43.5話:降臨祭前夜
【WARNING】
この番外編は本編44話の重大なネタバレが含まれています。
初見の方はどうかすぐにブラウザバックして44話の方を先にお読みすることを強くオススメ致します。
「レヴィン……お話ってなんでしょう?」
「フィル……」
それは降臨祭前夜の事だった。
事情聴取を終え、これまでの功績を認められ、姉とのトラウマを乗り越え、仲間達との平和な日々を謳歌する……
──────そんなアミナス教国での幸せな時間は明日、一年に一度の祭事である"降臨祭"の終わりと共に幕を閉じる。
「友達だから……フィルにだけは言おうと思って」
「……?」
夜風だけが靡く、静謐さを保った街の一角には今……レヴィン・トゥローノとフィルビー・マーガレットの二人以外の影はいない。
貴族の少女が、聖職者の少女を夜に呼び出した理由……それはひとえに以前から固めていた自身の決意を伝えるためだった。
彼女は軽く息を吸って、今まで誰にも言えなかった自身の想いを口にする。
「私、明日……アルスに告白するわ」
「……!!」
それを受けたフィルビーの目は一瞬見開き、中心の黒曜色の瞳が僅かに揺れた気がした。
「この前、図書館に迎えに来てもらった時は言えなかったんだけど私……アルスのことが好きみたい」
「そう、だったんですね……だからシオンさんにあんな……」
「うん……そんな場合じゃないって頭では分かってる……でも今のままじゃシオンにも悪い気がして、この気持ちにケリを付けなきゃって思ったの」
「……」
不意に静寂が訪れる。
自身の気持ちを聞いた彼女は今、何を思っているのか──────確かめるべく、レヴィンはかねてより抱いていた疑問を黒い瞳にぶつける。
「……フィルは、いいの?」
「……え?ど、どういう意味ですか……?」
「アルスのこと、好きなんじゃないの?」
「っ!?なんで、そんな急に……」
「だって……前にアルスに抱きついたりしてたから」
「あ、あれは心配して……そ、そもそも私は一応、聖職者ですから」
「……そっか」
今回彼女を呼んだ本当の目的……それに対する答えは、フィルビー自身の口から否定の言葉が出たことによって一応の終息を迎える。
旅の道中、やたら彼女のアルスに対する距離が近い事を密かにレヴィンは気にしていたのだが……どうやら思い過ごしだったようだ。
「それなら……私はもう、迷わない」
「レヴィン……じゃあ……」
「うん、どんな結果になったとしても……受け入れるつもり」
唯一の心配事がなくなったレヴィンは、改めて親友であるフィルビーに明日への決意を口にする。
幼馴染だとか、思い出とか過ごした時間の長さとか……そんなものもう関係ない。
自分は自分で、一人の女の子として彼にこの気持ちを包み隠さずぶつけるだけだ────────
「そっか……応援、するね」
──────だというのに何故だろう。
それを聞いた彼女の声色は、いつものような明るさが失われていたような……そんな気がした。




