硬い防御であろうと上から粉砕(ふんさい)する……






 ──────────はずだった。



「な……ッ!?」


 煙が晴れた先……ウォルフの視界に入ったのは、渾身(こんしん)の力を込めて振り下ろした斧が大地に深々と埋まる光景。その横には、剣を(たずさ)え此方に向ける黒血の騎士。


 渾身の一撃の(はず)だった。それを奴はたった一本の剣を(もっ)容易(ようい)に受け流したのだ……まるで川を流れる水が(ごと)く。

 奴はそのまま流水のように剣をウォルフの鎧へと静かに当て、呪文を(とな)えた。


「……【この世界に希望を(クリエ・ルピス)】」

「ガハ……ッ!」


 瞬間、身体に貫くような激痛が走る。

 思わず血を吐いて(うずくま)るウォルフ────その前には……血の(したた)る銀色の剣を振り上げる奴の姿が。


「中々面白い動きだった……が、相手が悪かったな……──────死ね」

「ク……ソ……ッ」


 身体が言うことを聞いてくれない。それ程までに大きい怪我(ダメージ)()らってしまった。

 かつて"魔族狩り"と呼ばれた青年は、自身の命運を(さと)り……自身が狩られるその瞬間(とき)をただ待つのだった。











「──────【裁きの雷槍(クリシス・トゥエルノ)】!!」


 しかし直後、雷鳴と共に白い閃光(せんこう)に場が照らされる。

 思わず目を細めるも……次に目の前に現れたのは、今し方戦っていた敵のものではない()()()()



「スーヤ騎士団、ここに見参(けんざん)ッ!!」



 それは……神獣(しんじゅう)ユニコーンを駆る、スーヤ騎士団筆頭格のエルフ──────グラシアの姿だった。

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